実効的いじめ対策

 

実効的いじめ対策    2012年10月31日


 後を絶たないいじめをどうしたら防止できるのか、また、発生しているいじめをもっと早く発見し、解決できないのかということについて、日本において「いじめ自殺ゼロの国」を目標に、

(1)教育法におけるいじめ対策の義務化
(2)いじめ対策のための研究プロジェクトの発足

が提案されています。

いじめ対策について考えます。


 1.いじめ防止論議の実態

 連日、地域を限定することなく、中学生が自殺しています。 これまでにも、いじめ防止論議は談論風発に行われてきましたが、まったく実効性がありません。 それは、以下の理由によります。

◆表面化の問題

・いじめは水面下で進行するため、被害者が自殺するかそれに類する被害を受けない限り、表面化しない。
・被害者本人がいじめを表面化させる決断に及ばず、苦痛を内包し続けることが多い。

◆学校関係者の問題

・学校は、少なくともいじめに気付いている。
・いじめが事後判明しても、加害者の父兄はそれを認知することを回避する。
・同様に、学校関係者も責任を回避する。
・父兄、学校関係者とも、声の大きい者が有利になるように事を進める。
・結局、いつまでたっても解決の糸口はつかめないまま終了する。

◆対策方法の問題

・学校関係者の対策方法は、せいぜい生徒にアンケート調査をする程度で終了する。
・いじめによる身体被害の因果関係が刑事事件に相当しにくいため、警察も相談の段階では捜査に動かない。
・日本の刑法上の正当防衛の要件は厳しく、身体被害に対して実質的に防衛できない。
・いじめ被害者が、そのような行動をすること自体がない。

以上が、いじめ防止論議の実態であり、その都度この繰り返しです。


2.いじめもいじめを防止しないことも日本国憲法に違反

 日本国憲法は、以下のとおり制定されています。

・第13条 すべて国民は、個人として尊重される。 生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

・第99条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

 すなわち学校関係者は、学校生徒の生命・自由等を擁護しなければなりません。 すなわち、連日中学生がいじめが原因で自殺しているということは、その学校関係者は憲法に違反しているということになります。

 スウェーデンの教育法をいかに真似ようと、シェフィールド大学「いじめ防止教育研究プロジェクト」などの知見をいかに制度化しようと、

・被害者本人が意思表示しないかぎり表面化しない
・表面化しても刑事罰的に対処できない
・学校関係者・加害者父兄も責任を回避する

という状況が続く限り、現場は手の施しようがありません。

 日本国憲法の前文にあるように、悪意を持った加害者の「公正と信義に信頼して、安全と生存を保持しよう」というような生ぬるい感覚に浸潤していじめ対策を行っているため、いつまでも実効性が確保できないのです。


3.いじめ防止の実効的対策

 小中学校教員経験者の指摘する現状の課題は、以下のような事があげられます。

・父兄についての課題は?

  親が放任状態か、厳格に過ぎるかの両極端である場合が著しい。 親からして鍛え直さなければならないと思うことが多い。

・現状の公務員校長ではなぜそれらの課題解決ができないのか?

 公務員は、概して保身に回ることが多いため、改革ができない。 
 民間人なら指名解雇されるような人が、教員に残っている。


 私は、上記の実態を踏まえ、いじめ防止の実効的対策のため、以下の制度を創設しなければならないと思います。

1.大学個々とタイアップし、指定校制・指定成績レベル制を導入する。

2.各大学から適任の大学生・大学院生を教育実習および学力支援要員として無償派遣受け入れし、各大学に将来進学希望する学徒が指定成績にレベルアップできるよう学力強化する。

3.その大学生・大学院生の活動は、学業単位に組み込む。

4.大学付属高校に、指定成績レベルに応じて公立高校と同額授業料で入学受け入れする。

5.正規の教員は、基本レベルまでの学力確保と落ちこぼれを出さない補習対策およびいじめ対策等の生活指導に専念する。

 この制度により、学校の現状が外部の目に曝されることになります。 被害者本人がいじめを表面化させる決断に及ばずとも、周囲が気付き、手遅れになることを防止できます。

 また、教員にも支援学生にも競争意識が働き、成果が数値化できるため、目に見える全体のレベルアップにつながります。 

 もういい加減に社会全体は、いじめは学校や職場という閉鎖的環境が、それを醸成する出発点となっていることを、厳に認識し実効的対策をするべきです。