マニフェスト

 

マニフェスト    2009年8月23日


 総選挙にあたり、各政党からのマニフェストが出そろいました。 しかし、国民の視点から見ると、各党のマニフェストの違いがわかりにくいということがあります。

これに対し、

(1)政党のマニフェストについては、内容だけでなく、どれだけ国民にその内容を知らそうとする努力や継続的な対話をする姿勢を示しているかを見る。
(2)政党のマニフェストだけでなく、候補者自身にどのような独自提案があるか、ばらつきがあるのかを見る。

という提案がされています。

マニフェストの課題について考えます。


 (1)政党のマニフェストについては、内容だけでなく、どれだけ国民にその内容を知らそうとする努力や継続的な対話をする姿勢を示しているかを見る。

基本的にOKですが、現在のマニフェストではそれ自体、以下のような課題があります。

1.マニフェストのフォーム・内容が各党不統一であり、議論のスタート地点が異なっている。

 例えば、消費税率を上げる、上げないの結論から入るため、内容の比較ができません。 自民党は消費税率を上げる、民主党は上げないとしています。 自民党の消費税率を上げるという理由は財源不足、民主党の上げないという理由は無駄の削減です。 一般会計85兆円、特別会計122兆円、合計207兆円の予算を組替えることで財源を捻出するとしています。

 ところが、一般会計は国会審議されますが、特別会計はほとんど目にすることはありません。 資金の流れも不明瞭です。 両党の不信感、不安感がなかなか拭えないのも、この特別会計が有効なのか無効なのか、実態が不明瞭すぎることが大きく影響しているのです。

 ある大学で学生にアンケートしたところ、
マニフェストを読むつもりがないとした回答は 55.8%
その内訳は、読んでも分からない 25.8%
読むのが面倒    20.4%  となっていました。
政党は、現在のマニフェストの開示レベルは、現役の学生でさえこのような状態であるということを認識するべきです。

2.自分でABC判定をしているが、恣意的である。
 
 自民党は、2005年のマニフェストの達成率が45%、その他はすべて着手中というように自己評価しています。 ところが、総選挙の議員当選数は改選前の半数以下という予想がされています。 自民党の自己評価が、いかに空虚なものであるかが実証中です。

 今回のマニフェストも、「改めます、伸ばします、徹底的」ばかりです。 長期政権でありながら、なぜ改めるに至ったのか、なぜこれまで伸ばせなかったのかがまったく分析できておりません。

3.国民生活にとってはあたりまえの内容まで、マニフェスト化されている。
   
 例えば、財政構造改革、学校教育の充実や資源リサイクル等の課題は、どの政党が政権を取ろうが実行することがあたりまえです。 わざわざマニフェスト化することではありません。 ところが、非常に細かい33ページにわたる文書になっており、わかりやすく読める仕様になっておりません。

 言うならば、あたりまえのことがA評価、本来改革実行すべきことがB評価として織り交ぜてあり、有権者の分析をはぐらかそうとしていると思われてもいたしかたのないデータとなっています。

(2)政党のマニフェストだけでなく、候補者自身にどのような独自提案があるか、ばらつきがあるのかを見る。

 これも基本的にOKですが、以下のような課題があります。

1.政党公認候補が所属政党と異なるマニフェストを掲示できるか。

 一匹狼的候補者ならいざ知らず、政党公認候補が所属政党と異なるマニフェストを掲示することは、現在の小選挙区制度ではありえません。そのような場合は公認候補となれず、また公認されなければ、政党の看板も軍資金も得ることはできません。

 また、多数決制をもって議案は国会決議されますから、政権与党に属さないと議員立法さえできません。 今般の衆議院選挙でも、自民党から民主党に鞍替えする議員が何人もいます。

 すなわち、候補者自身の独自提案は、所属政党のマニフェストを微修正した程度に留まるのが現状です。

2.資金力の差・バックアップ力の差により電子メディア対応できず、紙媒体に頼るしかない候補者も存在する。

 現在のホームページは、政党・議員独自で運用管理されており、公営の共通サーバーは構築されていない状況です。 そのため、資金的・能力的に電子メディア対応できず、紙媒体に頼るしかない候補者も存在するというデジタルデバイドが、議員間でも発生しています。

 また、政党・議員独自で運用管理されているため、将来マニフェストが変更されていてもわかりません。 そのため、選挙期間中に紙で配布されるマニフェストをスキャナーで読み取り保存しているのが現状です。

 以上のように、現在のマニフェストはまだ不十分の点が多いです。 しかし、二大政党制が現実味を帯びるにつれて、各政党とも相当国民の目線を意識し始めたように思います。

 今回の政権交代選挙で有権者が学習したことは、

・一般会計だけではなく、特別会計の存在に注目するべきである
・棄権をなくし、浮動票を動員することで政権与党を交代させることができる
・本当の二大政党制を敷くことで、真剣に政策論争をすることができる
・各政党のマニフェストを徹底的に比較・検証するべきである
・各政党に行政への責任をもたせ、活動内容の開示をさせるシステムが最重要である

ということです。 引き続き、選挙結果を注視したいと思います。