惨敗の自民党

 

惨敗の自民党    2009年9月9日


 日本経済新聞の社説が、

『民主党の幹事長に小沢一郎代表代行の就任が決まった。 衆院選の圧勝で巨大化した党をまとめる手腕を期待しての起用だが、党が選挙で公約した「政策決定の内閣一元化」という方針に沿って、透明性の高い党運営を実現してほしい。』

と述べています。
惨敗前後の自民党と合わせて、考えます。


 自民党は、いよいよ化けの皮がはがれてきています。 

麻生太郎は早々と総裁辞任を宣言しましたが、その後を継いで党再建を志向する者が誰も出てこないのです。 今や死語となった派閥の頭領以下、再び来年の参議院選挙大敗の汚名をかぶるのが怖くて総裁選に立候補できないのです。

もともと大事なのは自分だけで、所属政党がどうなろうと、再建をどう迫られようと、率先躬行する者など誰もいない。 まして、国民のために政治に身命を掛けようとする剛毅勇壮の者などいるはずもなく、政権与党の地位に長年胡座していただけというのが実態です。

この程度の連中に、絶対多数のなせるところとはいえ国政を委託してきた、さらに言うなら、総理大臣交代のたびに新時代到来の期待さえ抱いた無念無想、優柔不断さに自嘲したくなります。

「崇拝している間は誠に歌というものは優美にて『古今集』は殊にその粋を抜きたる者とのみ思いしも、三年の恋一朝にさめて見れば、あんな意気地のない女に今までばかされておった事かと、くやしくも腹立たしい」 と正岡子規は述べていますが、『古今集』を『自民党』に置き換えると、実に適切に言い表せます。

 ここで、自民党が惨敗した要因についてですが、既に巷間無数の論評がなされています。

・麻生太郎自身が、その無能さ、言葉遣いの悪さ等を嫌われた
・自公連立政権およびメンバーが、その行動も含め、時代錯誤であった
・過去3年間、毎年政権を投げ出し続け、無責任さと人材の枯渇を露呈した
・小泉時代の瑕疵政策が、経済環境の悪化に伴い、一気に顕在化した
・霞ヶ関改革、行財政改革等、遅々として進展せず、不明瞭感が増幅した

等々です。 政権与党としての自民党は、完全に機能不全に陥っています。

 私は、確かにそれらの要因は大きいですが、あえて付加すれば、自民党の無数の欠陥であれマニフェスト比較であれ、その全てをオープンし続けたインターネット等情報通信の成せるところではなかったかと思います。
 
 中川昭一が、主要7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)後に酩酊状態で記者会見を行い、日本は大恥をかきました。 鳩山邦夫の各種発言には、嫌悪感さえ覚えます。 これらはすべて、You Tubeに記録され、いつでも参照できます。 

 自民党のマニフェストをダウンロードしてチェックしたところ、あれほど引き上げようとしている消費税率の内容も使途も時期も、玉虫色に朦朧と表現されています。 

 麻生太郎は、戦後最長の40日間という選挙期間を設定し、「投票日までを日本を考える1カ月間にしていただきたい」「この1カ月間に政策というものを真剣に考えていただきたい」と強調しました。 国民有権者は、そのとおり上記のメディア等を熟視しながら考え、出した結論が「政権交代」です。

 自民党は執行部から派閥の重鎮に至るまで、未だに「人の噂も75日」程度の感覚です。 自分たちの一挙一動がすべてデータとして記録され、いつでも比較参照される時代に変わっているということさえ、認識できていません。 この自民党の認識程度と今日の情報社会とのギャップが、「政権交代」という結果に直結しているのです。

 民主党の幹事長に小沢一郎代表代行の就任が決まりました。 小沢氏は、今回の衆議院選挙の勲功第1であり、自民党と対峙する国会運営の司令塔ともなります。

 自民党長期政権の末路に現れた現象は、決して自民党固有のものではありません。 政権与党は常に認識を改めなければならないほど、今日の情報社会は発展し続けています。 明瞭と不明瞭、アカウンタビリティと傲慢は、トレードオフの関係です。 明瞭とアカウンタビリティを逸した政権は、必ずその反動に陥り、データとして掴まえられ、支持率を下落させます。

 私は今回こそ、将来自嘲することのない新時代の到来を、民主党政権に期待したいと思います。 たとえ、行財政改革等がマニフェストどおりに進捗しなくとも、「カンタン」には難題が解決しなくとも、明瞭とアカウンタビリティの重要性だけは逸しない政権とそのメンバーであってもらいたいと思います。