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Title : "Disappearance"
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Contemporary Files #19990425
"Disappearance"
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 4月20日付の毎日新聞夕刊のトップで、コソボ自治州で少なくとも10万人のアルバニア系男性が行方不明となっているという報告書を合衆国国務省が報告書を公開したと報じた。

 この「報告書」とは Ethnic Cleansing in Kosovo( Fact Sheet based on information from U.S. Government sources,released April 19, 1999 )で、問題の部分に該当するのは以下のような記述である。

Detentions

Refugees have claimed that Serb forces are systematically separating military-aged men from the groups, and the vast majority of refugees crossing international borders out of Kosovo, especially into Albania, have been women and children. We are gravely concerned about the fate of the missing men. Their number ranges from a low of tens of thousands, looking only at the men missing from among refugee families in Albania, up to several hundred thousand, if reports of widespread separation of men among the IDPs within Kosovo are true.

 つまり、主にアルバニア国境付近に逃れてくる難民が女性と子供ばかりで、徴兵年齢にある男性がこぞって見られない状況であるということで、それは当局により拘束された可能性が大きく、彼らの生死を「非常に懸念している」ということである。

 この文書では「不明」という意味を "missing men" という単語で表現しているが、このように権力側が手を下して国民を拉致し、行方不明にさせる(その多くはそのまま帰ってこない)状況を、国際人権法上では「失踪(Disappearance)」と言う。

 有名なところではアムネスティが

Amnesty International uses the term "disappearance" whenever there are reasonable grounds to believe that a person has been taken into custody (including unacknowledged detention centres) by government authorities and their agents and these later deny that the victim is in custody, thus concealing his or her whereabouts and fate.

という定義を与えている。

 すなわち、戦争や自然災害などで行方がわからなくなる「行方不明者」 "Missing persons" や、兵士が作戦行動中に消息不明になる−戦死の場合もあれば捕虜になる場合もある− "Missing in Action" とも異なり、国家によって収監されたと考えられるが、そのことを当局が否定し、所在も生死も不明、という状態ということである。
 国連においても人権委員会の活動として、強制的または非自発的失踪に関する作業部会(Working Group on Enforced or Involuntary Disappearances)があり、報告のあったケースに関して、関連情報を探索し、一定の条件を満たした場合、当該国の国連代表部に対して説明と調査を求め、当該政府と被害家族との間の媒介的役割を果たす役割を果たしている。
 ただし受け取ったケースが発生して3ヶ月以内であれば直接当該国の外務大臣に送付される。

 "Disappeared person" が存在すると認定することは、当局が非人道的な行為を行っていると断定することであるので、十分な証拠がそろうまでは別の表現をとっていると考えられるが、10万人の人間をどこかに監禁するだけの設備がないと考えられる以上、そのまま虐殺してしまう危険性が極めて高い。
 その後、国境が封鎖され、難民の流れが途絶えてしまい、それと同時に情報も流れてこないため、いったい何が起こっているのかわからなくなってしまっている。

 第2次世界大戦で連合軍がドイツへ入ってアウシュビッツを目の当たりにした時の衝撃をもう一度人類は味わうことになるのだろうか?

【参考にした資料】

[Previous] : 1999/04/18 : 懸念
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Updated : 1999/04/25