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Title : Information Security
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Contemporary Files #20030505
「最終的解決」
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 最近、白づくめの集団が話題になっている。どうやらかなり以前から「キャラバン」をしているようなので、「最近」話題になっただけ、という気もするが。話題のパナウェーブ研究会の主張は今ひとつわからないけれど、彼らに対する態度はどうあるべきと考えるかによって、その人の民主社会への感度がほのかに見えるような気がするのだ。

 道路交通法には違反しているのかもしれない(公道を許可なく占拠してる)が、今のところ、罪を犯したわけでも、誰かに危害を与えたわけでもない。でも、主張や振る舞いがよくわかんないし、不気味だ、という漠然とした不安を振りまいているというのも事実だ。でも、「アイツは不気味だ」というだけで拘束するわけにはいかない。
 今いる自治体及び地域の警察が退去命令を出したとしても、「退去する」とは、別のどこかの地域に移動するということだ。そしたらその自治体や地域の警察も同様のことをするのではないか。オウム(現アーレフ)の時もそうだけど、日本国民である限りは移動や居住の自由は憲法で認められてるはずだぞっ!と主張されたら、実は有効な反論がない。唯一(かな?)、「公共の福祉に反する」という言い方が可能だが、彼らの行動が「公共の福祉に反する」と判断するのは誰なのか。自治体や警察が判断していいのか。判断していいというのなら、ある日突然、自分の属する団体なり組織が「公共の福祉に反します」といわれたら唯々諾々と従うということを意味するが(そのときは反論する、というのであれば、彼らにも同等に反論する機会を与えて交渉の余地を与えねばなるまい)、それをどれだけの人が望んでいる、またはそういう場合を想定しているのか。

 どこの自治体に行っても退去することを強要されたら、彼らはどう出るのだろうか。強硬手段に出て実力で占拠するのだろうか。正当な経済活動で入手した土地があり、そこに定住した場合、彼らをそこから追い出すことはどういう権限で可能になるのであろうか。
 「彼らの帰るべき場所へ帰ればよい」という言説は、彼らに「帰るべき場所」がかの研究所以外にある場合にのみ有効である。もはや、そういうものを振り切って「キャラバン」に参加している−帰るべき場所がないからそこにいる−のかも知れないし。彼らを受け入れる家族や施設があったとして、じゃあ、その周辺の住民はおとなしく元研究所員(?)が近くで住むことを許容するのか?

 どこの自治体に行っても退去しなければならず、そのほかに帰るべき場所がないのだとしたら、外国に追放するか、微罪でも言いがかりでもなんでもいいので逮捕するか、もしくは「最終的解決」しか方法がないのではないか?
 説明するまでもないと思うが、「最終的解決」とは、ナチドイツがユダヤ人問題解決のために採った方法、すなわち根絶を意味する。

 どういう場合に、憲法で認められている基本的人権を制限できるか(もちろん、その前段階としてそもそも制限してよいのか、という議論も有効だ)を、これをネタに考えてみてほしい。

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Updated : 2003/05/05