社会起業家

 

社会起業家    2009年8月27日


 「社会起業家」と言われる、社会問題を解決するために株式会社やNPO(非営利組織)を設立する経営者が注目されるようになってきました。 しかし、日本では社会起業家に対する応援・理解が不足しているのが現状であり、彼らを応援することが提案されています。

社会起業家を応援するのには、どのような方法があるかについて考えます。


 私は、提案に全面的に賛成します。 現在、日本の開発途上国に対する援助活動は、

1.政府主体で、政府開発援助(ODA)制度により、行政法人JICA経由で直接的
2.民間主体で、フォスターペアレント制度により、認可財団法人経由で間接的

等が行われていますが、いずれも開発途上国に対する一方的援助行為であり、営利目的はありません。

 これに対し、援助行為をしながら同時に営利も実現するという第3の組織である「社会企業家」が発展していくことは、新しい活動モデルとして推奨すべきことです。

 しかしながら、社会起業家に対する応援・理解が不足しているという現実は、
・無償ボランティアと混同されがちで、社会起業家が十分な経済的リターンを得ることに対する理解がない
・社会起業家を資金面、人材面、取引面などで広範囲にサポートする財団、団体が少なく、アイデアがあっても経済的な不安で独立できない人が多いということに加え、以下の課題があるためです。

1.日本の政府開発援助(ODA)のありかた
  
 預金残高数百億円のグラミン銀行を設立運営することが、ノーベル平和賞に値するのなら、毎年税金から1兆円を拠出している日本のODAは、その方法自体まちがっているのではないか。 また、社会企業家の応援方法を考えるよりも、ODAの欠陥を是正するほうがはるかに効果的ではないかという不信感が、常に存在します。

2.活動を管理するための特殊法人や外郭団体が増加

 中途半端に行政が介入すると、社会起業家の活動を管理するための特殊法人や外郭団体が増加し、公務員の天下り先を確保することになるだけではないか。 また、利権団体がそれに群がり、私腹を肥やすことになるのではないかという不信感が、常に存在します。 事実、関西学研都市の「私のしごと館」のように、昨今の就職難にほとんど役に立たない職業訓練施設に多額の税金が投入され、失敗しても誰も責任を取らないというような例は数限りない状態です。

 私は、社会起業家を発展させるためには、上記のような課題を払拭しなければならないと思います。 そのためには、以下の施策が必要です。

1.社会企業家の独立性を徹底し、政府は非介入をとおす

 公務員の天下り先という嫌疑の目で見られると、その後の会員や寄付金の募集活動も円滑に進みません。 また、最初から政府補助金をあてにするような体質では、ODAと何等変わらない結果となります。

2.財源確保のために、大幅な税制改正必要

 社会起業家の財源を寄付に頼るのなら、拠出者の寄付金の全額損金算入制度、自己資金から始めるのなら、全額非課税資産制度等の税制改正が必要です。 また、利益に対しては、法人税率優遇制度が必要です。 これらは、既に公益法人や中小企業に対してある程度実現していることであり、更に推進させる必要があります。

3.社会起業家の経営管理システムと成果の公表システム

 社会起業家の経営を健全公正なものにするために、企業会計とは異なる公会計制度を導入することが必要です。 また、拠出者等の利害関係者に対する活動成果の公表と監査システムも必要です。 社会起業家自体が、国民の信頼を得られる活動体となることと、それをオープンにすることが必須の条件です。 

4.活動成果に応じて、ODA予算を組替え補填する

 社会起業家の活動規模とその進展によっては、寄付金と自己資金だけでは不足する場合も生じます。 投下資金1単位あたりの評価を行い、ODA予算の組替えを柔軟に行って補填することが必要です。