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Title : Scrape them up!
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Contemporary Files #20070515
「人材は育てるな。掻っ攫って来い。」という声
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高校野球の特待制度問題

 えー、最近騒がれている高校野球の特待制度問題なんだけど、一向に、何が問題なのかさっぱりとわからない。まあ、でも無理やりまとめると、こういうことになるのかな。

  1. 学生野球たるもの、選手は野球するのにカネを受け取っちゃイカン(と高野連は言う)。
  2. でも調べてみたら受け取っている選手がオニのように出てきた。
  3. もし彼らを全部処分し、特待生制度を即時にやめさせると、就学できなくなる生徒が出そうになるなど、野球以外の問題に波及してしまう。
  4. もし彼らを全部処分し、出場停止なんかにすると間近の夏の高校野球に大きな影響を与えて、強豪校が出れなくなって、注目度が下がり、主催者として儲けが少なくなる。

 正直なところは4点目なんだろう。でも、そうは口が裂けても言わんだろうなぁ。
 それから2点め。対象者が多いから不問にするというのは、建前を貫きたい高野連としては決してとってはならない対策だ。少数の違反者なら出場停止とか平気でやるのに、大勢で原則を踏み躙れば対策を講じるなんてのは、教育的じゃないぞー。だからキミたちのロジックから言えば、根こそぎ処分しなきゃ駄目だよー>高野連。

 あのさぁ、高校野球の特定制度って何か法に触れているわけではないよねぇ。あ。ひょっとしたら、受け取ったお金の名目が奨学金じゃなく、何か課税の対象となるようなもので、それを申告してなかったら(本人が、ではなく親が)脱税に問われるのかも知れないけど。まあ、野球以外のスポーツでは普通に特待生制度を導入して機能しているのだから、たぶん大丈夫なんだろう。本当は違っていて、高校のスポーツ界は違法状態が蔓延してたりしてたらコワいけど。要するに日本学生野球憲章の第13条「選手又は部員は、いかなる名義によるものであっても、他から選手又は部員であることを理由として支給され又は貸与されるものと認められる学費、生活費その他の金品を受けることができない。」に抵触するというだけ、でしょ。
 高野連からしてみたらこれは「憲章違反だ!」ということで問題なのだろうねぇ。じゃあ、過去に遡って片っ端から調べ上げて違反者を摘発し、徹底的に処分すればいいじゃないか。他のスポーツで認められている特待生制度が野球には適用されないと言い切るのであれば、断固として違反者を処罰しろみたらどうなの? >高野連。
 その処分をして強豪校が弱体化したところで、「学生野球の本義」とやらが守れていいんじゃないの? ひょっとしたら次の夏の甲子園では、これまでなかなか脚光を浴びてこなかった地方の(主に公立の)高校が勝ち上がってきて、新たなヒーローが生まれるかも知れないし。全国から野球留学みたいな感じで選手をかき集めてきて作られたチームより、よっぽど地元の代表っぽくてよいぞ。

 一昔前に、私の住む奈良県の代表であった天理高校が甲子園(夏だったかな)で優勝したときのこと。そのチームのレギュラークラスには誰一人として県内の中学出身者がいなかったから、あくまで天理高校が優勝したのであって、私は奈良県の代表だとは認めてなかったっす。これを見ていた父は「天理も奈良県の高校やないか」と言い、妙なところで親子喧嘩になった。

 でもね、13条をよく読んでみると、違反したら…ん、、、? あれ? 日本学生野球憲章の条文だけからは、13条に抵触したからと言って処分できんのではないかいな。第20条に「日本学生野球協会は、部長、監督、コーチ、選手又は部員に学生野球の本義に違背し、又は違背するおそれのある行為があると認めるときは、審査室の議を経て、その部長、監督、コーチ、選手又は部員に対しては、警告、謹慎又は出場禁止の処置をし、その者の所属する野球部に対しては、警告、謹慎、出場禁止又は除名の処置をすることができる。」とあるんだけど、あくまで「学生野球の本義に違背し、又は違背するおそれのある行為がある」ときであって、別に13条に違反したことをもって処分するとは書いてない。というわけで抜け道が1つ。高野連が各高校の行為を「学生野球の本義に違背し、又は違背するおそれのある行為」と見なさないでおくという方法。もし高野連がこの対策をとったら、事態はいかなる憲章の修正や妥協も行わずに収拾されるかも知れないが、「問題ではなかった」ということになるゾ。キャハハ。(^O^)

高校側の対策案(猛爆;

 さて。こんな高野連に振舞わされたくないとお思いの高校経営者の方々。起死回生の奇策があるよ。
 強豪校が何校か結託して今の高野連を脱退し、別の、例えば新日本高等学校野球連盟(略称は「新日本高野連」なんてはどうだ)を結成し、それで大会を行う。別に今の高野連は、高校が必ず加盟しなければならないものではないんだから。単に今の甲子園に出たいのなら加盟しなきゃならないというだけのことで、別の連盟を作ってそれで大会をやることに制約はない。メジャーリーグをスポンサーにでもして、大々的に実施すればいい。そしたら他の学校もなだれ込んでくるよ。別に現高野連加盟の全校がこちらに移行する必要はない。他に全日本高等学校野球連盟(もちろん略称は「全日本高野連」)なんてのもあっていい。たまには新日本対全日本で対抗戦やってみたり。で、新団体が乱立したら、学校の引き抜きが始まって、遺恨が発生、最終決着マッチなんてものできたりして。まあ、9割9分は冗談として、いろんなバリエーションがあったほうが野球界が活性化するんじゃないかなぁ。

本当の問題は特待生制度にあるのではない

…と思うのだけれども。1つの国におけるスポーツの人材育成システムという観点からすると、高野連が「高校生らしさ」を振りかざして、その中核を担う世代のところで妙な縛りをかけているように思う。必ずしもサッカー界でとられているような形態が正しいとは限らないが、強いチームが、または強い選手が、より活躍できる舞台を求めていろんなところを行き来できるようになることと、才能はあるけど経済的な余裕がなくて競技の継続を断念させるよりも、そういう場合は支援をするほうがよっぽど本人のためでもあり、そのスポーツ界全体にもいいような気がする。要するに高野連は高校野球が爽やかで美談にあふれ、ニュースのネタになって新聞さえ売れればいい、ということしか頭にないんだろうねぇ。野球は競技人口が多い(と思われる)わりに、全世代を通じた選手育成システムにいくつも断絶があるように思える。特に学生野球のところで。まあ、野球小僧でもない私は野球自体が廃れても一向に構わないが、日本の大きなスポーツ文化の1つが自滅するのを見るのは忍びない気がする。というわけで、心ある野球人よ、なんとかしたらどうなんだ。高野連をはずした人材育成システムを構築してみてよ。

「人材は育てるな。掻っ攫って来い。」

 以前も書いたけど、優秀な人材を確保するためには大きく2つの方法がある。1つは外部から引き抜くこと、もう1つは内部で育てることである。けど、そもそも人口が減っていくことと、そんなに時間も費用もかけられないという事情から、結局前者の「掻っ攫ってくる」という方法が主流になっていくような感じがしている。かく言う私のいる職場も事実上そうだ。いまいる所は基本的に中途採用ばかりだ。私だって入社したその日から提案書を書き、次の日から実作業に入っていた。そもそも今の職場に人材育成制度がない。自分が意識して新しい知見を吸収しなければいつか「枯れて」しまう。なんかね。スポーツの世界も例外じゃなくなってきてる。時間をかけて才能を育てる気風がなくなってきてる。これのほうが長期的に問題になるよな。。。。

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Updated : 2007/05/15