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Title : The murderer is you.
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「守備範囲」

 このコーナーではおなじみになったであろう、『ザ・ワールド・イズ・マイン』の第10巻が出た。
 トシ&モンは秋田市内へ潜伏する。一方、大災害にみまわれた大館市の災害対策本部長である秋田県警本部長・須賀原譲二はマスコミを前に信念をぶちまける。

「会見の前にひと言申し上げたい。
 事件に関わるあなた方マスコミと職務上関わる我々警察 そして、事件の成り行きを見つめる市民の皆さんも含めて、自覚せねばならないことがあります。
 不幸にも被害者となる人間、その身内、その友人を除く我々は…所詮 痛みのない外野の人間でしかありえない。
 彼らは人間である。
 彼らトシモンはただの人間であり、事件の加害者だ。
 加害者は裁かれ罰を受ける。
 そこに物語の介在を望むのは外野たる人間の奢りである。
 不安を煽り 興味を煽り トシモンを何に仕立て上げるのか。
 稀代の殺人鬼、思想なきテロリスト、予言者、鬼神、怪物を操る怪物。
 より大きな何かに祭り上げる者を私は断罪する。

 トシモンと共に人を殺しているのは血に飢えたあなただ。」

しかし、「奢り」(=贅沢)じゃなくて、「驕り」(=傲慢)じゃないかな。

 Contemporary File(2000/05/06)でも触れたが、今年のGWのニュースは西鉄高速バスジャック事件で持ちきりだった。直前に起こった愛知県での主婦殺人事件と同じく容疑者が17歳の高校生であったこと、最終的にSATが突入して事件を解決したことなどから、話題になっている。

 いつのまに調べたのやら、容疑者の少年の生い立ち、学校での評判、近所の評判などを延々と報道している。
 ちょっと待ってほしい。本当に、視聴者は、いや、もっと具体的に言えば、あなたはそんなことが知りたいのか?
 容疑者(衆人監視の中だったので犯行の否定のしようがないのだが、この言い方で通しておく)がいかにして犯行に及んだのか。どうしてそのような少年に育ってしまったのか。それを知ったところで、例えば次の同様の犯罪を防げるのか? 仮に彼に対して行われた教育・家族の接し方でない教育方法・接し方をすれば、殺人を犯さない17歳が出来あがるのか?
 そんな議論は、所詮、外野のヤジに過ぎないんじゃないのか?
 結局、直接の関係者の気持ちを土足で踏みにじって見世物にしてるだけじゃないのか?

 どうしても殺人者の成長過程を知りたかったら、自分が人を殺してみればいいじゃないか。それがイヤなら自分の子供に殺人をさせてみればいいじゃないか。そうすれば加害者の身内の気持ちもよくわかるだろう。
 被害者の家族の気持ちをどうしても知りたかったら、身内を殺されてみたらいいじゃないか。
 通常の精神の持ち主なら、そんなことってイヤなはずだ。本気では知りたくない−知る羽目にはなりたくない−はずだ。「所詮 痛みのない外野の人間」だから平気でいられるんだ。


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Updated : 2000/05/07