食糧自給率

 

食糧自給率    2010年9月4日


 日本はカロリーベースの食料自給率が40%(09年度概算)で、アメリカ124%、フランス111%、ドイツ80%、イギリス65%(いずれも07年の農林水産省試算値)と比べても先進国で最低水準のため、政府はカロリーベースでの食料自給率を15年度までに45%に引き上げる目標を掲げています。

 しかし、カロリーベースの自給率を引き上げることに大きな意義があるのかという提案がされています。

カロリーベースの自給率をはじめ、統計数値について考えます。


 私は、提案に全面的に賛成します。

1.品目別自給率

小麦や米など、個別の品目別の自給率。 算出にあたっては、品目の重量を使用する。
国内の生産量(重量ベース)÷国内の消費量(重量ベース)

2.総合食料自給率

個別の品目ごとではなく、一国の総合的な自給率。以下の二種類がある

・カロリーベース総合食料自給率

国民1人1日当たりの国内生産カロリー ÷ 国民1人1日当たりの供給カロリー
国民1人1日当たりの供給カロリーとは、国産供給カロリー + 輸入供給カロリー + ロス廃棄カロリーの合計。

・生産額ベース総合食料自給率

国内の食料総生産額 ÷ 国内で消費する食料の総生産額
生産額 = 価格 × 生産量で個別の品目の生産額を算出し、累積する。

 いずれの自給率計算にも、課題が存在します。

 品目別自給率の場合は、例えば醤油の自給率は「0%」、その生産者の輸出率は「50%」です。 すなわち、日本では醤油は全く自給していないが、生産量の半分を海外に供給しているということになります。

 これは、醤油の原料である大豆を全量輸入しているため、数字のマジックが発生します。

 カロリーベース総合食料自給率の場合は、分母の「国民1人1日当たりの供給カロリー」は、国産供給カロリー + 輸入供給カロリー(ともに可食部)をもとに日本の人口で割ることで算定されています。

 しかし、実際には、「販売店の店頭に並びながら、時間切れで廃棄」「食卓に並びながら、食べきれず廃棄」されてしまう食材量(カロリー)が相当数あり、廃棄した食品が多ければ多いほど食料自給率が低くなるような計算ロジックとなっています。

 廃棄されている食材は、年間900万tに及び、食料自給率の計算の分母となる供給カロリーは2573Kcalですが、日本人が一日に摂取する平均カロリーは1805Kcalであり、それ以外の768Kcalは食べられることなく廃棄されているという統計数値があります。

 また、外食産業は原料代を抑えるために、安価な輸入品を使用しがちです。 近年のその拡大に伴って、分子となる国民1人1日当たりの国内生産カロリーは低落する一方であり、おのずと食料自給率は低くなります。

 確かに、上記の廃棄される食物の割合を是正しても、カロリーベース総合食料自給率は56%程度ですが、食料自給率は、農水省が補助金や関税の意義を強調し、またそれらを獲得するための金科玉条です。

 あらゆる統計数値に言える事ですが、今回はカロリーベースの食料自給率目標の信憑性と有効性を厳密に分析し、その内容を「見える化」することと、それに伴った補助金・関税の妥当性をオープンにすることが必要であると思います。