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Title : Jealousy
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Contemporary Files #19991129
嫉妬
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 東京文京区で2歳の女の子が殺害されるという事件が起こった。その子の兄が通う保育園の園児の母親が容疑者として逮捕された。
 報道によれば、「母親の心のぶつかりあい」が原因だそうだ。いわゆる「お受験」がうまくいっている母親をそうでない母親が羨んだということか。

 まず、犯罪報道で(はっきり言えばワイドショー的に)よくとられる手法は、犯人が異常であったと強調することだ。TV等では、異常に加熱する「お受験」の様を報道している。しかし、その異常さを指摘するキャスターやコメンテーターですら、自分の子供を少しでも「いい学校」に入れようとしているのではないのか。

 たぶん、現時点では、十分に指摘されていない点が1つある。
 なぜ、「お受験ママ」が発生するのか、という点だ。
 「お受験」の現場では、子供の通う保育園・幼稚園・小学校…という「学歴」から、身につけている洋服のブランド、送迎の車、親の職業などが競われるものらしい。
 …が、よく考えてみると、どこにも、母親自身の姿がない。女性が母親としてしか評価されない場面での競争なのだ。その世界の中でしか生活せず、それ以外の世界が見えていない場合、ほんの少しの差が、「世界」における全存在を否定されたような気分になるのかも知れない。

 嫉妬は、ほとんど平等な社会における微細な差異に対するとき、最も強くなる。
 自分と同レベルと思っている相手にぬきんでられると、無性にそれを否定したくなり、妬んでしまうのだ。最初からレベルが違う相手だと、嫉妬する気持ちにもなれないものだ。

 おそらく今回の事件の要素は、この2点(女性が母親としてしか評価されない社会・ほとんど平等な社会)が重要な要素だと思うのだが。


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Updated : 1999/11/29