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Title : One needs others
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Contemporary Files #20070427
何かをするには別の何かが必要だということ。
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バイオマスエタノールガソリンの販売開始

 えー、首都圏ではバイオエタノールを混ぜたガソリンの試験販売が始まったそうですが。関西在住の筆者としては、「へぇー、そうですかぁ」というしかないんですけど。
 「バイオエタノール」と聞くと一般ピープルは「バイオ」で作った「エタノール」と思っちゃうんじゃないのかなぁ。「バイオ(マス)」から作った「エタノール」なのに。まあ、それはともかく「バイオエタノールガソリン」だとエコだという触れ込みで売られてますけど、何がどう「エコ」かって理解してます? 「バイオ」だからエコっぽい、なんてことはなくてね。
 バイオだろうがなんだろうが要するに炭水化物なんだから、燃やせば二酸化炭素が出てしまう。だから現在の二酸化炭素排出量の削減には寄与しない。けれども植物起源だということは、光合成をして二酸化炭素を吸収して酸素を吐き出していた時期がある。だからトータルとして(長〜〜〜〜〜〜い時間にわたって考えたときの)二酸化炭素排出量には影響がないと考えることにしているらしい。この考え方をカーボンニュートラル(Carbon Neutral)と言う。これで納得した? 納得した人はそれでいいです。はい。ここから先は、納得してない人と遊ぶから。

 上の説明がそもそも何を言っているのかわからないという人はおいといて。何か引っかかった人もいるよねぇ。
 そんな長い時間で考えるんだったら、例えば石炭だって元々は植物だったわけで、石炭燃やしてもニュートラルなのかよー、とかツッコミたくなるよねぇ。でも石炭はニュートラルだと考えられていない。長い間地層の中に閉じ込められて圧縮されて変質して、表層近辺の二酸化炭素ではない炭素まで入ってしまってるから、ということらしい。ふーん。そう。でも、その理屈ってなんだかなぁ、と思う。だって地球以外から炭素を調達するのは事実上不可能なわけで、地球ができた時点…まあ、地表面が安定して百歩譲って生物が棲めるようになった時点ではもはや新たな元素は地球上では生成しない時点で考えたら、その時点での地球上に存在する炭素の量って確定しているはずなのね。それがいつ、どういう形で大気中に出てくるかというだけの問題になる。このタイムスパンで見る限りあらゆる炭水化物はカーボンニュートラルになるよん。長い時間軸で考えると主張し、かつ地球発生以来という時間で見ないなら、その途中で区切る合理的な説明がほしいなぁ。

 次に千歩譲って、バイオエタノールがカーボンニュートラルだとしましょう。いいですか、これはバイオエタノール自体がカーボンニュートラルだということしか言っていないということに注意してもらって。
 バイオエタノールの原料になるバイオマスってどんなものかというと木材の廃材だったり、製紙パルプのカスだったり、トウモロコシ由来のでんぷんだったりする。要するに植物の切れ端ってことね。でも、それって大量にどこかに扱いやすいようになってるわけじゃない。よくバイオマスの弱点として低カロリー・分散性・高含水比ということが指摘される。つまりね、バイオマス由来のエネルギー資源をエネルギーとして使えるようにするには、それらを大量にかき集めてきて、水分を飛ばして精製しないとだめってこと。それってかなりエネルギーを食う作業ですぜ、旦那。本当にエコなのか(環境負荷が低減するのか)はきちんと計算してみないとわからないけど、手放しで喜べるほどではないと思うのだけれど。
 エコ! エコ! って叫ぶ人たちって、自分の行動が本当にエコなのかをきちんと考えてほしいな。目の前の何かをするには、それを可能にするために多くの準備が必要で、そのためにどれくらいのエネルギーが投入されるか冷静に検討してからでないと、単なる自己満足だぞ。

(ちょっと長い注釈)

