中国ひとり芝居

 

中国ひとり芝居    2012年9月28日


 野田首相は8月24日、首相官邸で記者会見を開き、島根県・竹島と沖縄県・尖閣諸島の問題に関して、「わが国の主権を侵す事案が発生し、遺憾の極みであり看過できない。 毅然とした態度で、かつ冷静沈着に不退転の覚悟で臨む。」として、

第1に、離島の安定的な保全管理。
第2に、周辺海域の警備態勢の強化。
第3に、わが国の正当性を対外的に発信する努力。 を述べました。

その後、9月11日に、尖閣諸島の国有化を閣議決定しました

これに対し考えます。


1.日本政府が発信した歴史認識と正当性

 「明治政府は、清の支配が及んでいなかったことを確認の上で、1895年に尖閣諸島を日本の領土に編入しました。 中国が領有権を主張し始めたのは東シナ海に石油埋蔵の可能性が指摘された1970年代以降になってからのことに過ぎません。 尖閣諸島がわが国固有の領土であることは、歴史的にも国際法上も疑いのないところであり、現にわが国はこれを有効に支配しています。」

 「江戸時代の初期には幕府の免許をうけて、竹島が利用されており、遅くとも17世紀半ばには、わが国が領有権を確立していました。 その後、1905年の閣議決定により竹島を島根県に編入し、領有の意志を再確認しました。 韓国側はわが国より前に竹島を実効支配していたと主張していますが、根拠とされている文献の記述はあいまいで、裏付けとなる明確な証拠はありません。 戦後、サンフランシスコ平和条約の起草の過程においても、韓国は日本による竹島の放棄を求めましたが、米国はこの要請を拒否しています。 こうした経緯があったにも関わらず、戦後韓国は不法な李承晩ラインを一方的に設定し、力をもって不法占拠を開始したのです。」

 「ロシア政府は、わが国固有の領土である北方領土を不法占拠しています。 法と正義の原則を基礎として、静かな環境のもとでロシアとの交渉を進めます。」


 これらは、総理大臣の口角から、全世界に向けて発信された歴史認識です。 過去の研究成果が凝縮されたものとして、おそらく正解であり日本の軸足です。 すなわち、これ以上もこれ以下も着地点としては存在しません。 あるとすれば、19世紀から20世紀中盤に発生した、驕慢と卑屈による掠取と割譲です。

 中国の古地図にも見えるように、「釣魚島 → 魚釣島」「尖閣諸島 → 尖閣群島」と表記されており、日中境界線もありません。 中国・韓国は、身内から湧出するエビデンスに対してさえ、文字も読めなければ理解もできない、あるいは作為的欺瞞的に無知文盲を装う、孤立独善国家であることが明白です。

 

 


2.中韓露3国は、欺瞞的に歴史真実を受け入れられない

 中露は、国土面積は広大であるものの、ロシアは不凍港が極少であり、韓国・中国は日本と台湾に栓塞されており、いずれも海洋への出入りが極めて不自由であるという地理的課題を抱えています。

① 宗谷海峡~台湾海峡までの3500Kmを日本のEEZで封鎖すると、ロシアのウラジオストック港、韓国全土の港湾、中国の北半分の港湾は全く艦船の自由航行が不可能となる。 したがって、北方4島・尖閣諸島を自国領土として、頭陀(ずだ)袋に穿孔するごとく太平洋への出入口を確保する必要がある。

② 中国が経済的に発展し続けるためには、南東方面の海洋資源権益を確保する以外にはない。 しかし、東シナ海は日本と台湾により封鎖され、南シナ海はベトナムとフィリピンにより狭窄されている。 したがって、他国領の島嶼を強奪・大陸棚を牽強付会してでもそれらを確保する必要がある。  

                   
③ 1840年~1894年  アヘン戦争・アロー戦争・日清戦争
1910年        日韓併合
1915年        対華21カ条要求
1931年        満州事変 
1937年        盧溝橋事件

 習近平副主席は、「日本軍国主義は中華民族に深く重い災難を及ぼし、米国を含むアジア太平洋諸国にも深い傷を負わせた。 にもかかわらず日本の一部勢力は過去を反省せず、“島の購入(尖閣国有化)”という茶番劇を演じた。 国際社会は(中米が共闘した)反ファシスト戦争(第二次大戦)の成果と戦後の国際秩序を否定する日本の行為を絶対許さない。」と述べている。 

 過去の軍国主義を反省することと、尖閣諸島を日本政府が購入し国有化することとはまったく事実発生時期がズレており、連関しない。 あるとすれば、日本政府が島を直接所有することにより、中国関連企業による民間闇取引の策略が極めて行い難くなったことへの焦燥である。

 このように、中韓露は海洋資源権益のために、経済水域と航路の確保を最終目的としていることは公然明白です。 中韓露にとっては、歴史は学問でも文学でもなく、自国の権益を確保するための隣接国に対する鞭箠(べんすい)に過ぎません。 行為の正当化のために、因果関係を問わず曲解変節させるのです。

 すなわち、中韓露に対して、領土問題を学問真実的に解決するということは不可能です。 検討するべき範囲は、『毅然とした態度』と『日米安保条約』を軸として、地域限定戦争を背景とする講和方式または経済的影響を背景とする交換方式のどちらかしかありません。


3.中国人民のレベル

 これは、アメリカのオレゴン州コーパリスの建設現場壁画です。 


 この壁画に対し、中国政府は撤去するよう抗議しました。 中国政府は、政治的に進歩的なアメリカの田舎町の行政が、中国のためにそのような「汚れ仕事」を当然引き受けるだろうと考えた結果です。 中国政府の国際感覚は、清国当時から進歩していません。

