Location : Home > Contemporary Files > 2002
Title : The rule
Site:Felix Logo
Contemporary Files #20020123
手続きを守るということ
/ BBSへGo! /

 朝日新聞によると「大学入試センターは、19日から始まった試験で、高校が志願票を出し忘れていた神奈川県の高校生1人の受験を認めた、と発表した。こうした例で受験を認めたのは初めて。
 昨年も、高校側のミスで受験票が同センターに届かなかった例があったが、申し出があったのが、試験開始4日前だったこともあり、受験を認めなかった。」らしい。

 このニュース、皆さんはどう思うのかなぁ。

 個人的には受験を認めるのはおかしいと思う。
 というのは、定められた手続きを踏まなくても特例が認められることがわかったなら、誰もまじめに手続きを守らなくなるよ。しかも去年は4日前にわかったにもかかわらず受験させてないんだろ?

 出したのに届いてないとか、届いたけど書類の不備で受理できないっていうのじゃないんだ。出してないんだぞ。センター側にしてみれば、その受験者がもともと本当に出す気があったのもやら、なかったのに直前(締め切った後)に出す気になったのやら判別不可能じゃないか。そうしたら、今後これを悪用できる。さあ、現在高校2年生の諸君。センター試験の申し込みが終わってからでも受験したくなったら、学校に頼んで「出し忘れてました」って言ってもらおう! 今年に既に判例ができたんだ。断られる理由は何もない!
 出願ってのは、指定期日・日時までに受理されなければそれ以降は拒否されてもしかたがない。それまでにきちんと準備をしてないということで既にふるいにかけられてるんだ。スタートラインに並んでないのに、いざスタートとなったら「この子も出場させて」ってそりゃないよ。

 「一生のことだから受けさせてあげてもいいじゃないか。」とか「その受験生に落ち度はない」と言う意見の方もおられるだろうけど、じゃあ、昨年受けさせてもらえなかった受験生はどうなるのさ? その人に対する救済措置はないの? 今年のがよくて去年のがだめな理由は何? 今年からルール変更ってことなら、来年からは高校がミスしてもどんどん認めるわけ?

 こんなことを書くと「なんて人情のないことを言うんだろう」と思われてしまうかも。じゃあ、逆に聞くけど、なぜこれが可能になったんだ?
 たぶん、この場合、直前になっても受験票が届かないことを不審に思った受験生が学校に問い合わせたら、「出してない!」とか、そういう事態があったんだろう。そして、「何とかしてくれませんか」って強い懇願があったんだろう。で、「何とかしましょう」と誰かが判断した。去年まではなんともしなかったにもかかわらず。
 正規の手続きを踏まずに「何とかしてくれ」って頼んで何とかしてもらえるしくみって一体何なんだよ。斟酌の余地があるってことは、そこに口利きが介在したってことだ。

 例えばだ、震災とか事故とか、人知の及ばないことが原因でそういうことになったんなら、みんな(去年受けさせてもらえなかった人も含めて)納得する理由があったのなら、特例を認める余地があってもいい。けど提出する側の人為的なミスなんだろ? 郵便事故で届かなかったとか、センター側の作業ミスで紛失したとかじゃなくて。責任の所在がわかってるミスなんだからその人に徹底して責任をとらせればいい。
 このミスをした高校は、入試のとき、どっかの中学校が「受験申し込み票を出し忘れてた!」と言ってきたら、無条件で受け付けるんだな? そうでないと筋が通らないゾ。

 そもそもさぁ、受験で一年後れたって、実社会に出たら関係ないよ、実際。

 いやあ、何を問題にしてるのかというと、ミスをした高校の(たぶん進路指導の)先生の怠慢さとか、入試センターの首尾一貫性のなさではなくて、「その学生独りくらいいいじゃないのさ、何を腹たててんだよ!」と私の書いたことに対して怒った、他でもないあなたの意識のありかたなんだ。

 これは実は以前、Contemporary Files #20010709:「理想を徹底的に守る」ででも書いたことだけれども、ほかのみんながルールや手続きをきちんと守っているとき、誰か独りだけ一回だけ特例を認めることは、人情としては問題にはならないし、本当にその独りだけなのなら、ルールを守っているみんなも納得するだろう。じゃあ、ある独りに特例を認めた場合、その人と非常によく似た境遇のほかの独りを特例として認めることを拒否する論理はあり得るかと言うと、非常に困難になる。じゃあ、2人だからいいとしよう。それを見ていた、これまでの2人とは微妙に違うけど、これまたよく似た境遇の人が特例を認めて欲しいと言ってきたらどうするのか。くどいけど繰り返すよ。n人の特例を認めたら、n+1人目を断る理由がないんだ。これじゃきりがない。特例を認めるっていうのは、そういうルールのなし崩しを招く危険性が十分にある。仮にその特例を認めるとして、その特例が膨れ上がらないようにどっかで歯止めがかかるように明文化したルールができたのなら、まだましなんだけど、それが担当者の裁量に任されていて、しかもその担当者に「口利き」をできる存在がいてて、そういう「圧力」をかけられる人へのアクセスが限定されていたとしたらどうなんだ? その自覚のもとに「その学生独りくらいいいじゃないのさ、何を腹たててんだよ!」と言ったの?


[Previous] : 2002/01/16 : 人はいかにして狂信的になるか
[Next] : 2002/01/30 : 代表
[Theme index] : 日本社会関連
Site:Felix Logo
Updated : 2002/01/23