参院選の再編成

 

参院選の再編成    2010年6月13日


 参議院は任期が6年で解散がないという点で、任期4年で解散がある衆議院よりも長期的・総合的な視点で議論することが期待されており、また衆議院の専横を防ぐ牽制機能も期待されており、「良識の府」と呼ばれます。

しかしながら、それらの十分な機能を果たしていないため、参議院は比例代表制を廃止し、定数を都道府県単位で原則一律4人、政令市を持つ道府県と東京都(計15都道府県)は2人上乗せの6人にするという提案がされています。

参議院議員選挙制度について考えます。


 私は、提案の功罪を考慮した上で、目標とされることには賛成します。

 現在の参議院議員選挙は、各都道府県を1区とした選挙区で2名から10名を選ぶ方法と、全国区の比例代表制とを並立して行われています。 ただ、この比例代表制は、衆議院議員選挙の拘束名簿式比例代表制ではなく、非拘束名簿式比例代表制が取られています。

 各政党の得票数に比例して、政党ごとの当選者を定めた後、政党の届け出た候補者名簿のどの候補者を当選させるかについて、候補者名簿に順位を定めず、候補者個人の得票数が多い順に当選人を決定する方法です。

 まず、現在の参議院議員選挙制度の評価です。

長所

1.一度当選すると6年間は改選がなく、その地位は安泰であるため、十分に政策の研究等に取り組める。

2.地元に密着する時間も衆議院議員と比較して長く取れるため、地元経済の動向その他に精通できる。

3.自分の任期中に必ず発生する衆議院議員選挙に、自分の業績評価をタイアップすることで、与党議員の過半数確保に有効となる。

短所

1.6年間は改選がないため、当該政党が一旦政権の座に就くとその政党が不本意な政策を行っても、容易に政権交代ができない。

2.地元に密着しがちであるため、特定の利権団体等の意見代表になりがちである。

3.非拘束名簿式比例代表制を取っているため、本来選ばれるべき政策に精通した候補者よりも、集票マシン的な候補者が当選しがちである。

 次に、提案の参議院議員選挙制度の評価です。

 参議院は比例代表制を廃止し、定数を都道府県単位で原則一律4人、政令市を持つ道府県と東京都(計15都道府県)は2人上乗せの6人にするという内容です。

 現在、2人区は29県ありますが、その県人口は最多の群馬県が200万人、最少の鳥取県が61万人となっています。 同じ2人区でありながら、3倍以上の1票の格差が生じています。

 これを、定数を都道府県単位で原則一律4人とすると、地元に密着しがちであるため、特定の利権団体等の意見代表になりがちという短所が、ますます拡大するのではないかと危惧します。

 また、比例代表制を廃止すると、集票マシン的な候補者の擁立は避けられますが、全国的な視点で政策を考えるということが参議院では困難となり、地元の利権代表者の集団となって、衆議院の専横を防ぐ牽制機能も弱体化するのではないかと懸念します。

 私は、現在の参議院議員選挙制度の修正を考えるのであれば、

1.現在の比例代表制を拘束名簿式比例代表制に変更して、あくまで政党が責任を持って「良識の府」を維持する。 それにより、高い見識を持った個人が当選する確率を高めることは、ある程度担保できる。

2.そのためには、政党は集票マシン的な候補者は擁立せず、また自浄作用により不可能とする。

3.参議院の任期を4年の固定制とする。 現在の世界情勢と変化の速度を勘案すると、6年も要するような政策実行はむしろ非現実的とさえ言える。

4.将来の道州制導入を見越すとともに、1票の格差を是正するためにも、都道府県単位に定められている定員を道州制単位に編成し直し、広域的に政策判断ができるようにする。

ということを考慮するべきと思います。