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Title : It has changed.
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Contemporary Files #19990503
ガイドライン法案可決で事実上の憲法改正
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 4月28日付の一般紙一面は「ガイドライン法(周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律)案」可決の記事で埋まっていた。
 これについては「戦争法案だ」「憲法違反の恐れがある」という批判がある。
 どう考えたって日本から他国に先に手を出すとは考えられない−っていうか、他国を侵略しそれを維持するだけの装備が自衛隊にはないっちゅうの−ので、どちらかといえば、西太平洋地域またはユーラシア大陸東端地域での、安全保障上の危機が発生したときにどう対処するかということだから、少なくとも「戦争を仕掛ける」ための法案ではない。それに仮に−もちろんそうならないことを望むが−そういう事態になったときに、どう対処するのか、対処のためにはどういう手続きを踏まなきゃいけないのかが、今まで決まってなかっただけでも十分に恐ろしい。この手の事態がなかったのが幸運であったというほかない。「国民の安全と財産を守る」という国家の存在意義が維持できなくなるわけだから、そういう事態になったときにどうするかという対案を提示しない限り、反対は単に反対したぞというポーズを取るためだけの反対になる。

 後者の批判については、そりゃ、一言で言えば憲法違反だろう。

第1条 目的

 この法律は、そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等、我が国周辺の平和及び安全に重要な影響を与える事態(以下「周辺事態」という)に対応して我が国が実施する措置、その実施の手続きその他の必要な事項を定め、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力および安全保障条約(以下「日米安保条約」という)の効果的な運用に寄与し、我が国の平和及び安全の確保に資することを目的とする。

 どうみたって、集団安全保障を前提としている。
 しかし、これを「憲法違反だ」と騒いでいるだけでは能がないというか、ほっておくと事実上の憲法改正とみなされることになるのではないか。

 日本で最初の憲法というと、やはり聖徳太子の「十七条憲法」ということになるんだろうか。
 まあ、しかしこれは国の機構や政治方針を明らかにしたと言うよりは、国民(という発想が当時にあったかどうかは不明だが)の心構え的な内容であったので、法律らしい法律としては、大宝律令が事実上の最初とことになるんだろうか。

 まあ、どちらでもいいのだが、これらの法律は、これまでの歴史の中で、いつ廃案になったのだろう?

 もちろん、それに替わる法律は、その後、政体(幕府)が替わるごとに公布されているけれども、だからといって、正当な手続きをもって廃案にもっていったわけではない。唯一、自らの改正手付きでもって改正・廃案となったのは、大日本帝国憲法のみである。(現在の日本国憲法は、帝国議会で裁決された。)
 しかし、だからといって、これ以外の法律は今でも有効だと主張したら、たとえば、班田収受の法にしたがって、国に対して開墾田の支給を要求したら、まあ、相手にはされないだろう。

 ヒトラーにしても、当時もっとも平和的と言われたワイマール憲法を廃案にしたどころか、それに則って政権を把握した−ってまあ、背後でいろいろテロもしたが−はずだ。

 法律というものは、手続きというのがうるさいわけだけれども、現実問題として、それが流通し、機能するか否かで判断される部分が多分にある。明治維新になったときに、武家諸法度は廃案にされたわけではないけれども、帯刀の禁止や四民平等とかの関連法案(?)が公布された時点で、事実上廃案にされたも同然で、政府も守らせはしないし、民衆も守るつもりがなくなっていただろう。

 最近、急激に国家のあり方を問われる事態がいろいろと起こってきているわけだが、こういうときこそ冷静に対処しなければ、ずるずると思わぬ方向に引っ張られていってしまう恐れがたぶんにあると思われる。


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Updated : 1999/05/03