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Title : Power of Vote
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Contemporary Files #20031030
マニフェスト
/ BBSへGo! /

 先日、通勤の際に、最寄り駅の駅頭で民主党の候補が街頭演説をしてて、いわゆる「マニフェスト」を配っていた。
 さて、どうなんだろうねぇ。私みたいな知りたがりの物好きは、その手のものは手にして隅から隅まで読もうとするけれど、圧倒的大多数のごくごくフツーの有権者ってのは、そのてのものを読んでみようと思うもんなんだろうか。実際、駅頭で配ってた時には、その他の英会話学校のビラ配りや消費者金融のティッシュ配りと同様、無視されてる(受け取ってもらえてない)割合が高そうだったけれども。ま、このページを読んでるような奇特な人はたぶん手にして読んでるんだろうな、とは思うけど。

 ところで、その「マニフェスト」だけれども、全政党の分を入手するって結構面倒なんだよなぁ。公職選挙法における「図画の頒布」の制限で

  1. 政党の選挙事務所内、政党演説会もしくは政党等演説会の会場内または街頭演説の場所による頒布
  2. 選挙候補者の選挙事務所内、個人演説会の会場内または街頭演説の場所における頒布

でしかできんのだよ。ということは、政党もしくは候補者の事務所へ足を運ぶか、その人たちが何かをしゃべってる会場に足を運ぶかして、そこで配ってるのを取って来るしかない。普段普通に働いている身には、それは結構つらい。
 が、まあ、愚痴は愚痴として、とりあえず各政党の Web Page から見ることのできるマニフェスト(みたいなもの)は読むことにしている。

 いま、「マニフェスト(みたいなもの)」という表現をしたけどね。今回の選挙、「マニフェスト選挙」だの「政権選択選挙」などと言われてるんだけど、よくよく見てみると、政権構想としてマニフェストを公表しているのって、民主党しかないんじゃないか? 公明党もマニフェストを公表しているけれども、それは政策綱領だ。その他の政党は選挙のための「重点政策」だったり、「約束」だったりする。んじゃ、それってほとんどこれまでの「選挙公約」と大差ないような気がするのだ。

 …ってなことを口走るのは、「マニフェスト」を読み比べようとして、あることに気がついたからだ。
 「マニフェスト」を「(私たちの政党が政権をとったらこういう政策を実行しますという)政権構想」と見なすのであれば、「マニフェスト」を公表できるのは、単独で政権を取れるだけの議席をとりうる政党だけではないのかと思ったからだ。単独では政権が取れない政党が「私たちが政権をとったら」なんてことを言うのは、ええっと、そうだな、普段何の運動もトレーニングもしていない私が、「今度のオリンピックで金メダルを取ったら、みなさんにそのメダルを触らせてあげます!」って言うようなものじゃないかな。政権構想としてマニフェストを出すなら、せめて過半数の選挙区に候補者を立てて、可能性だけでも確保してなきゃ、その政権構想を実行する気すらなく、「どうせ政権とることないから」ってできもせんことを安心して公約に掲げてるよと、表明することになる。(政策を実現できなかったのは政権を取れなかったせいにすればよいから。)
 だからだな、過半数の選挙区で候補者を立てられないにもかかわらず、政権構想としてマニフェストを公表したい政党は、どのような連立構想のもとに政権をとるのかという枠組みを、マニフェストの大前提として示すべきではないのか。そうでないと、「政権」を選べない。

 …って思ったんだけど、民主党以外は「政権構想」としてのマニフェストを出してない。ずるいのかやり方がうまいのかよくわからんがね。

 1万歩くらいゆずって、各政党の選挙公約全般を「マニフェスト」と呼ぶことにする。マニフェストの本家本元のイギリスでは、判断基準として SMART というのがあるらしい。

  1. 具体性(Specific):法律の制定や改正など具体的な政策が盛り込まれているか。
  2. 測定可能性(Measurable):数値目標など、実現したか否かが判断できる基準が明示されているか。
  3. 実現可能性(Achievable):手段・コスト・財源などが明示されており、実現性は高いか。
  4. 適切性(Relevant):政策間の整合性、優先順位などが明確か。そもそも問題の核心をついた政策であるか。
  5. 期限明示(Timed):実施時期、期限などが明示されているか。

というものだが、この観点から言うと、はっきりいってどこの政党の「マニフェスト」もすっごくあやしい。私にもっともっと暇があったらきちんと確認してみたいと思うのだが、各政党の「マニフェスト」内部での政策の整合性が取れてないような気がする。最も単純なのは、「○○を削減し、その金額を△△に利用する」とあちこちにあるのを足し合わせたら計算あうのかどうかってこと。1つの政策をとることによって他の政策に影響を与えないのか、そのへんの関連に関する検討のあとが読み取れないこと。ま、そもそも、「マニフェスト」に挙げられる政策のバックボーンとなるべき現状分析とあるべき姿ってのがどこの政党のを見ててもいまいちピンと理解できないのではあるけれど。

 公共投資を絞るのもいいけどさ、公費節約というか、「国会議員の数を減らします」とか「国会議員の歳費を半額にします」とか、まず政治家が痛みを感じる政策(?)で費用を捻出して、それで福祉に回すとか、そういうことを言ってる政党ってないよなぁ。(見落としていたらスンマセン。)

 と思ってよく見てみたら、民主党が「衆議院の比例区の定数を80減らす」って言ってた。というわけで陳謝します。
 しかし、現在の180が100になって各党派の議員数がそれぞれ9分の5になるかというとそうではなくて、票の配分方式を変更しないんだったら、たぶん、各選挙区で第3党以下のところは軒並み全滅ってことになりそうな気がする。理由はまた真面目に計算して報告するけど。んじゃ。(この部分:2003/11/05 追加)

 ま、まだ「マニフェスト」掲げて選挙するの初めてだから、こんなもんなんかも知れないけど、もすこしまともなのが出てくるようになって、特に測定可能性(Measurable)が明示された政策をマスコミなりシンクタンクなり大学なり、どっかの研究機関なりが定期的にチェックをして発表したら、ちょっとは政党も政策を実現しようとするんじゃないかな。

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Updated : 2003/10/30