議員世襲制度

 

議員世襲制度    2009年6月1日


 国会議員の世襲制限について、論議がされています。 

これに対し、

(1)政治に参入するコストを、インターネットによる選挙活動の解禁などの手段で大幅に下げる
(2)立候補者のマニフェストについて、評価の仕組みを強化し、投票者側に質の高い情報をより多く提供できるようにする

という提案がされています。

世襲候補について考えます。


 私は、提案に全面的に賛成します。 ただ、ネット選挙というツールの論議だけにとどまらず、その前後もあわせて考えます。

(1)世襲がここまではびこった原因の1つは、二大政党制の未成熟の結果

 世襲罪悪論がかまびすしいですが、先祖代々の職業を受け継ぐことは何等違法ではなく、むしろノウハウや人脈の蓄積等には必要であり、実際に幾多の業界でも日常的に行われています。 有能な人材なら、何も問題はないと思います。

 ところが、選挙制度でそれが問題となるのは、

 1.国会議員は、税金で給与保証された国家公務員の立場にあるにもかかわらず、法案決定権を持つことから、一部特定の地域、団体、業界の利権代表となりがちである

 2.それらを背景として「ジバン・カンバン・カバン」がひとたび構築されると容易に打破することができず、無形固定資産化する
しかも、世襲候補者の能力評価に、公平な尺度など存在しない
 
 3.結果として、政権与党が固定化し、政官財の癒着・金権政治の温床となる

からです。

アメリカやイギリスの制度を参考にした日本ですが、高度経済成長と国防体制の必要上、二大政党制には成り得ませんでした。 そのため、過去54年間政権与党は交代することなく、なるべくしてなった現象です。 世襲だけを標的にしても解決しない経緯があります。

(2)ネット選挙は、早急に法制化し実施すべき

 インターネット選挙のメリットは、

1.利用時間・場所に制約がないため、いつでもマニフェストや立候補者演説会の録画を参照でき、更新もリアルタイムにできる

2.ライバル候補の主義主張を、同じ水準で参照できる

3.スカイプ等インターネットTVを設定すれば、遠隔地での立候補者演説会の実況中継、および立候補者と有権者との直接討論会ができる

4.ホームページにリンクを張ることにより、関連するデータを一括表示できる

5.紙を媒体としたメディアと比較して、コストが安価である

6.マニフェストと実績の対比等、データの検索・分析が容易である

ということがあげられます。 インターネット選挙は、選挙費用の引き下げ効果も大きいですが、それ以上に、情報開示の即時性と比較性といった面で威力を発揮すると思います。
 
(3)ネット選挙の導入とあわせて、行うべき政党政治改革

 1.ネット選挙は、選挙費用を安価に抑えられるという点では有効です。 しかし、公務員バッシングのように、その時代のブームに便乗した泡沫候補が乱立して混乱に拍車をかけ、結局は政権与党の引込合戦に終始するだけの危険性もあります。

まず、本当の二大政党制を確立して、相互牽制の効く、責任の持てる政権与党体制を構築することが肝要です。 そこに選挙ツールとしてネット選挙を組み合わせ、能力のある新人が参画しやすい環境を構築することが必要です。
 
2.政党は、選挙公約および行政に責任を持つことです。 すなわち、政策の実行可能性、その裏付けとなる財源確保等に明瞭性をもたせるべきです。

いくらマニフェストに美辞麗句を並べて掲示しても、そのとおり実施されないのでは過去と何等変化はありません。

3.従来の官僚機構に頼った政策決定は時代遅れです。 公務員バッシングの発端である官僚天下りが、一向に収束しないのもこのパワーバランス所以です。

 高等教育機関としての大学の研究能力を一層拡充し、民間企業の情報能力と結合させた政策研究機関を、政党および内閣のブレーンとして制度化することが必要です。 日本版ポリティカル・アポインティを実施すべき時です。