ERPを国に導入

 

ERPを国に導入    2010年12月5日


 「ERP(エンタープライズ・リソース・プランニング=企業資源計画)」の概念を国に導入し、予算編成の際に事業を政策課題ごとに分類し、それにかかるコスト(歳出額)や人手、実現までの期間などを数値化し集計すれば、政策目標ごとの費用対効果が分析でき、効果が上がらない場合には、政府が政策目標そのものを見直すインセンティブにもなるという提案がされています。

政策目標ごとの費用対効果分析とERPについて考えます。


 私は、企業が経営資源を有効活用し、利益の最大化を図るための方策として使っている「ERP(エンタープライズ・リソース・プランニング=企業資源計画)」の概念を国に導入するという提案は、全く理想型であり実現できるならばするべきと思います。

 しかし、ERPは万能のシステムかということについて、以下の2点の懸念事項があります。

(1)各省庁自体が、最適な資源の管理・配分および利益の最大化を希望しているか。

 ERPを導入して成功に導けるのは営利社団法人です。 営利社団法人は利益拡大を共通目標とする組織であるため、トップダウンで社内に徹底することができます。

 これに対して、各省庁はコストセンターともプロフィットセンターともなる組織であり、事業目標が各々異なります。 例えば、防衛省と厚生労働省が同一のシステムで目標管理できるのかどうかということです。

防衛省 - 将来の国家財産損失の回避を保障するため、現在の防衛投資が必要
厚生省 - 将来の国家負担を軽減するため、現在の制度見直しが必要

 このように、両者とも将来の国家財産の損失を減少させるという点では同一目標ですが、そのために現在の投資が増えるのか減るのかという出発点が異なります。

 また、企業でいえば子会社に当たる地方自治体の運営もこのGRPに統合するという点では、政府と地方自治体の財政内容が同じかどうか、道州制等の地方分権の潮流に整合するのかどうかという懸念があります。

(2)GRPの運用そのものができるか。

 企業がERPを運用するための前提条件は、すべての企業内資産に統一体系的な管理コードが割り振られていることです。

 1990年代に、自動車業界で部品を共通化することにより原価低減を図る「CALS」が脚光を浴びたことがありましたが立ち消えになりました。 各社の管理フォーマットが違いすぎ、企業秘密が多すぎて、統一化ができなかったためです。

 国民が日常的に使用する番号体系だけでも、以下のような種類があります。

・基礎年金番号     10桁    ・住基ネット      11桁
・運転免許証      12桁    ・健康保険証(組合)   8桁
・パスポート       9桁    ・クレジットカード   16桁 
・JANコード     13桁

 電子政府構築計画の「納税者番号制度」しかり、政策目標ごとの費用対効果の分析が一片のシステムを構築してすべて解決できるような簡易な問題ではありません。 私は、

1.現行の事業仕分け手法を発展させながら繰り返すことで、各省庁単位に最適な資源の管理・配分の仕組みを作るいわゆる「パレート最適」を実施する。 
2.その次のステップで、各省庁横断的に実施する。
3.手間であってもシステムではなく、可視化する方法で実施する。
4.将来は共通フォーマットによるERPのようなシステム化を目指す。

というステップを踏むべきと思います。