 中国の人口動態は人口ピラミッドに具現されており、日本の20年前、1990年代のバブル期と同様の状態です。 一見若年人口が多く、民力隆昌のように見えます。 しかし、中国のGDPは世界第2位で日本とほぼ同額ですが、GDP/人となると日本の10分の1以下です。 

 また、アウン・サン・スー・チー氏は9月22日、中国の対ミャンマー経済関係について、「(ミャンマー)国民は『利潤追求だけが目的』と感じている。」と批判しています。

 中国は、貧富の格差拡大や官僚腐敗などへの不満から、中国各地で発生している暴動を含めた抗議活動が2011年に約18万件に上っています。 まさに若年者教育の後進性や格差対策の未実施等が原因となっているのであり、そのためにアフリカや中南米と同様、野蛮国的暴動行為が多発するのです。


 中国外務省の洪磊副報道局長は9月17日の定例記者会見で、「その責任は日本が負うべきだ。 事態が深刻化するかどうかは日本側の対応にかかっている。」と述べました。 

 江沢民前政権の「反日教育」も然り、この人口ピラミッドに蔵された中国人民の格差や体制への不満を外部に逸らし続けるためにも、政府高官みずから「愚者の虚構」を語り続けなければならないのです。 


4.日本の戦略

 胡主席がアジア太平洋経済協力会議(APEC)の会場で野田首相に「国有化断固反対」を強調した翌日の9月11日に、野田政権が同諸島の国有化を閣議決定しました。

 A評論者は、以下のようにコメントしています。

 「尖閣諸島の最も大きな問題は、かつて自民党が中国と「密約」を結んでおり、それを国民はもちろん、民主党の議員さえも知らされていなかったという点にあります。 その密約の内容は以下の様なものだと言われています。・中国は、実効支配の原則から尖閣諸島を日本領土として認める。・しかし一方で、中国も国内法では領土権を主張する。」

 B評論者は、以下のようにコメントしています。

 「国有化のタイミングや中国との根回しなど、外交上の配慮なしに突き進んだ稚拙さにはあきれ果てる。 そのツケが中国の日系企業に及ぶことなど許されるはずがない。 用意周到に仕掛けたなら納得できるが、この間の悪さを考えれば深い思慮も周到な用意もなく、いざとなったら武力衝突まで想定するくらいの覚悟もなしに、尖閣の国有化を宣言したことは明らかである。」

 C閣僚経験者は、以下のようにコメントしています。

 「国のためにどうするか、国民のためにどうするかという国家観、そしてそのために周辺国とどのように平和を守っていくかという大局観を欠いている。 日本側の歴史認識についても、長い間戦争で多くの犠牲を残し、今なお傷跡が癒えていないその中国に対して、歴史を知らない若い人たちはそういうことを抜きにしてひとつの対等の国としてやっているのです。それは間違っています」

 李明博大統領は、以下のようにコメントしています。

 「加害者は忘れることができるが被害者は忘れず、ただ許すだけだ。 忘れはしない。日本の加害行為は許すことができるかわからないが、忘れることはない。」


A評論者のコメントでは、領土問題が存在していることになります。
B  〃       、戦後60年間の後手々々外交の継続を推奨しています。
C  〃       、国家歴史の認識と国民個人への憐憫が錯綜しています。
李明博大統領  〃  、国家歴史の認識に個人の怨念が混入しています。

 日本人でしかも政治評論を職業とする者でさえ、この程度の情報しか把握できず、この程度のフレーズしか吐瀉できないことが、日本のマスコミュニケーションがワールドワイドたりえず、わが国の正当性を対外的に発信する努力がまだまだ必要とされる所以です。

 4月16日午後(日本時間17日未明)、石原慎太郎東京都知事がワシントン市内で講演し、沖縄県・尖閣諸島を都の予算で買い取るため、個人所有する地権者と交渉に入っていると明らかにして以来閣議決定するまでの5ヶ月間に、このような杞憂は掃滅されています。

 少なくとも日本がGDP世界第2位国にふさわしい文明国であるのであれば、常識的にそうであり、そう考えるべきです。

 胡主席がAPECの会場で野田首相と会話した翌日の9月11日に、野田政権が同諸島の国有化を閣議決定しました。 その理由は、30年後に外交文書が開示されれば明確になりますが、胡主席の面子など構って時間稼ぎをされてはいられない、そのタイミングであったからです。

 また、その会話に対し黙認することにより、日本は「尖閣諸島は国有化しない」という諒解案を受諾したということが全世界に既成事実として流布認証されることを抑止するためです。

 未確認想定情報ながら、中国関連組織が地権者に数百億円をオファーし、沖縄県・尖閣諸島の購入を企んでいたということを仄聞します。 もしもそうならば、日本政府の動静も中国の狼狽混濁も見事に附合します。

 評論者の概括論がネット上に列記されようとも、その裏面を同時に検証しなければ真実には到達しないと認識しなければなりません。

 日本政府の戦略として、過去にはフィクションとして済んだ事象が現実化するという前提のもとに、中韓露の手口を先読みし先制攻撃する(*別途詳細)ことが最重要です。 If you give a mouse a cookie, it's gonna want a glass of milk.『ネズミに菓子をやればミルクを要求』します。

 戦後50年間続いた、自由民主党の瘧(おこり)的萎縮外交から、名実ともに深慮遠謀外交へ転換する端緒を開いたということになれば、「尖閣諸島国有化」は後世民主党政権交代の最大効果であると「カンタン」することになります。