「令和」は0で始まるか

 

「令和」は0で始まるか    2019年5月1日


 「カンタンタイム」は、平成時代の10年間に、テレビ・新聞・ネット等で討論会が実施され、プレゼンがされているが、ともすれば政党関係者、各種評論者等の立場の偏った、現場から乖離した意見が多いという懸念に抗体したものである。


 本日から「令和」時代であるが、政治・経済・国際等どの分野においても、たちまち喧騒からスタートしなければならない。

1.安倍総理の挨拶と野党の思考回路

 謹んで申し上げます。 天皇陛下におかれましては、本日、皇位を継承されました。 国民を挙げて心からお喜び申し上げます。 ここに、英邁なる天皇陛下から、上皇陛下のこれまでの歩みに深く思いを致し、日本国憲法にのっとり、日本国および日本国民統合の象徴としての責務を果たされるとともに、国民の幸せと国の一層の発展、世界の平和を切に希望するとのおことばを賜りました。 私たちは、天皇陛下を国および国民統合の象徴と仰ぎ、激動する国際情勢の中で、平和で、希望に満ちあふれ、誇りある日本の輝かしい未来、人々が美しく心を寄せ合う中で、文化が生まれ育つ時代を、創り上げていく決意であります。 ここに、令和の御代の平安と、皇室の弥栄をお祈り申し上げます。


 ところが、社民・又市党首の「天皇の誓いと裏腹に憲法は空洞化」によれば、今上天皇は、30年前、即位に際し、「常に国民の幸福を願いつつ、日本国憲法を遵守し、日本国及び日本国民統合の象徴としてのつとめを果たすこと」を誓いました。 しかしながら、今上天皇の誓いとは裏腹に憲法は、PKO協力法、周辺事態法、有事法制、テロ特措法、イラク特措法、「戦争法」(平和安全法制)などの相次ぐ違憲立法によって、空洞化が進みました。 そして今や安倍政権は公然と明文改憲を標榜し、また公文書の隠蔽・改ざん、データねつ造・偽装、虚偽答弁、統計不正など民主主義の根幹が揺るがし、行政や政治の私物化もきわまっています。 また、経済面でもバブル崩壊による「平成不況」で幕開けし、その後もアジア通貨危機、ITバブル崩壊、リーマン・ショックなど大きな経済危機に見舞われ、「失われた10年」をはじめとする長引く不況に襲われました。 そうした中、新自由主義的な構造改革路線が強化され、労働者の非正規化がすすみ、格差や貧困が拡大し、社会の二極化、将来不安の増大がもたらされましたということである。


 新旧天皇陛下とも日本国憲法を遵守と述べられているが、世界の平和を切に希望されてもいる。 近隣国を見ただけでも、過去30年間でGDPが29倍に拡大し、日本の2倍に膨張した共産主義国が、空路2時間のところに位置している。

 チャールズ・ダーウィンに、It is not the strongest of the species that survives, nor the most intelligent that survives. It is the one that is most adaptable to change. (生き残る種とは、最も強いものではない。 最も知的なものでもない。 それは、変化に最もよく適応したものである。)と言われるまでもなく、不測の事態を想定し法制を整備するのは初歩的である。

 政府与党が、激動する国際情勢を意識しながら、国家運営を目指すという決意表明をして、野党の曰く違憲立法による空洞化を進め続けているだけでも救いである。

 野党なかりせば論は本題から離反するが、日米同盟の強化・辺野古を初めとした米軍基地の整備・自衛隊戦力の増強などは、令和新時代を創建していくための基本である。

 まず、平成時代の積み残した案件は明白になったといえるが、偏狭なイデオロギーもそのまま継続しなければならないことに、寂寥感も漂う。


2.10連休の陰で苦しむ中小企業という、喧騒の外野席

 某コメンテータは「特に中小企業は立場が納入先に対して弱いので、”入金は後、だけど支払いは先” といった資金繰りの大変な状況を(10連休中に)かかえているところがたくさんある。 これをどう解決するかが大事になってくる。 金融機関のシステムがなかなか即時決済という形で成り立っていない。それをいかに改善していくか。 欧米とか中国では先行して(即時決済)が可能になっているので、それをキャッチ・アップしていくことがポイントになる。」とコメントした。

 10連休を問わず資金繰りに窮する企業があるのは債権債務の金融バランスから自然のことであり、月商1か月分の資金余裕がある企業など多くはない。

 現場・現物・現実の3現主義の重要性を言うまでもなく、金融機関から無担保・無保証の融資契約をいかに取り付けるかが財務担当者の現場活動であり、それが大事なことなど承知した話である。

 日銀は、10年後に地方銀行の約6割で純損益が赤字になるとの試算を公表し、他業態との連携も提言しているが、それも見越した融資交渉を日夜行っているのが現実である。

 このコメンテータは、何をもって即時決済の成り立ちを唱えているのか不明であるが、最初から与信力という現物が無いところには決済力も無いことなど、当然のことであり、しかつめらしく言われることなど余計なお世話である。


3.「困ったことに偏見に凝り固まった日本人もいる」という、的外れの評論

 某コラムニストによれば、今の日本に「経済大国」という形容詞がふさわしいと思っている人はそう多くはなく、ふさわしいのは「差別大国」という形容詞。 先日、都内の日本語学校に留学している18歳の中国人の女性が、アルバイト先のスーパーでいきなりひどい言葉を投げかけられたという記事が話題になった。 女性は、酔った60代ぐらいの日本人男性客が支払い時に小銭を落としたのを見て、手助けしようとしたところ、いきなり「中国人だからそういうことをするんだ。 人の金を取るんだ」と怒声を浴びせられたそうだ。

 「65歳以上のいる世帯」の相対的貧困率は27%、生活保護世帯の45%が65歳以上。 20万~30万円/月払えるなら民間有料老人ホームに入れるが、お金がなければ公的な特別養護老人ホーム(特養)などにしか入れず、特養は満杯で一施設平均117人もが入居待ちの列をなすという現状。 コラムニストが差別大国の引き合いに出したのも、この該当者かもしれない。 


 鉄道での暴力行為を行なった加害者の年齢で一番多いのは「60代以上」で、全体の23%、加害者の年齢が高くなるにつれて、暴力行為の件数が増えていく傾向がある。

 人生100年時代と並んで、貧困老人・下流老人というフレーズを見ない日はないが、今後少なくとも、人間は年齢に比例して気品高く、ノーブルになるという幻想は捨てる方が良い。

 酔った60代ぐらいの日本人男性客の一挙一動で、日本は差別大国化したと杞憂するぐらいなら、老人が引き起こす問題を真剣に考えるべきではあるが、これは本題から離反する。


 アルバイトの中国人女性の事例など、物販・サービス現場で日本人客に応対する日本人スタッフが直面する事例に比べれば取るに足らず、懸念の対象にさえならない。

 天皇陛下即位の総理大臣挨拶で、平和で、希望に満ちあふれ、誇りある日本の輝かしい未来、人々が美しく心を寄せ合う中で、文化が生まれ育つ時代を、創り上げていく決意をされることは、誠に秀麗である。

 それを担うはずの現場・現物・現実が、かくも実態から偏狭・乖離し、浮ついた状態にあることが、令和時代の始まりにあたっての懸念であり、平成時代からの積み残し案件として解決せねばならないことが、たちまち浮上してくると覚悟する。