電気自動車の普及 2012年10月21日
環境問題の解決とビジネスチャンス拡大に向けて「究極のエコカー」電気自動車(EV)を一層普及させるということが提案されています。
EVの普及について考えます。
EVのメリットについて、以下の点があげられています。
1.搭載した電池による電力だけで走行するEVはエネルギー効率が高く、二酸化炭素(CO2)排出量の削減につながる。
2.1キロ走行当たり必要な電気料金は、深夜料金なら約1円。 一方、ガソリン車は1キロ当たりのコストは15円。 EVは10分の1以下で済む。
3.EVは走行中ガソリン車のエンジン音のような騒音がほとんどなく、排ガスも一切出さない。
しかし、このメリットはサプライサイドから見たものであり、消費者サイドから見て効用最大化とならない限り、ガソリン車からEVへの買い替えは進展しないことを考慮する必要があります。
消費者サイドから見たEVの不満足さは、以下の点があげられます。
1.車の購買意欲は、燃料費の単純なコスト計算だけで喚起されるものかどうかである。 もしそうであれば、これまでのガソリン車の時代にも軽自動車が爆発的普及をしていないことをどう考えるかである。
2.軽自動車の燃費は5円/㎞であり、EV車に対して車両本体価格は3分の1以下、車種のバリエーションは3倍以上である。 すでに軽自動車が2700万台普及している状態で、これをEVに置き換える誘引が働くかどうかである。
3.車と住宅は、差異化競争およびステータスシンボルの際たるものであり、その地域や人間の精神的高揚を反映するバロメーターである。 歴史的にも、経済的余裕が生じれば例外なく両者とも高級化するものであり、高級車までEV化するかどうかである。
4.自動車メーカーは、消費者が完全にEV選択に移行する保証がない限り、多品種小ロット生産を避けるために品ぞろえを増やさない。 そのため、EVの車両価格は容易に下がらない。
5.今日のように原発廃止を前提とした電力不足が懸念される状況下において、自動車の動力を火力発電の電力に置き換えることが、効率的と言えるのかどうかである。 また火力発電によって、ガソリン燃料相当の電力をすべてカバーできるのかどうかである。
6.ガソリン車に比べ、EVはエネルギー補充1回当たりの走行距離が4分の1以下と決定的に短い。
米海軍のディーゼルエンジン空母が原子力空母に完全移行したのは、燃料補給時間と燃料格納スペースの削減という点において、長時間の作戦行動が可能となるという絶対的なメリットがあったからです。
映像録画のベータ方式がVHS方式に規格負けしたのも、HD‐DVDがBlu‐rayに規格負けしたのも、すべて記録容量の絶対的な差です。
これほどの差は必要ないにしても、消費者サイドから見て、ガソリン車からEVに乗り換える誘引は大きなものではなく、むしろ現在の状態ではデメリットになるケースの方が多いのではないかと思います。
自動車の利用において最も手間のかかる点は、ほとんどセルフ化しているガソリンスタンドでの燃料補給と交通渋滞です。 現在でも休日前には混雑する燃料補給がさらに長時間化することになれば、デメリットしか残りません。
突然の所用で長距離走行しなければならなくなれば、充電が間に合わずたちまち「電欠」となって停止する車が多発するのではないかと懸念します。
しかしながら、条件さえ揃えば、21世紀初頭の携帯電話のように、EVが爆発的に普及し、将来の日本の基幹産業となることもあり得ます。
その条件は、
(1) 5分間でフル充電ができること
(2) フル充電で500Km走行できること
(3) 電気ステーションがガソリンスタンドと同数に設置されること
(4) 〃 がソーラーパネルを装備し自家発電で賄えること
(5) ガソリン車と同等の加速・馬力性能があること
(6) 〃 車両価格であること
ということです。
私は、いきなりEVをすべてに普及しようとせず、近場での利用のみの人はEV、通勤や旅行に多用する人はガソリン車と、利用目的を区分して棲み分けをしてはどうかと思います。
あるいは、大都市用にはEV、地方用にはガソリン車というように、公用車を手始めに区分導入するのも良いと思います。
家電エコポイント制度による二酸化炭素(CO2)排出量の削減効果を会計検査院が独自に試算すると、年間21万トンにとどまり、政府が試算した結果の8%にすぎなかったという報告がされています。
この試験的導入結果を踏まえ、総合的効果を判断したうえで、本当に効果があるのであれば、環境税や導入補助金という政策として組み込んでいけばよいのではないかと思います。