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『風の谷のナウシカ』(宮崎 駿;徳間書店)の最終局面で墓所に到着したナウシカは、先人が残した救済計画を否定し、その秘密が保存されている墓所を破壊する。そしてその時に、こう叫ぶ。
生きることは変わることだ
王蟲も粘菌も草木も人間も変わっていくだろう
腐界も共に生きるだろう
だがお前は変われない
組み込まれた予定があるだけだ
死を否定しているから…
確かに世界は矛盾と不条理に満ちているけれども、この世界の中でのみ、私たち人間の存在も、生死もある。
もし、「世界を救済する」と主張するのなら、美しい世界を構築して、そこに入ることがかなう人達を育成するのではなく、今、現実にあるこの世界の中で、自分が愛する者たちや自分を愛する者たちだけでなく、自分が愛せない者たちも自分を愛さない者たちも、一切合財救わねばならないのではないだろうか。
ナウシカは命あるものへの希望を抱いているからこそ、墓所を破壊した。(…と私は解釈している。)
いつのどこの誰とも知らない人達の計画にすべてを任せて、その成就を待つという行為が「希望」だというのなら、確かに捨てたことにはなるが。「我々のみがこの世を救う」をいう発想は、実はこの発想を受け入れない人を圧殺していくのである。精密にくみ上げられ、実行に移された計画ほど、人を救わないものはない。
それでは「救済」とはなんだろうか?
誰も救わない。誰も救われない。そもそも救済などありえない。
ただ明日へと生き続ける努力の連鎖があるだけだ、と私は思う。
それが連綿と続いた結果として永遠に至ることもあるかもしれないが。
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Updated : 2000/12/04
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