消費税増税

 

消費税増税    2008年11月19日


 政府自民党は、3年後に消費税を上げると表明しています。

 これに対し、

(1)日本の法人税の実効税率は約40%と、30%前後が中心のOECD主要諸国より高いため、国際競争力が低下する
(2)法人税収に依存しすぎると、景気変動の影響を受けやすくなる
(3)給与所得者と事業所得者間の不公平も問題であるため、

・法人税率を30%程度まで下げ、消費税率を10~15%まで引き上げる
・法人の経費計上を厳しく監視し、税率分はきちんと納めてもらう
・低所得者の負担増を防ぐため、食料品や医療費等生活必需品の税率を低くする
・増収分は社会福祉や貧困対策に優先して配分する

という提案がされています。

 消費税増税について考えます。


 私は、消費税増税に反対です。 その理由を、

(1)提案の前提条件
(2)提案自体

に分けて述べます。

(1)-1 企業の国際競争力が低下するのは、法人税負担よりも労務費負担です。 海外拠点を有する企業は多数ありますが、安価な現地労務費採用、物流コスト削減、納期短縮化、アンチダンピング問題対応、貿易収支バランス等が主な理由です。 法人税率の高さを理由として、日本語文化・宗教・相対的に勤勉な国民性・治安の良さ・制度的優遇等のメリットを捨ててまで、さらに多くの企業が国外脱出するとは思いません。

(1)-2 企業経営において、最大のコスト負担は労務費です。 法人税が減少する時すなわち営業利益が減少する時は、企業は最優先に労務費の削減を行います。 従業員の購買力が下がり、所得税・消費税が減少するのも必然的です。 また、企業自体も消費税負担者であるため、法人税と同様に消費税も景気変動の影響を同じ割合で受けます。 税収は、利益額に左右されない外形課税制度等で部分的に補填できます。

(1)-3 税制上、減価償却費や経費の損金算入という法人固有のものがあります。しかし、この議論は法人税率の引下げという論点とは少し異なります。 この課題については、別の機会に述べたいと思います。

(2)-1 提案は、法人税率を30%程度まで下げ、消費税率を10~15%まで上げるとされています。

 しかし、
・ 従業員の俸給は、各人が所属する企業・組織の規定により決定されます。 そのため、いくら法人税を減らしても、その分は従業員には還元されません。 法人税率の引き下げは、購買力の向上に何等寄与しないのです。

・ 企業の余ったキャッシュフローはファンド等の資産投資や不必要な設備投資に向かい、法人税減税バブルとなる可能性があります。

・ 他方、消費税率を上げれば、1人10万円/年以上の税負担が発生し、「所得は横ばい、税負担は激増」で、個人消費・内需はますます減退します。

・ 企業も消費者であるため、設備投資等の際に資金負担が増加し、特に新興企業等の成長を阻害することになります。

(2)-2 企業経営において、いくらの経費が適正かの基準などありません。

 何が生活必需品なのかも個人毎に異なります。 病弱な人には医療費や健康食品が生活必需品ですが、壮健な人にはフィットネスクラブ会費がそれにあたります。 そもそも品目毎に税率を変えることなど不可能です。

(2)-3 社会福祉や貧困対策のために増税すること自体、論理が矛盾しています。

それらは国防・教育と並んで既存の税収内で行うべき最優先課題であり、税金の無駄な使途や配分を見直すという検討をするべきです。 GDPも税収も概ね増加し続けています。 尚且つ法人税収から消費税収へのシフトを起こすということは、誰から誰への所得移転となるのか、その意図と必要性を明確にするべきです。