少子化対策

 

少子化対策    2009年1月4日


 「ゼロから考える少子化対策プロジェクトチーム」が発足し、子どもを生み・育てやすい社会を実現するため「思い切った少子化対策」の提言が試みられています。 

 少子化対策について考えます。


(1)少子化のデータを確認
(2)データをもとに、どの部分をどう対策するか
(3)財源をどうするか について述べます。

(1)少子化のデータを確認します。

・何人の出生が必要かから検証すると、現在の新生児誕生数は約100万人/年、他方団塊および団塊ジュニア世代を除けば、親世代は約150万人/年、故に新生児誕生数を、最低でも現在の1.5倍に増やさないと、日本の人口構成を制度的に維持できません。 すなわち、1.34x1.5≒2.08の出生率が必要です。

・ところが、都市と地方の差は大きく、一律的な対策は非効率的です。
1.概ね、東京・大阪およびその周辺都市では出生率は1.3未満、地方都市では1.4以上です。 
2.全国の待機児童数2万人中、東京・神奈川・埼玉で8800人、大阪・兵庫で2300人と5都府県で55%を占めています。

・なぜ少子化となるかの3大理由です。
1.育児・教育費を筆頭に経済的負担大
2.仕事との両立が困難
3.晩婚化

(2)データをもとに、どの部分をどう対策するか考えます。

・上記理由の1.育児・教育費は、大都市・地方都市ともに関係する課題です。 

 平均的保育所費で30万円/年必要です。 平均的公立中学校生徒で、学費等10万円 塾費等35万円 合計45万円/年教育費として必要です。 確かに、個人負担に任せるのは限度があります。 まず、この保育所費および小中学校までの教育費の軽減をします。 その方法は、補助金として一律に配分するのではなく、一方的に無料にするのでもなく、「所得税額控除方式+基準点評価方式」をとります。 恩恵を受けるのは、あくまで少子化対策に参画する方が対象です。 また、恩恵を受ける以上、確たる該当理由審査・学業成績審査も必要です。 アメリカには塾はありません。 育児、教育は親の責任という考え方が徹底されています。 日本とは社会事情が異なるため、取り掛かりとして、社会と親との応分の負担を考えます。

・大都市固有の経済的負担のひとつに、住居費があります。

 3LDKの賃貸料が、地方都市では8万円程度ですが、大都市では15~20万円/月かかります。 大企業勤務者の場合は、フリンジベネフィットで半額以上の補助が得られるのですが、自己負担の方も多いです。 中学生以下の子女がいる家庭の賃貸料を、せめて地方並みまで補助金手当します。 これにも当然、厳正な審査は必要です。

・上記理由の2.は、ほとんど大都市固有の複合課題です。

 「大都市の高い生活費をカバーするには、共稼ぎが必須 → 子どもがいても保育所が不十分 → 民間企業では産休・育休制度が不十分 → 退職すれば女性の職場復帰は困難 → 出産などできない」 というスパイラルが回っているのです。 まず、5都府県で待機児童数の55%を占めるのですから、ここに重点的に保育所の整備拡充を行います。 政府主導で、駅前等の利便性のある保育所を開設します。 雇用対策も兼ねて、保育士を大量採用します。 次に地方都市ですが、体育館施設等の稼働率の低い建物を保育所に転用し、さらに民間委託します。これにより、政府補助金が受けられ、地方自治体の負担は半分以下になります。 以上の対策により、上記のスパイラルを切断できると思います。 50万人/年出生数を増加させるという大規模な変化を起こそうと思えば、特に女性の誰もが育児・教育がやりやすいと思えるところまで踏み込む必要があります。

・これ以外にも、以前から、男性の育児参加の少なさ・長時間労働・産休制度等の不十分さが理由としてあがります。 しかし、正社員でもリストラの対象となる民間企業の現状からして、その当該企業や従業員に少子化対策を期待しても早晩行き詰るだけです。 政府主導で、取り掛かるべきです。

(3)財源をどうするか考えます。

・まず、法人税課税事業体を対象に、貸借対照表上の「自己資本」の0.5%を「少子化対策税」として課税します。

 アメリカの税法には、企業が必要以上に利益を貯めると課税される「留保金課税制度」があります。 優良企業であれば、現在は損益計算上赤字でも、過去に十分留保した剰余金が貸借対照表上に多額計上されています。 この方法により、2兆円が確保できるはずです。 法人税のように、赤字決算のため簡単に「0」になる心配もありません。 企業の利害関係者は、株主だけではありません。 将来の優秀な労働力確保のためにも、ひいては内需拡大のためにも、「少子化対策税」を拠出すべきです。

・次に、企業にも影響軽減が必要です。 税法改正により、損金算入対象を拡大して法人税減税を行います。 

 「減価償却期間の更なる短縮化、引当金等の税務否認項目の減少、実効税率そのものの引き下げ」等いくらでも実施できます。 これにより、「少子化対策税」の半分の1兆円を減税します。

・結果として、歳入総額は減少します。

 その対策は、「25兆円の社会保障費、27兆円の公務員人件費等」に対し行政改革による1兆円の創出です。 省庁・権益の壁、予算の壁を取り払った少子化対策プロジェクトの真骨頂です。 経団連・財務省・霞ヶ関そして政権政党、幾多の抵抗とどう闘うか、そこが過去20年間この問題に取り組んでもほとんど成果の上がらない修羅場です。

企業・政府・国民の3者が犠牲を払って、本気で考えて取り組まない限り、今回も企画倒れの繰り返しとなります。