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再び『海猿』。第6巻では、関門海峡での船舶衝突事故の話である。潜水士の資格を取った仙崎の初めての出動となる。
沈没した船の中に救出に向かった仙崎とそのバディの下川は2人の要救助者を発見する。船の通信士と、パニックを起こしながらも「こいつを助けてやってくれ!」と叫ぶ船長である。しかし1度に2人は救出できない。その場面で、先輩である仙崎は通信士を先に救うことを決断し、無事救出する。その後残った船長を救出に向かうが、既に船長の姿は最初の場所にはなく、後に船底にいるところを発見、病院で死亡が確認された。仙崎は、下川の判断は正しかったのかを迷う。迷いつづける。その姿を見かねた、別の潜水士の先輩である池澤が告げる。
「はっきり言ってオレは下川の判断が気に食わない…
だがな…お前はどうした!?
悩めば許されるのか!?
答えのない者に誰が救える!?」「死んだ船長はあの時、何をしたかった…!?
お前はあの時どうしたかった…!?」「………
オレは…オレは…全員 助けたいです…!」
解決するのに非常に困難な問題は、この世にはいくらでもある。
けれども、その問題に対し、「大変だ、大変だ」と言っているだけでは問題は解決しない。何らかの決断をして、それを実行することなしには誰をも救い得ない。
別の場面で、下川が仙崎に話す。
「結果は、結果だ…
オレ達は精一杯のことしかできないんじゃないか…?
何も選択しなきゃ… 1人も救助できなかったぞ。」
…いろんな問題を抱え込んで、自分1人だけがこの世の苦悩を全部背負っているかのように思いこんでしまっている人々がいる。一方で、「問題だ、問題だ!」と騒ぐだけで、自分は何もせずに、誰かに「何とかしろ!」と迫るだけの人たちがいる。
…このような人々は、巧妙な無責任者である。前者は悩むだけの人、後者は悩みもしない人。それゆえに決断とそこから派生する結果への責任を回避しているからだ。
決断とは可能性を殺ぎ落とすことでもある。そしてそれは、自分の器量の大きさが試されるときでもある。自分の境涯を上回る決断は、人間はできないものだ。
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Updated : 2000/11/27
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