事業仕分け 2010年11月3日
10月27日から第3弾の公開事業仕分けが始まります。 事業仕分けは、政府の行政刷新会議が音頭を取り、国の予算の使い方について、その事業が本当に必要かどうか抜本的に見直し、財源を捻出(ねんしゅつ)するとともに、国としての制度・成果・組織・戦略などの課題を把握するためのプロセスです。
事業仕分けについて、考えます。
私は、「事業仕分け」をより実効性のあるものにするために、以下の提案を行います。
(事業仕分けの良かった点)
国民の監視が行き届きにくかった予算の見直し作業について、インターネット放送ですべて公開するなど、どのように税が使われ、それが本当に国民生活に役立つものなのかどうかを分かりやすく示したということは、全く賛成です。 その結果、
1.国民が、納税者として税金の使われ方を真剣に考える機会を提供した。
2.実際に1兆円以上の財政を改善した。
という効果がありました。
(事業仕分けの悪かった点)
(1)事業仕分けの基準が不明確
(2)仕分けの実行と、官庁の人事評価が必ずしも一致していない
ということも然ることながら、
1.防衛予算・科学予算・スポーツ予算などの、国家としての名誉や存亡に関わることまで、一律に削減基準を適用している。
2.それらの予算を削減すると将来どのような結果を招くかという見通しが甘すぎて、大きな隙ができている。
3.仕分け人自体が素人集団であり、回を重ねても初歩的な質問が多すぎる。
ということがあげられます。
1.の防衛事業については、軍服を海外調達したり自動小銃の予算減額を迫るなど、軍事知識が明らかに不足している仕分け人が参画しています。 自衛官は本来の防衛任務に専念させて、人員と予算の効率化を図るべきなのですが、予算の削減から自衛隊施設のペンキ塗りや草刈りといった基地や機材の維持管理を自衛官自らが行っているのが現状です。 そのために、脆弱な国防体制を隣国に見抜かれ、その隙を突かれて尖閣諸島の衝突事件とその後の反応のような結果を招いています。
また科学予算については、次世代スーパーコンピュータ「汎用京速計算機」の開発予算を事実上否定していますが、今年ノーベル化学賞の受賞が相次ぎ、受賞者からも科学研究をないがしろにすることへの大きな警告が発せられています。 日本の将来の科学技術力維持を考えると、猛省するべきです。
またスポーツ予算については、日本オリンピック委員会の予算も仕分け対象となり、「マイナー競技にまで支援が必要なのか」と選手強化費などについて「削減が妥当」と判定し、その結果バンクーバーオリンピックでは、「金メダル0個」となりました。 2012年のロンドンオリンピックにも大きな影響が出る可能性があります。
このような結果となる原因は、3.の仕分け人自体が素人集団であり、政府としても何に予算を重点配分したいのか、日本を取り巻く懸案事項にどう対処するかというポリシーが、全く欠落していることにあります。 脱霞ヶ関を急ぐ余り、受け皿が伴わず事業仕分けがセレモニー化して、その隙を突かれる結果となっています。
これらの点を厳に反省することが、「事業仕分け」をより実効性のあるものにする第1歩であると思います。