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Title : Power of Vote
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Contemporary Files #20031111
議席の力
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 衆議院選挙が終わりましたな。
 ちょっと意外だったのは、投票率がよくなかったことと、その割りに民主が議席数をかなり伸ばしたこと。まあ、前者については天気が悪かったと言うこともあるのだろうけど、いつもの選挙よりは注目度が高いかなと感じていたので、もっと投票率が高いと思ってた。そしてその結果として浮動票によって民主が議席を伸ばすと思っていたので、投票率の割りに議席をよくとったなぁ、ということ。
 細かい分析はしてないので正しくないかも知れないけど、全体の議席の増減だけを見てたら、これまで社民党や共産党に投票していた人たちのうち中道よりの人がこぞって民主に投票し、保守勢力(自民・保守新党)の中道よりの人も若干民主に投票した、という感じのようにみえる。
 自民はもくろんでいた単独過半数が取れなかったわけだし、民主ももくろんでいた200議席を取れなかったわけだし、結果的に「勝った」と言えるのは公明党だけじゃなかろうか。でも自民は早速、保守新党を吸収して無所属議員を3名ばかり公認しちゃって過半数確保しちゃったもんね。

 さて、以前「キャスティング・ヴォート」(Contemporary Files #19990621)で触れたシャープレイ・シュービック指数(Shapley-Shubik index;以下「SS指数」と略す)という値で今回の選挙の結果を覗いてみよう! 詳しくは『投票システムのゲーム分析』(武藤滋夫&小野理恵;日科技連)でも見てお勉強してほしいんだけど、そんな高い本買いたくないって人は「投票力指数を計算する」をみてちょーだい。うだうだ言わずに、そこのページからリンクでたどれる、指数計算のページを使ってちょっと検証してみるよ。

 まず、選挙終了時点では、結果は以下の通りだった。

政党自民民主公明共産社民保守新無所属の会その他
議席数(今回)23717734964112
議席数(前回)247137312018958

 この状態でSS指数を計算すると、過半数を確保するための指数は

政党自民民主公明共産社民保守新無所属の会その他
SS指数(今回)0.746600.029770.029770.029770.029770.029770.02970.02977

だったわけね。へへ。わかるよね? 自民党以外はどこもこのSS指数が一緒だったんだ。だから本当は保守新党はその議席数の少なさでもって(公明党の8分の1の議席で!)キャスティングヴォートを握れたはずなんだ。…が、何を考えたのか早々と自民に合流してしまった。あ〜あ、もったいない。議席数が少ないから影響力がないんじゃないんだってば。単独過半数政党がない状態では、その政党がどっちのグループに属すかで与野党が逆転しうる勢力がもっとも影響力を保持しやすいんだってば。保守新党はその役割を自らおりちゃった。で、自民は過半数を超えちゃった。だから、過半数確保を勝利と見なすSS指数は計算できない(しても意味ない)。かと言って議席の3分の2を超える組み合わせは自民&民主しかないのでこれも意味がない。あと、計算する意味があるのは、衆議院の委員会全部の委員長を全部抑えてもまだ各委員会で過半数を制することができる、「全体安定多数」で、確かこれは今 269 議席のはずだから(間違ってたらごめん)、それでちょこっと計算してみる。

政党自民民主公明共産社民無所属の会その他
議席数(修正後)244177349619
SS指数(今回)0.667400.161900.161900.000730.000730.000730.00073

ということで、ここで初めて公明党がキャスティングヴォートを握れる立場に来る。
 ひょっとしたら一番おいしいところを持っていけたかも知れない保守新党が自民党に吸収されたことによって、公明党の連立与党としての役割が高まる。

 ここから先は勝手な想像だけれども、公明党及びその支持者は「お前ら自民党と同じじゃねぇか」というくくられ方をすっごく嫌がると思う。そこで民主党を初めとする野党のとりうる戦術としては、その手の批判をぶつけると効果的だと思うし、そうやっていくだろう。

 逆に公明党としては、これを防ぐには与党の特権を利用すること、だろう。と言っても甘い汁をすするというのではなくて、野党の政策を(自分たちの方針に矛盾しない限り)貪欲に吸収し、実行してしまうことである。これは野党からみてとっても歯がゆい「攻撃」だろう。もちろん、最も効果的なのは、野党からケチを付けられないような政策を、野党に先んじて提出し実行すること、なんだけれども。

 んー。みんなあまり気づいてないのかも知れないけど、2大政党制になりつつある状況下で、第1党と第2党の勢力が拮抗してしまうと、全体の1割程度の勢力を持つ第3党がキャスティングヴォートを握りやすくなるんだな。もし今回の結果から自民がもう30議席少なくて、民主がもう30議席多かったら、自民・民主が綱引きをするという、とっても楽しい状況が生まれたわけだから。(自民&民主の連立政権という大ドンデン返しがない限り。)
 ってなわけで、世の中をなんとかしたいけど、自民の肩入れをしたくないって方は、民主党にもうちょっとがんばってもらうように支援するか、公明党に(支援しなくてもいいので)知恵をつけるか、というのが最短距離なのかも知れないですな、というのが今回のお話なのでありました。

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Updated : 2003/11/11