 あのですね。そもそもの話なんですが。

 ここ200〜300年の間に大気中の二酸化炭素・メタン・一酸化二窒素などの濃度がそれ以前の数百年に比べて急激に増加ている。←これは科学的な事実。(参考:気象庁 温室効果ガスに関する基礎知識
 次にここ100年くらいの平均気温が上昇傾向にある。←これも科学的な事実。(参考:気象庁 世界の年平均地上気温の平年差の経年変化
 えー、統計学を習った人ならわかると思うけど、2つの変数の間に相関が見られるからと言って、その両者の間に因果関係があるとは限らないんですな。だから上の2つの事象だけをもって「二酸化炭素の増加が地球温暖化をもたらしている」とは断言できん。もちろんそうなのかも知れないけれど、確定した事実でもない、ということ。というのは、そもそも現在は氷河期と氷河期の間の期間(間氷期)なんだからしばらく気温が上昇するのが地球にとって当たり前の現象なのかも知れないという考え方もあるわけで。結局、いろんなことがわかってない。「地球温暖化←二酸化炭素犯人説」を唱える人もそうでない人も、依拠としている事実(いや、人によっては事実によらず信念によっているかもね)が本当にヤバいのかヤバくないのか、相互に相手をノックダウンできるほどの証拠を出せてないのだな。
 そのへんの事情をよくわかっている人は、地球温暖化の話と二酸化炭素濃度の上昇の話を決して混同してない。TVとかでもよーく見てるとわかるよ。きちんと事実を確認してる人なのかどうか。

ついでに核兵器の保有も考えてみよう

 ついでに、だけれど。
 最近、北朝鮮情勢の緊迫化もあって、日本も核武装しろだのっていう議論が沸き起こっておる。長い間原発を推進してるのは世界でフランスと日本くらいなものだっかたら、日本には世界的に見ればかなりの量の核物質がある。廃棄物だけれども。再処理すればプルトニウムも取れるし。それをかき集めたら原料には困らないだろうねぇ。それに景気が思わしくないとは言え、世界的にみればお金も技術も人もあるから、その気になれば日本が核保有国になるのは原理的にはさほど難しいことじゃないだろうね。
 でも、じゃあ、持てばいいのか。もちろん日本は最初の被爆国であり、これが最後であってほしいという心情から反対するのはありだし、私個人としてはそう思っている。けど、「持ちたい!」という人の説得にはその手の心情では適わない。何しろ「それでも持ちたい!」のだから。
 じゃあ、百万歩譲って核兵器を持つとしよう。じゃあ、その運搬手段は何だろう。運搬手段って何だ、って? そんなものいらない? いやいや。兵器なんだから一応使うために存在してるんだよね? 最終的に使われないにしても、使う前提で準備されるべきだよね? もし完全に使われないとわかったらそんなものは抑止力にも何にも使えない。逆に「使えるもんなら使ってみろ」と言われるだけじゃなく、保管コストが無駄にかさむだけだ。
 核弾頭だけあっても仕方なくて、それをミサイルに積んで打つのか、爆撃機に積んで落とすのか、潜水艦から打つのか。(まあ、「第4の核」として携帯用なんてのもあるかも知れないがとりあえずまだ小説の世界だけの話としておく。)
 となると、核による抑止力を手に入れるためには、ミサイルか爆撃機か潜水艦を持たないとスジが通らない。ミサイル発射サイロをどこにもつかだけれど、その場所は有事には真っ先に攻撃対象になる。ならばそこを守るための警備(軍備)も増強しないといけない。爆撃機も、まあ、アメリカさんあたりから買えばいいのかも知れないけど、その爆撃機が置かれる飛行場は真っ先に攻撃対象になるよ。潜水艦にしても、原爆を積むならやはり長期間潜水できる原潜でなきゃ。…つまりね、核を持とうとし、それによる抑止力を確保したければ、それを守るための通常兵力の増強も必然的に要るのね。核だけ持ちゃいいってもんじゃないの。かなり軍事大国化しないと意味がない。するとアジアだけじゃなくてアメリカさんからも相手にされなくなるかも知れない。そもそも日本が「核持ちます!」と公式に宣言したら、北朝鮮がやられたように世界から制裁くらいますって。そういう影響まで考えなくっちゃ。

 ある1つのことを行うのにその実行に付随して必要となる準備や影響って、きちんと考えないとほんとにヤバくなるぞ。

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Updated : 2007/04/27