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Title : Beat the NEET.(2)
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Contemporary Files #20050221
余裕の無くなった社会
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 少し前に「NEETは擁護するな」(Contemporary Files #20041219)というのを書いた。そのときから、ずっともやもやしていた。何かまだ書き足りないのだ。
 「書き足りない」とは言っても、結論が変わるわけではない。題名の通り、今でも「NEETは擁護するな」と思っている。NEETが生まれてくる背景だとか、その実状だとかに対する認識ではなく、「NEETを何とかしてあげよう」なんていう発想というか立場と言うか、それに対する嫌悪感に近い感情が沸き起こってたというのが正直なところだろうか。NEETを擁護してやれるだけの余裕はもうすぐ日本社会には無くなるんじゃないか、という感触が最近強くなってきてる、ということだ。

 先週、私の部署でミーティングがあって、今年度の収支見込が部長から説明があった。私の属する会社は部署ごとの独立採算制を採っていて、部署が黒字で会社も黒字であればその黒字幅に応じて、来年度の年俸の伸び率に反映される。今年度もなんとか黒字で、来年度は少しかも知れないが年俸が上昇することは保証されたようなものだ。
 他部署の状況は私のいる部署よりも高い利益率を上げているところがいくつもあって「おおー、すげぇー」というのが半分と、「それって、クライアントから高くまきあげているか、社員を搾取してるかのどっちかちゃうんかい!」というのが半分という感想。しかしよくよく聞いてみると、めちゃくちゃ高い利益率を上げているところの正社員が売り上げの割りに異常に少なかったりするわけだ。残りはバイトや派遣社員で戦力を補っている。そうすると人件費が抑えられ、関係する諸経費も抑えられるし、もし思ったほど売り上げがなかったらバイトや派遣社員の数を絞って出費を減らせばいいからだ。
 これは別に会社批判しようっていうのではなくて、たぶん、今、どこの会社もやっていることで、企業の利益追求行動としては間違ってないと思う。固定費を変動費化することで、利益を確保するっていうことだから。
 それを「正社員として雇わないのはけしからん」というのは、正社員として雇われるだけのスキルを持たない側の遠吠えとも聞こえる。「この人がいれば格段にウチの業務効率が上がる」とか「この人がいなけりゃこの仕事はこなせない!」という人なら企業は喜んで採用するはずだ。とりあえず正社員である立場でこんなこと言うと、「それは強者の発言だ」と言われそうだけど、年俸制に置かれてるとそうも言ってられないんだ。稼ぎに見合う働きをしなければ年俸は下がっていく。どんなに扶養家族がいようとも、ね。それで食っていけないというような水準にまでなったらそれに甘んじるか、辞めるしかない。常に自分をブラッシュアップし続けて、それなりの仕事を確保できないと事実上のクビとなる。そんな安泰した立場でもないんだ。

 あのね。NEETがNEETになったのが「働きたくないから」なのか「働きたいけどそのための行動が取れないから」なのかはNEETでない私には分からない。でも、NEETってことはね、いかなる収入も、収入を得るための努力もしてないっていう事実にはかわりはない。じゃあそういう存在がエネルギーも食糧も消費しないのかっていうとそんなはずはない。その意識がどうあれ、誰かに寄生して生きているという事実は無視できない。寄生生物はその寄生元(ホスト)の生物が健康でなければ行き続けることはできない。NEETは「パラサイト・シングル」よりもより本質的な意味で「パラサイト」なわけだ。パラサイトがパラサイトでいられるのは、ホストが元気でいることが大前提だということを忘れてはいけない。
 パラサイトとしてのNEETの存在を認め、その対処策を講じるなら、その大前提として、そのパラサイトを食わせていけるだけの余裕がホスト側になければならない。そっちの対処のほうが真っ先に必要なのではないか?

 日本には、もう、そんなに齧れるスネはない。


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Updated : 2005/02/21