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Title : Social Discontinuity
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Contemporary Files #20070114
上がったり、下がったりできるということ
/ BBSへGo! /

大リーグに選手が流れること自体が悪いのではなくて

…と思うのだけれど、なんでこう、「スターがどんどん大リーグに行って、プロ野球の人気が下がる」と騒ぐのかねぇ。それなりのレベルの選手が、それなりのレベルの活躍場所を求めて移動するのを引き止めるほうが才能の無駄使いってもんでしょーが。もしこれをプロ野球関係者が認めるのなら、上のほうのレベルの層が大リーグに行っちゃったときにそれを埋めるだけの才能がプロ野球にはない、要するに選手の層が絶望的に薄いということを認めることになるのだよ。Jリーグ発足以降、いくらサッカー人気があがったとはいえ、競技人口そのものはまだ野球のほうが多いんじゃないのか?

 スポーツの競技人口に関する信頼に足る統計資料ってあるのかしらん。。。

 とすれば、それをうまく吸い上げる機能が野球界全体にないってことだ。

 よくよく考えると、Jリーグはその点、うまくできていると思う。
 Jリーグの Div 1 を頂上として、Div 2 、JFL、地域リーグ、都道府県リーグと、階層ができあがっている。特にプロチームは参加のユースチームなども持っていて、若い才能を発掘(占有かも知れないが)している。この仕組みだと、チーム全体が強くなった場合にはそのチームがリーグを上っていくこともできるし、ある傑出した才能の選手がいれば、上のリーグのチームに属することで(正確には上から引き抜くのだろうけど)上のレベルでの活躍が可能である。
 けれど、今の野球界では、甲子園の強豪チームか6大学野球あたりか実業団あたりのチームで活躍できないと、ほとんどプロになれない。仮に、今プロではないけど傑出したアマの選手が日本のどこかにいたとしても、その選手を(ドラフトだのという手続き以外で)プロにするなんてことはできない(またはかなり難しい)のではないか?
 それだけ選手の(特に下から上への)流動性が低いから、「大リーグ云々」なんてことが問題になるんじゃなかろうか。

White Collar Exemption

 昨年末に急に話題になってきたホワイトカラー・エグゼンプション。
 これって要するに一定の条件で、一定以上の残業代を払わないということを認めるってことだわな。もしこれが適用されると、雇う側とすれば人件費の上限が見えて管理しやすくなるし、雇われる側としてもある額以上には残業代がでないのだからそれ以上は働かないようにして労働時間を削減し、自由な時間を増加させることができる…ということのはずだけど。
 が、ねぇ。そんなことができるのは、自分の職務の範囲と量が確定していて、その時間配分を自分で管理できるような職種でないと機能しませんわ。

 例えば、システム開発会社ならよくあることだろうけど、ある会社があるシステム開発を請け負ってて、ある期限までに納品しなければならないとする。で、会社としては開発チームを作って、各開発者に開発単位を割り振る。そうすると、能力差というのは存在していて、同じような処理で同じような規模のソフトでさらっと短時間で書いてしまう人もいれば、長時間かかる人もいる。すると全体としてシステムはできあがらない。でも納期は迫る。となると、デキル人にデキナイ人の分まで負担が回ってくる。デキナイ人は単にトロいから残業するのであるが、デキル人は仕事量が多くて残業する。これ、同等に残業代の上限を決めてカットしたらどうなるかっていうと、デキル人を搾取することになるんだわな。これじゃデキル人はヤル気なくしますですよ。
 もしホワイトカラー・エグゼンプションを導入するのなら、管掌業務をきっちり個人単位で分割して、互いの領域を侵さないようにしない限り、単に搾取を合法化する制度になってしまいますぜ。

 なんかねぇ。
 サラリーマンのうち、めっちゃ年収の高い層は年俸制にされてしまい、低い層は正社員にもなれないで派遣とかパートとか、外部から必要時に調達するようにして働かせて、雇う側からすれば人件費を定額以下に抑えるようにする方策のなかで、手付かずだった、(権限的にも収入的にも)管理者になる前の層をがっちり把握して締め上げようというのが、ホワイトカラー・エグゼンプション制度のような気がする。そしてこの上・中・下の収入層の間で、昔は勤続年数を長く勤め上げていればそれなりに上に上がれる可能性があったし、実際に上がったのだろうけど、最近はその間に断絶ができ、乗り越えが困難になってきたように思う。それはプロ野球が衰退しつつあるのと並行した現象のように思うのであった。


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Updated : 2007/01/14