日皮会が作成したガイドラインを掲載しました。こちらから。
今学会で配布されたアトピー性皮膚炎の治療ガイドラインを掲載しました。
とくに目新しい内容ではありませんが。
前年の総会ほどアトピー性皮膚炎に関した話題が多くありませんでした。
ステロイドの是非をめぐる論争もやや下火に成りつつあるという印象です。
ただ、昨年から言われ続けている、ステロイド療法のガイドラインづくりについてはまだ完成しておらず、外用ステロイドの不適切な使用による副作用をなくすためにこれは急がれるべきものだと考えます。最近胃潰瘍・胃炎の原因として注目されているHelicobacter Piloriがアトピー性皮膚炎患者の胃内にも増加しており、これを除菌することでアトピーが軽快するという報告があった。今後の臨床例の集積が必要だが、期待できるデータではと思う。
今回、小林記念講演には阪大大学院理学研究科の植村振作先生をむかえ、近年のいわゆる
「シックハウス症候群」に関連した研究内容を聴講することができました。
大変示唆に富む内容でしたので要旨を掲載させていただきました。
患者家族の皆さんには是非ご覧になって頂きたい!!
9/13に開催された大阪地方会にテーマ演題として
「アトピー性皮膚炎の心身症的側面」がとりあげられました。星ヶ丘厚生年金病院の加藤先生のレポートをご好意により引用させていただきました。
以下演題順
1. ホームページに見るアトピー性皮膚炎の患者心理
2. アトピー性皮膚炎といじめ
3. アルコール依存症とアトピー性皮膚炎
4. アトピー性皮膚炎入院患者における生育歴ならびに家族内葛藤
5. 成人型アトピー性皮膚炎における自律神経失調症状ならびに精神症状
6. アトピー性皮膚炎と心身医学
大変申し訳ないことではありますが、本総会には出席いたしませんでした。前日にプログラムをチェックしたのですが、あまりめあたらしいattractiveな演題がなかったので。しかし公約を破ったことにはかわり無く、ここに謹んでお詫び申し上げます。
私自ら聞くことのできた講演、発表に関するレポートは上の青文字をクリックして下さい。
下記には主なアトピー性皮膚炎関連の演題をあげます。●ランチョンセミナー
「アトピー性皮膚炎の難治化機序と治療」
吉田彦太郎先生(広島市民)
青木敏之先生(大阪府立羽曳野病院)
長崎大学 今山修平先生(九州大学)●イブニングセミナー
「アトピー性皮膚炎の治療-特殊療法をめぐって」
塩水による治療:向井秀樹先生(横浜労災)
強酸性水による治療:長野拓三先生(長野皮膚科)
特殊療法:宇田川晃先生(宇田川皮膚科クリニック)
自己療法と民間療法:木下敬介先生(木下皮膚科医院)●一般演題(興味深いもののみ著者抜粋)
「アトピー性皮膚炎にたいするウーロン茶の臨床効果」
「生後2カ月までのミルク摂取は牛乳アレルギーの成立を抑制する」
●ランチョンセミナー
「アトピー性皮膚炎治療の問題点」
ステロイドの使い方と問題点
玉置邦彦先生(東京大)
抗アレルギー剤の使い方と問題点
瀧川雅浩先生(浜松医大)
保湿剤の使い方
上出良一先生(慈恵医大)●シンポジウム
「アトピー性皮膚炎・どこまでが正しい治療か?」ステロイド外用療法の適応と非適応
脱ステロイドの対象と限界
アトピー性皮膚炎における外用剤の評価
難治症例に対する抗真菌剤の適応と問題点
漢方療法の実際
アトピー性皮膚炎と海水浴-深層水の臨床応用
消毒療法の評価●ランチョンセミナー
「アトピー性皮膚炎と感染」
アトピー性皮膚炎にみられる皮膚感染症
川島眞先生(東京女子医大)
アトピー性皮膚炎の抗菌薬療法
神崎寛子先生(岡山大)
●教育シンポジウム
「アトピー性皮膚炎の病因に対する考え方」アトピー性皮膚炎の病因に関する考え方
(1)免疫学的側面から
瀧川雅浩先生(浜松医大)
中川秀巳先生(東京大)
(2)バリアー機能の側面から
