Location : Home > Contemporary Files > 2003 Title : Information Security |
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先週は個人情報保護法案が衆議院で可決して、まるで治安維持法が通ったような報道がなされていたりする。んー。なんだかなぁ。たぶんね、問題がごっちゃになってるような気がするのね。純粋な意味での「個人情報保護」と「報道の自由」とを1つの法律でなんとかしようとしている法律の技術的な問題と、その法案に対して報道の自由の侵害という面をやたら強調しすぎるとこと。
ちょいと前に『ECで取り扱われる個人情報に関する調査報告書』というのを読む機会(と言うか読まざるを得ない状況)があってね。まとめてみたんだよ。
〔各国の個人情報関連保護法制度〕
国・地域 | 法律・規定 | ポイント |
OECD | プライバシー保護と個人データの国際流通についてのガイドラインに関するOECD理事会勧告(1980) |
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EU | 個人データ処理に係る個人の保護および当該データの自由な移転に関する欧州議会および理事会の指令(1995) |
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イギリス | データ保護法(1984,1988年) |
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フランス | 情報処理・データと自由に関する法律(1978) |
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ドイツ | 連邦データ保護法(1977,1990) |
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米国 | (包括的なプライバシー保護法案はない)
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韓国 | 公共機関における個人情報保護に関する法律(1994) |
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一般名詞としての個人情報保護法ってのは、やっぱり必要だと思う。それでなくとも自分に関する情報が勝手に流通して、「あんた、どこから私の情報を知ったの?」って言うところから電話とかがかかってきたりするのは気味悪いだけじゃなくて、危険であったりする。上の表を眺めてもらったらわかるけど、基本は、「本人の情報は本人の意図以外に利用されてはならない」ってことだと思うのだ。だから「『個人情報保護法』なんて要らない!」っていうのは、結構、変なスローガンだと思うわけ。だって、それって、「個人情報は保護しなくていい」→「私の情報は好き勝手に流通させていいよ」って叫んでいるように見えてしまうから。だから個人情報保護法に反対する立場には、なんらかの限定がつくんじゃないのかなぁ。報道の自由が気になって仕方がないのなら、包括的な個人情報保護法にしないで、別途、報道に関する個人情報の侵害に関する法律を作ればいいじゃない。
ああ、今、「法律を作ればいいじゃない」と書いてしまったよね。たぶん、ここんとこで色々と立場が分かれると思うんだ。「法律を制定すること」≒「規制すること」としか理解できなくて「お前は国による規制が強まればいいと思ってるんだな!」と決めつけてくる人もいるんだけど、そういうことを言いたいんじゃない。私は、社会が機能していくためのルールは明文化されていたほうが望ましいと考えているってこと。ほら、こういうのって業界による自主規制で充分っていう立場もあるんだけどね、それこそ、何でも反対したがる人が最も嫌う「権力」側の思うツボなんじゃないのかなぁ。
あのね、人に自分の言うことをきかせる力のことを「権力」って言うんだけど、それには4つの源泉というか方法があるって、ちょっと前に話題になった『CODE』(ローレンス・レッシグ;翔泳社)に書いてある。1つめは法。2つめは法じゃないけど規範のようなもの。3つめは市場。経済的な原理による行動。そして4つめが「アーキテクチャ」による支配。クセ者は4つめだと思うのね。別にどこにも明示的に決められたわけでもないし、強圧的に命令されているわけでもないのに、みんながそれとなく、ある行動原理に従うように仕向けられているという、「環境」による支配。「30分以上座席に座っていてはいけない」と明文化されているのと、座席の座り心地を敢えて悪くして30分以内に出たくなるようになってるのと、どっちがイヤかっていうレベルなのかも知れないけどね。私は、それでも、明文化されているほうがよりマシだと思う。人々の意識に上ることで、議論したり改善したりする余地が生まれるから。でもアーキテクチャによる支配は違う。それを布いた者(強いた者、ではない)が巧妙であればあるほど、人々はその支配に気づかない。
いいかい、法律になるから「廃案だ!」とか反対できるんだよ。誰もアーキテクチャに対して文句言えないし、言ったとしても、多くの人は、「こいつ、一体、何に怒ってんだ?」という反応を示すことになるだろう。
明文化されないアーキテクチャに多くの人が従ってしまったとき、それに従わない少数の人々は、理由がよくわからないままに異端視されてしまうだろう。それはそれで住みにくい世の中だと思うのだが。
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Updated : 2003/05/13
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