未来の遣唐使船

 

未来の遣唐使船    2010年11月26日


 630年から、日本は中国に友好のために遣唐使船を遣わし始めました。 それから1400年近くが経った今日、新たな船を遣わさなければならない事態になっています。 その船はどのような船なのかについて考えます。


 1.中国はなぜ脅威か?

 米議会に対中政策を提言する超党派の諮問機関「米中経済安保検討委員会」が11月17日、年次報告書を発表した。 中国の軍拡に懸念を示し、嘉手納(沖縄)など東アジアの米軍主要空軍基地6カ所のうち、5カ所が破壊可能な状態にあると警告した。
 報告書は、中国の空軍や通常ミサイルの能力が「劇的に向上している」とし、有事の際に米軍の接近を阻む戦略を進めていると分析している。 日本の嘉手納、横田(東京)、三沢(青森)と韓国の計五つの空軍基地が弾道ミサイルなどの射程内にあり、残る米領グアムのアンダーセン基地も爆撃機の向上ですぐに標的になりうると懸念を示した。

 日本にはすでに十分すぎる米軍基地があり、他国から攻撃を受ける恐れはない。 もし中国が日本を攻撃すれば、それは中国にこれ以上ない悲劇的結果をもたらすだろう。中国に関するあらゆる情報を分析すれば、中国は自ら戦争を起こす意思はないことがわかる。 中国の脅威などは存在しない。 それは国防総省や軍関係者などが年間1兆ドル以上の安全保障関連予算を正当化するために作り出したプロパガンダである。 過去60年間をみても、中国の脅威などは現実に存在しなかった。 (チャルマーズ・ジョンソン/国際政治・東アジア研究者)

 このように、アメリカ内部の研究者の意見でさえ正反対に分かれています。 ここで、現在の主要国のGDPと軍事費の関連をまとめてみます。

     日 本    アメリカ    中 国    ロシア     世 界
軍事費    5兆円    60兆円    9兆円    6兆円   140兆円
GDP  500兆円  1400兆円  500兆円  100兆円  5000兆円


 数値から明らかなことは、

1.中国のGDPは、過去10年間で5倍に増加、軍事費は2倍に増加した。
2.そのために、軍事費の対GDP比率は4%から2%へと半減し、ロシア型から日本型へと転換した。
3.ロシアは、軍事費が少し多いが、GDPと合わせて勘案すると恐れるに足らない。
4.中国は、軍事費は日本の2倍、GDPは同額であり、将来的にも日本の生産量とリンクするようにGDPが増加する。

ということです。

 中国は、日本のバブル経済の崩壊からリーマンショックにいたる経済の長期低迷とデフレ化の対策として、製造原価低減の受け皿となりました。 Maid in Chinaとは、日本規格の中国生産すなわちMaid in China by Japanそのものです。 この受け皿状態は容易に解消することはできず、GDP指標で測定する限り中国は膨張し続けます。

 また、中国の歴史教育が問題です。 抗日戦争による庶民の悲劇を学ぶことは、中国人にとって自強精神を身につけるための教材であり、反日教育ではなく自強教育が狙いだといいます。 

 「自強(人も国も強くなる)」意志を樹立させる手法として、苦しかった経験を思い起こして、もうその過去に戻らないために自分を鍛えることを生活習慣にしており、不特定多数の中国人は古い歴史から教訓を汲み取るのが習慣になっているようです。 

 この執念深さは日本も学ぶべきですが、それが高じれば中国政府の扇動によりいつ反日運動に発展しても不思議ではなく、決して安閑としておれるものではありません。

 GDPは高位到達したものの、労務費の高騰によりコストダウンが必要になった日本の受け皿対応と、半世紀遅れて起動した中国国民の上昇気流がまさにグランドクロスし、積乱雲を発生させつつあるのが現在の状態です。

 沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件の背景には、良くも悪くも暴力団に仕事を発注しているためにその資金源を断つことができず、当然の成り行きで儲けた金で銃砲を買い揃えている状態、そして組員がうろついている状態が存在します。

 少なくとも、チャルマーズ・ジョンソンのように「中国の脅威などは存在しない。」とは冗談にでも言えません。


2.中国は侵攻してくるか?