川島眞先生(東京女子医大)
芋川玄爾
36演題中、残念ながらアトピー性皮膚炎関連の発表はありません
昨年の総会でのアトピー性皮膚炎関連の主だった発表についてレビューしておきます
●教育講演「アトピー性皮膚炎の歴史と問題点」 自治医科大学 矢尾板秀夫先生
(論旨)
アトピー性皮膚炎において、直接湿疹病変に結びつかないとされる1型アレルギーが湿疹の主役である4型アレルギーを増強するのみならず、初期のアトピー性皮膚炎患者には1型アレルギー反応である蕁麻疹様皮疹が認められる。サイトカイン面ではINF-r低下とIL-4上昇から、Th-1機能低下とTh-2機能亢進が本症の病態として支配的であろう。アトピー性皮膚炎の乾燥肌については1993年、Sphyngomielinase低下によるセラミド分泌異常の証明によって1歩前進した。しかし、こうした乾燥肌の患者の中にはアトピー性皮膚炎を伴わない患者も見られることから、こうした患者をアトピー性皮膚炎の枠外におくことがアトピー性皮膚炎研究の合理性を高めるものと思われる。●教育講演 「アトピー性皮膚炎の疫学」 上田宏先生 藤田保健衛生大学
(論旨)
1981年に3ポイント以下であったアトピー性皮膚炎の有病率は1992年には6ポイントを超えており、患者数は増加しつつある。また、患者率は大都市圏で有為に高くなっている。年齢的には20歳代にピークが認められ、これは幼小児のアトピー性皮膚炎の難治化による。日本におけるこうしたアトピー性皮膚炎患者の増加の源は快適を追求し、密閉性を高めてきた住宅の構造と関連があると思われる。●教育講演 「免疫機能異常としてのアトピー性皮膚炎」 片山一朗先生 東京医科歯科大学(論旨)
アトピー性皮膚炎での湿疹の発現に、皮膚網細血管内皮細胞の接着分子(網細血管内皮細胞に色々な刺激で発現し白血球を引っ付けて皮膚へ送り込む役目をする)の発現が深く関わっている可能性がある。近年ランゲルハンス細胞(表皮中に存在し、かぶれの原因となる物質の情報をリンパ球に伝える役割を果たしている)がIgEにたいする高親和性のレセプターを持つことが報告され、ランゲルハンス細胞のIgEを介するダニ抗原の提示がアトピー性皮膚炎の発症に重要な役割を担っている可能性が示唆されている。●教育講演 「アトピー性皮膚炎のスキンケア」 宮地良樹先生 群馬大学
(論旨)
ドライスキンに基づく皮膚バリア障害は、発汗、乾燥、紫外線、外用剤、香料、そうは等に対する非特異的な被刺激性の亢進を介してアトピー性皮膚炎の発症、増悪に非アレルギー的なメカニズムで関与するだけでなく、ダニ、ハウスダストなどの環境アレルゲンの侵入や、細菌、ウイルスなどの微生物感染を容易にすることで、アレルギー的メカニズム及び合併症に深く関わっている。スキンケアとして、皮膚を清潔に保つことおよび乾燥を防ぐことが最も重要である。正しいスキンケアの啓蒙と患者の潔癖癖の矯正が大切である。●教育講演 「アトピー性皮膚炎の外用療法」 西岡清先生 東京医科歯科大学
(論旨)
バリアー障害に対する外用として、ワセリン、亜鉛華単軟膏、ビタミンE軟膏、尿素軟膏等を用いる。ステロイド外用薬は十分に習熟した皮膚科医が注意深く使うことが大事。●教育講演 「痒みに対する対策」 山本昇壮先生 広島大学
(論旨)
アトピー性皮膚炎患者におけるそうよう誘発因子として、温熱と発汗、ウールなどの衣類、精神的ストレス、何らかの食べ物、飲酒、感冒があげられる。こうした誘因を除去し、抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤、ステロイド外用剤、保湿剤、場合によっては光線療法、局所の冷却を行い、適切に治療する。最近、アトピー性皮膚炎に白内障のみならず、網膜剥離の合併する率が重症例で高まっており、これは眼瞼部の擦過や叩くことで起こっているものと思われる。