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Title : New trend of Energy?
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Contemporary Files #19990222
エネルギー業界をめぐる新しい動き?
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燃える氷・メタンハイドレード

 最近、担当業務の関係で東京出張が多く、新幹線をたびたび利用する。車内では本をよむことが多いのだが、時折、JRでしか買えない月刊誌・WEDGEを手にすることがある。
 2月号には、日本近海に眠る「燃える氷」・メタンハイドレードの話が載っていた。
 メタンハイドレードとは、天然ガスの主成分であるメタンが大量に含まれた氷のようなものである。そもそも天然ガスは石油を採掘する際にでてくるガスのことで、これを輸送しようとすると、いったん液化する必要がある。これが技術的にたいへんで、天然ガスは採掘された国の内部で利用されることが多い。しかし資源小国の日本は世界最大の液化天然ガス(LNG )の輸入国で、安定的な入手が大きな問題となっている。
 もともと油田がほとんどない日本では天然ガスそのものの埋蔵量がほとんどない。しかしメタンハイドレードなら、特に北海道近海にガス田がかなり期待できるというのである。−ただし乗り越えなければならないハードルはいくつもあるようだが。

エネルギー・デリバティブ

 少ないながらも、持ち前の技術でなんとかしようとしているのだな、とメタンハイドレードの記事を読んでいると、最後のほうでこのような記述にでくわした。

 98年が暮れようとしていた時、世界的なエネルギー取引所の合併というニュースが世界のエネルギー業界を揺さぶった。ロンドン国際石油取引所とニューヨークのマーカンタイル取引所である。ロンドン取引所は原油の国際価格の指標となる北海ブレンド先物と天然ガスの先物によって、ニューヨーク取引所は天然ガスの先物の先駆者として知られている。(WEDGE : Feb. 1999 P.22)

 アメリカ合衆国の商品取引所では何でも先物にしてしまうとは聞いていたが、エネルギー資源の先物があることは知らなかった。少し気になったので調べてみることにした。

 その結果は、個人的なウォッチの対象外の分野とは言え、こんな取り組みまでされていたのかと驚愕するようなものであった。
 アメリカ合衆国では、公益事業規制政策法(PURPA , 1978)の施行により、電気事業者以外でも発電事業に参画できるようになり、1980年代後半には卸電力価格も競争入札化され、国家エネルギー政策法(EPAct , 1992)で卸売への参入も可能となった。
 規制緩和により参入が自由となって、選択肢が増えたのは良いが、供給者によって価格が違ったり、その変動が大きく、利用者側としては何らかのリスクヘッジが必要となっていた。これを見たニューヨークのマーカンタイル取引所(NYMEX)が1996年から電力先物取り引きを開始したのだ。
 もちろんこれと同じことがすぐに日本にもちこまれるとは思えないが、規制緩和が進み、電力事業が発電・卸・小売に分割され、新規参入が活発になった際には何らかの価格指標が必要になるだろう。もちろん、旧態依然の方式では業界団体の申し合わせで一律価格になる危険性もあるが、それではいきなり外資が入ってきて安い(が合理的な根拠を持つ)サービスに顧客を持っていかれることもあり得る。だから何らかの対処が国内のエネルギー関連産業には必要になるだろう。


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Updated : 1999/02/22