 歴史上、中国本体が直接欧米・日本を侵略したことは、モンゴル民族主体の「元寇」以外にはありません。 それも、5回に及ぶ服属要求を北条時宗に振られた結果、台風シーズンを構わず押し寄せ自滅する無謀さです。

 三国志に代表されるように中国国内では戦乱が頻発することはあっても、そのエネルギーが海外にまで及ぶことはありません。 欧米とは地理的に遠すぎ、日本とは1000kmの東シナ海で隔てられているからです。

 無謀とはいえ、押し寄せる蒙古軍に対し日本が対抗できた要因は、以下の点があげられます。

1.朝廷がクビライに出そうとした返書は「日本は天照大神以来の神国であって、外国に臣従する謂れはない」とする内容のように、政府の抗戦ポリシーが徹底していた。

2.博多湾岸に防塁を構築し、異国警固番役で兵力を集結する等、蒙古軍に対抗する十分な準備をした。

3.日本が独立国として存在し続けるために朝廷と鎌倉幕府が協力し、国をあげて蒙古軍と戦い、文永の役(1274年)と弘安の役(1281年)における日本軍の勇猛果敢な攻撃によって蒙古軍に大きな損害を与えた。

 地政学者のマッキンダーは、「世界史を通観していかなる国も強力な大陸国家であって同時に強力な海洋国家であることはできない」と言っています。

 中国は、海岸線18000kmで8カ国と接し、陸地国境22000kmで14カ国と接しています。 Maid in China by Japanと必死の元安政策で10年がかりで日本と同額のGDPを達成し、軍事費もせいぜい9兆円です。 

 レーダーもコンピューターも完備した現代に、自国の歴史にも学ばずいきなり日本本土に侵攻してくることはありません。

 ただし、日本の周辺で戦後初めての「局地的戦争」が起こる可能性があります。 黄海上の韓国の延坪島(ヨンピョンド)に、北朝鮮軍が発射した砲弾が多数着弾し、「事件は国連軍が一方的に引いた違法な『北方限界線』(NLL)のために引き起こされた危険な事態だ。 米国とその追従勢力は事件の真相を調べる前にむやみに非難する悪習を捨てるべきだ。」と妄言を吐いています。 しかも韓国は、北朝鮮の海岸砲を攻撃破壊することができません。 3月に発生した北朝鮮の魚雷攻撃による海軍哨戒艦「天安」沈没事件に続いて、またも韓国のやられ損です。 

 現在の日本の防衛力では、同様の事態は同様の結果となり、内閣総理が『甚だ遺憾です。』と泣き寝入りして終わりです。

 今回の北朝鮮の事件からも明らかなように、同様の事態になれば、日本の海上保安庁と自衛隊は全力を挙げて攻撃し、当方の2~3倍の損害を相手に負わせた上で、幕引きする体制構築が急務です。


3.日本はどのように防衛準備するか?

 仙谷は、18日の参院予算委員会で、自衛隊を「暴力装置」と表現した。 直後に撤回し「実力組織」と言い換えた上で「法律上の用語としては不適当だった。 自衛隊の皆さんには謝罪する。」と陳謝した。 柳田が14日に大臣就任祝いの会で「法相はいいですよ。(答弁は)二つだけ覚えておけばいい。『個別事案についてはお答えを差し控えます』。分からなかったら、これを言う。これでだいぶ切り抜けてきた。あとは『法と証拠に基づいて適切にやっている』」と挨拶していた。

 前サッカー日本代表監督のトルシエのコメントに、「日本代表監督をやり日本人に対しての印象が変わったのは事実。 一番驚いたのは日本人は不真面目だった事。 本気になる事を格好悪いとでも思っているかのよう。 本気になる選手がいてもその選手を周りの選手が茶化すような素振を見せたときはこれでは勝てないと思った。」とあります。

 精神科医の香山さんは、「いやな記憶」にぐじゅぐじゅしている個人が多い一方で、世の中の大多数の人たちは、忘れてはいけない事件や出来事、政治家の不正、失政もあっさりと忘却していくと指摘しています。

 得体の知れない商品取引勧誘の電話がかかります。 気の弱い人間が一旦話し相手になると、相手のペースにはまり、際限なく話し続けられ、切るタイミングを失います。 やがて根負けして、会いましょうとなります。 一旦会うと、相手側はそれらしい人間が大挙登場し、圧力をかけられ、不利な条件の取引に捺印してしまうことになります。 相手をどのようにあしらうか、予測と準備をしてかからないと大損害を食らうことは、個人レベルでも日常的に起こることです。 最初の一歩が極めて大事である例です。

