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Title : BookShelf 2004
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2004/09/10
『ランチタイムの経済学』 (スティーブン・ランズバーグ;日経ビジネス文庫)

 この本、実は以前から目をつけていたのだが、ある時から突然私が出没する書店からことごとく消えてしまい、どうしたもんかなぁと思ってたところ、文庫本になったので早速買って読んだ。まあ、経済学をまじめに学んでいる人にはさほど新しいことは書いてないとは思うんだけれども、カタギの衆が持つ「いったいエコノミストという人種はどういう頭の構造になってるんだろう?」という疑問には答えてくれると思う。もちろんここに書かれていることが正しいなんてことは言うつもりはない。が、典型的なエコノミスト的発想でモノゴトを見るとこうなる、ってのがよくわかる。(なんか文章が冗長。)
 この本で「なるほど!」と思った点が1つある。これまで何となくモヤモヤっとしていたものを言葉で指摘している文章と出くわしたからだ。それは、政策の是非を論じる箇所で、「政策の長所をいくら並べたところで、その政策を選択すべき理由にはならない」という趣旨の部分である。
 「へ?」と思う人もいるかも知れないなぁ。詳しくは Contemporary Files : 2004/09/14 にて。

ISBN4-532-19248-X / \857- + VAT
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2004/06/07
『暴力の哲学』 (酒井隆史;河出書房新社)

 「非暴力」を貫くということは、決して「暴力はいけません」とひたすら衝突を避けることではなく、何らかの直接行動を採ることを意味する。キング牧師やガンジーの言葉と行動を丹念に追っていくとそういうことが明らかになっていく。圧倒的な暴力に対して黙するのではなく、対立を避けるわけでもない。「争点と対決せざるをえないような危機感と緊張をつくりだそうとするもの」(キング牧師)だ。
 で、権力とは、そういう盛り上がりを、強圧的に抑圧するのではなく、「削ぎ落とす」ものになりつつある、とこの本は指摘する。支配する者が「強い者」とは限らない、という指摘は、意表を突かれたが、おそらく事実だ。おそらく非暴力を貫こうとする努力は、いわゆる「権力者」ではなく、圧倒的大多数の一般大衆からの「削ぎ落とし」により力を失い、そしてそのことで、逆説的に、「非暴力」が抵抗しようとした「暴力」が跋扈するのを助けることになる…なんてことを考えさせられる。

ISBN4-309-24308-8 / \1,500- + VAT
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2004/05/21
『戦争における「人殺し」の心理学』 (デーブ・クロスマン;ちくま学芸文庫)

 だいたいこの手のタイトルがつくと、「人間って言ってもやはり動物であって、極限状態では殺しまくる残酷な生き物なんだ!」と主張している本のように思えるかも知れないが、これは日本語版を出すときにショッキングなタイトルにしたからだろう。原題のタイトルは、ごく単純に、"On Killing"、「殺人について」とか「殺人論」とかそういうニュアンスのものだ。著者は長年合衆国陸軍にいた人で、人を殺すということをリアルに把握しようとしている。
 読んでいて意外だったのは、戦場に駆り出された兵士の少なからぬ部分が、殺すことを避ける傾向がある、ということだ。すなわち、戦場のような極限状態であっても、人は人を殺すことを躊躇する、というのが基本的な著者の認識なのだ。だから、「それでも人を殺すためにはどのような条件がそろわなくてはならないか?」という点を明らかにしている。邦訳タイトルには「戦場における」という余計なのがついているが、一般社会における殺人・虐待なども扱っており、なかなか読み応えがある。

ISBN4-480-08859-8 / \1,500- + VAT
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Updated : 2004/09/10