「成功」って何

 

「成功」って何    2009年9月20日


 よく、「成功してから・・・」とか「成功もしていないのに・・・」という人がいます。 しかし、この「成功する」ということがどのような状態を意味するのか、不明瞭です。 

「成功」について考えます。


 辞書を引くと、『成功とは、目的を達成すること、地位や富を得ること』とあります。 このうち、世間一般に「成功」といわれるのは、『地位や富を得る』ことです。 つまり、「成功する」ということは「高い地位に就くこと、あるいはどっさりお金をもうけること」です。 すなわち、高い地位に就いていない者、どっさりお金もうけをしていない者は何も言うな、するなということです。

 ここで、『高い地位』ですが、職業で言えば、

1.王様・貴族 
2.国会議員
3.大学教授等学識経験者
4.社長
5.医者、弁護士、スポーツ選手等特殊技能者

があげられます。

1.王様・貴族 ・・・ 日本やヨーロッパの中世時代は、高い地位の彼らが大変いばっていました。 働きもしないで一般の人たちが作った農作物を取り上げるだけ取り上げて毎日それを食べて平気な顔をしていました。 そのため、平安貴族は武士に収奪され、マリーアントワネット以下ギロチンで死刑になったのです。

2.国会議員 ・・・ 日本では議院内閣制のもとで、総理大臣が最高権力者とされ、国会議員が国会で決定する法律によって国民は統治されます。 数年来その総理大臣や閣僚が、高い地位をいとも簡単に投げ捨て、あるいは不祥事のために剥奪されることが見られます。 高い地位というのは案外、中身の無い物なのです。

3.大学教授等 ・・・ 学識の高い人の代表に大学教授があげられ、その権威は大変なものです。 ところが、国公立学校の先生は税金から、私立学校の先生は授業料から、それぞれ俸給を拝受されています。 いわば、研究成果を上げて当然なのです。 税金や授業料から給与支給を受けているのに、時々研究費をごまかしたり、破廉恥なことをする人がいるのは困ったものです。

4.社長 ・・・ 数年前に、「ホリエモン」とか何とかの、30代の社長がさっそうと登場しました。 「40才以上はもう終わりだ、これからは30代の時代だ」と世の中のアホどもは、草木もなびくように全財産を当該企業に投資してパーになったことがありました。 ちなみに、飲み屋に行けば、皆「社長か先生」です。

5.特殊技能者 ・・・ この人たちは、大部分は高い地位につくべき人だと思います。 他の人が遊んでいる時に、熱心に学問やトレーニングに励んで難しい試験や選手権大会を勝ち抜いたのです。 ところが、なぜか日本では、医者でもスポーツ選手でも派手な種目の人は持ち上げても、地道に努力する人に対しては、見る目は冷淡です。

 次に、『どっさりお金をもうける』という状態です。

1.総理大臣や議員や教授がどっさりお金を貯めたら、たいていは贈収賄事件か汚職です。 繰り返しますが、彼らは税金や授業料から支給される月給取りです。
 
2.どこかの肉屋や土建屋の社長のように偽装々々でどっさりお金を貯えても、自分一代で終わりです。 終わったらそれまでです。
 
3.ホリエモン方式では、どっさりお金を貯える前からブタ箱行きです。

4.どんなにアホで下品でも、田畑家屋敷持ちの長者の家に生まれたらどっさりお金はあります。 しかし、アホと下品は簡単には直せないです。

 このように見てくると、辞書にあるような「成功」という事例は世の中にどれほどあるか、想像するに難くありません。

 尊敬されるべき職業を自力で発展させてきれいにお金儲けをする、まれに見る才能を開花させて技能を披露することできれいにお金儲けをする、ということが「成功」だとされるならば、そのような人は何人に1人いるかということです。

 あまりにも目標が遠すぎ大きすぎて、「一に計画 二に実行 三に反省 四に努力」というサイクルを回すことさえできなくなります。

 精神科医の香山さんは、「いやな記憶」にぐじゅぐじゅしている個人が多い一方で、世の中の大多数の人たちは、忘れてはいけない事件や出来事、政治家の不正、失政もあっさりと忘却していくと指摘されています。

 それにそもそも、本当にマスコミに登場している成功者のような人生を、すべての人が歩む必要があるのだろうか。 さらには、成功者たちは、本当に雑誌やテレビが報じているようなすばらしい人生、悩みなき生活を送っているのだろうか。 そのあたりも考えてみる必要があるだろうとも指摘されています。

 私は、まず大事なのは、何歳であろうと何のジャンルであろうと目標を持ち、それを達成すべき計画をきっちり立てること、そしてそれを達成することだと思います。 

 どんなに小さなコンテストでも、勝ち残った人は他人に「成功」をなすりつけたりはしません。 勝ち残ることがどれほど大変なことかを体で解っているからです。 そして勝ちのリズムを習得しているからです。 一度も勝ち残った経験がない人ほど、他人の「成功」をあてにします。 軽々しく「成功」という日本語を口にします。
 
 特に女性はその傾向が著しいです。 「他人との比較」と「形容詞の使い方」、この2つをよほど監察しない限り、いつまでたっても時給800円の労働価値から「カンタン」に変わることはないと思います。