 現在の日本の防衛力では、有事となっても内閣総理が『甚だ遺憾です。』と泣き寝入りして終わりとなることは明らかですが、その根底には日本人固有のリスク、すなわち危険が差し迫っていても何とかなると先送りし初動が遅れる「危険遅認識」があります。 政党も議員も一般国民も同様にこの危険遅認識リスクを抱えています。 早急に「危険過認識」に変えなければなりません。

 戦うべきときに戦わない国そして戦える準備のない国は滅亡します。 いくら「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼」しても、中国・ロシアに裏切られれば終わりだということをいい加減に知るべきです。 

 中国は、東シナ海のガス田を共同開発することで合意したにもかかわらず全く交渉に就きません。 ロシアは、北方領土をめぐる交渉方針を転換し、歯舞・色丹の2島引き渡しを明記した1956年の日ソ共同宣言に基づいた交渉はもう行わないとたわけています。

 日本は、これらの明白な事実を念頭に据え、いよいよネジを巻きなおす時です。


4.アジア新秩序をどのように構成するか?

 政府の「防衛計画の大綱」の改定を年末に控え、民主党外交・安全保障調査会(中川正春会長)がまとめた提言案のポイント。

1.国家安全保障会議(NSC)新設などによる官邸の政策立案・情報集約機能を強化する。
2.南西防衛戦略で沖縄本島の陸自第15旅団を師団化。 先島諸島(宮古・八重山列島)にも陸自を配備する。
3.自衛隊の人的構成をピラミッド型に改編する。
4.国際平和協力活動への自衛隊随時派遣を可能とする恒久法を制定する。
5.国際共同開発を可能にするように武器輸出三原則を緩和する。

 日米両政府が、来年春までにまとめることで合意した日米同盟の新たな共同声明に関し、日米両国が地域や世界で実現を目指す新たな「共通戦略目標」を策定する。 日米が中国にどう対処するかが主要テーマとなる。

 民主党の提言案など、全く手ぬるい内容です。 黄海上の韓国の延坪島(ヨンピョンド)に、北朝鮮軍が砲撃し多数の犠牲者が発生していますが、中国はこのチンピラ見習いの北朝鮮の後見人となっています。

 金正日体制が崩壊すれば大量の難民が大挙して中国に流れ込むことになり、また独立国・北朝鮮は駐韓米軍と中国との間の緩衝地帯になっているため、中国は北朝鮮の後見を続けなければなりません。

 日本が採るべきアジア新秩序体制とは、

1.日本-台湾間の海上防衛(新生命線)を日米韓共同で固め、中国と北朝鮮を北東ユーラシアに封じ込める。
2.中国に乞食同然の北朝鮮の後見を続けさせ、共倒れさせる。
3.日中交易は継続し中国が離れられなくしておきながら、中国の資源を吸い上げる。
4.尖閣諸島以下、東シナ海の権益は一切譲歩しない。
5.南シナ海の争いは対象国に放任し、中国のはけ口をそちらに向けさせる。
6.中国の出足を削ぎ落とした後、ロシア単体と北方領土返還交渉を行う。

そのためにも、以下の増強対策が喫緊に必要です。

「海上保安庁」の増強

(1)海保の予算を2倍に増加する。(現在は年間1800億円でイージス艦1隻分)
(2)巡視船を200隻以上に増加し、性能向上、武装強化する。
(3)領域警備法を緊急制定する。
(4)警職法準用ではなく、海上保安庁職務執行法(交戦規定)を緊急制定する。
(5)尖閣諸島を実効支配する(職員常駐)。

「防衛力」の増強

(1)原子力空母3隻を建造、日本海・東シナ海沿岸へ配備する。
(2)原子力潜水艦8隻を建造、       〃
(3)イージス艦以下護衛隊群8隻を     〃
(4)尖閣諸島周辺海域で日米合同演習を実施する。
(5)射程距離3000kmの中距離弾道ミサイル200基を日本海沿岸に配備する。

世界が「カンタン」するためにも、日本がやって見せなければなりません。