Location : Home > Humanisphere > Eyes Title : Never comes the Messiah. |
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さて、前回の続き。『海猿』の第2巻〜第3巻前半は、親子4人の乗ったプレジャーボートの救出の話である。
両親はすぐに発見されたが、幼い姉弟はなかなか見つからない。救助に出かけた仙崎は、その姉弟が、近所の子どもである、ほのかと武彦だと知る。ほのかは比較的短時間でテトラポッドに打ち上げられているところを発見され、救助される。しかし武彦はなかなか見つからない。必死の捜索が続けられ、ようやくプレジャーボートが見つかり、船底に武彦がいることを確認する。子どもの体力では長い時間持ちこたえることは出来ない。だんだん力尽きて行く。しかし現場に行き、武彦の声を聞いた仙崎は、潜水士の資格がないため、潜水して救助にあたることが出来ない。できるのは、ただ武彦を励ましつづけることだけだ。仙崎は武彦と一緒に歌を歌う。その間、仙崎は心の中で叫ぶ。
奇跡なんて…
起こらない…
たけちゃん…
だから…頑張れ!
そう、この世に生きる者は、奇跡を待っていてはならないんだ。
生きる者は生きるためのぎりぎりの努力をする。ぎりぎりの努力といくつかの条件がそろうことで結果が生まれる。そこには奇跡の介在する余地はない。後になってから、その事象を「奇跡だった」と呼ぶのは一向にかまわない。けれども、目の前の現実に対し、何かを決断して結果を出せねばならない時、たとえ祈ることしか方法がない時にさえ、奇跡を待っていてはならない。この世に生きる者はこの世以外の力を前提にしてはならない。
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Updated : 2000/10/30
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