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Title : A powerless man
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1人の無力な人間

 最近、『The World is mine』を読むために買い始めたヤングサンデーで連載中の『海猿』という作品にハマッっている。海上保安官−海難時に救援に駆けつける男たち−の話である。人の生死のぎりぎりの局面で、人間は何が出来るかを考えさせられる作品だ。

 第1巻は、中国船籍の密航船を救援する話である。
 とはいうものの、SOSが発せられて現場に駆けつけたときには、密航船であるなどとはわからない。正規の乗員名簿と救援した人数を確認した後、現場を去ろうとした時に、保安官・仙崎は、溶接された蓋の向こう側に人(密航者)がいることを発見してしまう。が、蓋は容易に開かない。中にいる密航者の1人は日本語を話せ、彼女の名前が美花(メイファ)であることを知る。
 船は沈みかけている。危険と判断した巡視船の船長は仙崎に撤収を命じる。火の手の上がる密航船の上空にヘリを飛ばし、ワイヤで仙崎を確保しようとした。が、仙崎は引き上げ用のベルトをはずし、ワイヤを切り離すことを要求する。仙崎は、そのワイヤを、2つに折れ、沈もうとする密航船の前部と、溶接された蓋をワイヤで結び付け、沈没時の反動で開けようとしたのだ。その作業の途中、仙崎は心の中で叫ぶ。

 オレは…… 神様じゃない……
 オレは…… 1人の…… 無力な…… 人間だ!!

 美花…! だからキミ達を見捨てない!!
 必ず 助ける!

 この世に生きる者は、奇跡を待っていてはならないと思う。
 ひょっとしたら、神というものが存在し、奇跡というものがあるのかも知れない。が、その存在を前提にすることは、私の言う「この世に生きる者」の選択するところではない。

 無力な存在だから、ぎりぎりの努力をする。
 無力な人間だから、誰をも見捨てない。


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Updated : 2000/10/25