20選 | 富本憲吉作品 コレクション |
絵画 (江戸時代以前) |
絵画 (近代・現代) |
浮世絵 | 書跡 | 彫刻 | 工芸 |
純白の絖地という絹の上質な織りは、ぬめっとした濃密な肌ざわりで、それでいて極めて軽いという高級な素材である。材質もさることながら、この文様にあらわされた軽快な線によって、水の躍動がいかにも涼やか。その流れに身を任せて大小の菊花が動いていく。今は淡く落ちついているものの、鮮明な朱色であった頃の配色は、想像するだに魅力あふれるものであったろう。数少ない江戸時代初期の寛文小袖(かんぶんこそで)の類品である。左肩に起点をおいて、右肩を経て下辺に文様を集中する、そして左辺の空間を残すことによって、絶妙の間を構成して、典型的な寛文の風を今に伝える。