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Title : Creatures in Plain World
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Contemporary Files #20000731
地球人は2次元の生き物である。
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 最近、ロシアと中国とが接近しつつある。朝鮮民主主義人民共和国との関係強化もあるが、焦点は、合衆国が進めようとしている全米ミサイル防衛構想(NMD)への反発といえる。まあ、このNMDはレーガン大統領時代のSDI(戦略防衛構想)の二番煎じと言えばそうなんだが。
 技術的には、SDIの時もそうだったが、まだまだ荒唐無稽としか言えない段階である。飛んでくるミサイルを全て補足し、飛んでいる最中に迎撃するくらいの精度を持った兵器はまだまだ実用段階ではない。しかし、合衆国がその気になって作れば、NMDそのものは完成しなくても、その周辺技術が向上し、他国の追随を許さない状況が堅持される危険が高まる。また、ミサイルは迎撃できないとしても、世界中のあらゆる地域が(特に軍事的に重要な地点を中心に)、合衆国の衛星による監視を24時間受けることになるであろう。そして、これは現在の技術でもさほど難しいことではない。現時点で民生用に開放されている衛星画像の解像度は最高80cmである。その精度を向上させることだけで可能だ。これは、極めて脅威である。(これについてはBookshelfの『幻滅への戦略』でも触れた。)

 あともうひとつ、戦略思想的に重要ではないかと思えるのが、上空からの攻撃に耐えるような有効な防御手段を人類は持ち合わせていないことによる恐怖が挙げられるのではないかという点だ。
 だいたい、戦争の経緯の説明を行うとき、相対する軍隊の配置図・陣形図を書く。陸地であっても海上であってもさほど変わらない。よく「○○防衛線」という言い方がされるのに顕著であるように、平面で理解してしまう傾向がある。地球人は2次元の生き物なのだ。この発想は19世紀までの戦争であれば十分役に立ったが、特に第二次世界大戦以降、戦闘機と潜水艦の出現によって、必ずしも有効ではなくなった。「防衛面」とでもいうべき発想が必要なのだ。しかしながら概念的にはそうであっても、物理的に人類は地球の表面に重力で縛り付けられており、上下方向(特に上方)からの攻撃に有効に防御する方策を持たない。打ち落とせば自分の上に落ちてくるからだ。映画『インデペンデンス・デー』で侵略してきた宇宙人が各地の大都市の上空に配置したのは、地球を制圧するには有効な方法だった、と私は見ている。上空からの攻撃体制が完成してしまえば、防御する側としてはそれらの衛星を瞬時に溶かすか、横から跳ね飛ばすしか方法がないのだが、そのための衛星を打ち上げることすら既に構築された監視システムでキャッチされる。つまり、手のうちようがなくなるのだ。そのようなシステムを、地球上の1つの国の管理化に置くのは極めて危険である。
 しかも日本はこの構想に参加しようとしている。これはいかなる考えに基づくものなのか。もしや、経済的な波及効果を望んでいるのか?


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Updated : 2000/07/31