月刊ＢＡＲＴ（集英社）の連載・『日本国初代大統領　桜木健一郎』が単行本化されてたので早速買って読んだ。なかなか知的刺激があって面白いので、政治に興味をある方は一読を。まあ、ただし、原作が日高義樹氏なので、そのアメリカ度ぷんぷんの感覚がヤな人にとってはヤな作品かも知れないけど。

　２１世紀初頭に日本で初めての首相公選制が実施され、それで選出された桜木健一郎が、様々な事態に直面していくという仕立ての近未来シミュレーション、といえば要約したことになるんだろうか。

　桜木が高校生に語る。

みんな自分のために苦しみ　そして人を傷つけている。
全て個人主義と言う名を借りたエゴイズムの残骸だ。
自分の幸せだけを追い続けたって　幸せなんて近づいてはこない。
だが他人のために生きようとした途端、味わえる幸せは山ほど増えるんだ。

　この発想は、いわゆる利他主義とも自己犠牲とも違うような気がする。
　他人を出しぬき、先手争いばかりを繰り返していては、全員が消耗して最終的には誰のためにもならない…ということもあるが、そういうのともちょっと違う。

　人間は、さほど完璧にはできていない。自己完結して生きていける人間など、おそらくほとんどいない。その相互補完の大きな網の中にいることを自覚したとき、新たな幸福感が得られるのではないか？