氷河期は人間まで凍らせる?

 

氷河期は人間まで凍らせる?    2019年6月5日


 北方領土を戦争で取り返す是非に言及して日本維新の会を除名された丸山穂高衆院議員(大阪19区)は6月3日、衆院議院運営委員会の高市早苗委員長(自民)に弁明書を提出した。 その内容は、

 ・具体的行動ではなく懇親会での会話をもって直ちに憲法9条や99条違反だというのは飛躍しすぎており、憲法違反であるとも到底言えな  いものです。

 ・刑事事件における有罪判決相当でもない本件のような言動にて議員辞職勧告決議がなされたことは憲政史上、一度もありません。

 ・同僚議員各位における違法行為の疑いのある具体的行動についての報道、不適切で品位を損ねる院外での言動なども見受けられますが、公  平性を欠くものと考えます。

 ・決議案採決やその他何らかの対応をなされるというのであればそれはいかなる基準や要件に基づくものでしょうか。

 ・有権者の付託を受けた議員の身分などに関する何かしらの処分や決議がなされるのであれば、人民裁判的な決定を行う言論府となることが  危惧される事態でもあります。 というものである。


 1891年 日本を訪問中のロシア帝国皇太子ニコライが、大津市で警備にあたっていた警察官津田三蔵に襲撃され負傷した。 旧刑法では、怪我をさせただけで死刑を宣告するのは不可能であり、「国家か法か」という問題が発生した。

 同年には、露仏同盟、フランス資本の資金援助によるシベリア鉄道建設が開始され、1894年 日清戦争、1896年 露清密約というように、明治時代初頭から日本の北西に位置するロシアは、同じく南西に位置する中国と並ぶ大きな脅威であった。

 しかしながら、日本がこの問題を無事解決できた理由は、日本と戦端を開くことになれば日英同盟の実現、シベリア鉄道の権益喪失、港湾拠点の消滅という懸念から、ロシアの友好的な姿勢があったことによる。

 大津事件と今回の戦争奪回論を対比すると、以下のようになる。

◆大津事件

ロシア脅威論が蔓延する中で、実際に傷害事件が発生した。
   ↓
政府は大逆罪によって死刑を類推適用するよう裁判所に働きかけた。
   ↓
児島惟謙は「法治国家として法は遵守されなければならない」とする立場から、無期懲役とし、国際的に日本の司法権に対する信頼を高めた。
   ↓
外務大臣・青木周蔵、内務大臣・西郷従道、司法大臣・山田顕義は辞任し、不平等条約改正交渉の進捗は頓挫した。


◆戦争奪回論

戦後70年以上続く北方領土返還交渉が進展する中で失言したが、懇親会での会話をもって直ちに憲法9条や99条違反だというのは飛躍しすぎと抗弁。
   ↓
政党から糾弾決議案が提出されたが、刑事事件における有罪判決相当でもない本件のような言動にて議員辞職勧告決議がなされたことは憲政史上一度もないと抗弁。
   ↓
可決された場合も法的拘束力はないが、そのまま何の変化もなければ国会・政党が戦争奪回論を承認したことになる。

決議案採決やその他何らかの対応は、いかなる基準や要件に基づくものか不明瞭であると抗弁。

同僚議員各位における違法行為の疑いのある具体的行動についての報道、不適切で品位を損ねる院外での言動なども見受けられると抗弁。
   ↓
どの大臣が責任をとるのかも不明である。


 このようにどちらもロシアが対象国ながら、大津事件とは一市民の不始末を明治天皇を初め、国を挙げて対処し沈静化させた事象であるが、戦争奪回論とは世間知らずの国会議員が酒食にかまけた戯れである。

 憲法論もどきの屁理屈を並べ、内輪の痴話を露呈させ、そのくせ有権者の付託を受けた議員の身分などに関する何かしらの処分や決議がなされるのであれば、人民裁判的な決定を行う言論府となることが危惧されるとは、語るに落ちた話である。

 有権者の付託を受けるということは、言い換えれば人民裁判的な意思決定のもとに国会議員としての活動を委託されるものであり、その職務こそまさに現在の日本が直面する国際情勢を読み、進むべき方向と対応策を立案することである。

 内閣総理大臣を初め、国会関係者が戦後70年以上続く北方領土返還交渉に腐心することはその一端であり、それを支援するべき国会議員の言動が「北方領土を戦争で取り返す」とあれば、到底国税から俸給を受ける資質に合わず、古来100年の歴史も鑑みることのできないバカ者議員と認識する。

 大阪維新の会を初めこのような手合いの若造を国会議員として公認選抜した有権者は、その責任と慧眼の乏しさを厳に痛み入るべきである。

 そして、大臣各位が辞任するような大仰まではなくとも、即刻辞任させるべきであり、企業組織でいうところの依願退職を強制的に仕向けるべきである。 

そうすることが、今回は国際的に日本の立法権に対する信頼を高めることになると断言する。