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Title : "One of these days" is none of these days.
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「可能性」

 可能性。

 この言葉は、普通はプラスのイメージを持った言葉として用いられることが多いと思う。しかし、中途半端な状態でもある。何にでもなれる−ということは、現時点では、その選択肢のうちのどれでもない、ということだからだ。

 生きると言うことは、可能性を削ぎ落としていくことだ。
 生まれたすぐの子供には、それこそ何にでもなれる可能性がある。
 子供の頃には抱え切れないほどの夢があった。
 でも、現在の自分は、そのうちのほんの一部でしかないのが現実ではないだろうか。

 それは、夢が破れていく過程のようにも見えるが、いくつもの可能性の中からの1つの方向への選択の積み重ねであったはずだ。進学する学校を選び、友人を選び、入るクラブを選び、就職先を選んできた。その他のいろんな可能性があったにもかかわらず。

 「可能性を削ぎ落としていく」とは必ずしも否定的な意味ではない。現実の世界に生きていく私たちにとっては、選択する(=他の可能性を削ぎ落とす)ことで具体的な行動に移せるのだから。

「もっといい人にめぐり逢えるかも」と思っているうちは結婚はできないようなもんですね。

 「何かになれる可能性がある」なんて言って喜んでいるうちは、いつまで経っても、その「何か」でないまま。

 「〜になれる」と「〜になる」

 このたった一文字の違いは、「私は〜になる」との確信からもたらされる。そしてその確信はいかなる困難な状況をもはね飛ばす。逆にはね飛ばされるようなら、いつまでも「可能性」のままだということだ。

 「いずれそのうち」という日はない("One of these days" is none of these days.)のだから。


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Updated : 1995/5/18