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Title : Digital Money
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Contemporary Files #19990201
電子決済手法の標準化へ
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 1月25日付の日本経済新聞の1面トップの記事が「電子決済手法の標準化へ」だった。これには軽い違和感を持った。そもそもネットワーク上での通貨というものが存在しない現時点では、どこかで現金の決済を行わざるを得ず、何らかの既存の決済手段に最終的に帰着せざるを得ない。しかも、「ネットワークを仲介した売買」とは要するに手のこんだ通信販売なので−少なくとも日本では法律上そういう扱いを受ける−、事実上、クレジットカード方式か振込形式に帰着する。

 ここで少し「決済」について考えてみよう。
 決済とは債権/債務−お金を払えと言える権利/払わねばならない義務−の解消のことである。これは根本的には実際にお金を払うことで解消する。普通はこれを当事者どうしで行う。しかし、債権を持つ方はお金が手に入ればいい。それが誰のお金であっても。そこに第3者が介在して債権を渡して、売り手−買い手間の関係を終わらせることができる余地がある。その「第3者」がクレジット会社であったりするわけだ。売り手はその第3者を信用することで買い手にものを売る…というのか、売り手はカード会社に債権を売る、と言えばいいのだろうか。

 基本的にはこのバリエーションしか決済方法はない。だから、その「標準化」ってなんだろうか? という違和感があるというわけだ。

 もうすこし話を広げて「電子マネー」としてみても既存のもの、たとえば

でとりあげられている方式はクレジットカードを介在させるシステムであって、通貨の満たすべき3条件

  1. 決済手段となりうる(交換媒体機能)
  2. 価値の比較尺度になりうる(価値尺度機能)
  3. 価値の保存手段になりうる(価値保存機能)

のうち最初のものしか満たしていない。ネットワーク上の処理も基本的にSETでまとめられているように思うのだが。。。。

「現在の電子マネーは、現金通貨や預金通貨に代わる新たな決済手段をつくり出しているわけではなく、現金通貨や預金通貨という既存の決済手段を移動させるための仕組みを電子的にさまざまな方法で実現しようとしているものである。」
(『デジタル・キャッシュ』P.28)

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Updated : 1999/02/01