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Title : In Digital Money We Trust ?
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Contemporary Files #19990118
電子なお金の話
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 本年の1月4日から、キャッシュカードを使って、代金を商品購入時に決済する「デビットカードサービス」(J-Debit)が、郵便貯金や富士銀行などのカードでも可能になった。このニュースを今週はあちこちで報道していたので、それをまとめてみることにした。

 金融機関の出すキャッシュカードは、通常、キャッシュコーナー(ATMやCD)まで行って現金を引き出すために使う。だから商品を購入する場所で見せても基本的には何の役にも立たない。かと言ってクレジットカードでは、店としては言わば掛けで売ることになるので販売とそれに伴う現金の流れに時間差が生じ、一定の決済リスクを背負うことなる。だからいっそのこと、キャッシュカードで直接、商品分の代金を銀行にあるお客の口座から店の口座に振り込んでしまえば、というのがデビットカードサービスである。(ああ、乱暴な。。。)

時間と好奇心と英語の辞書のある方は、creditとdebitの意味を調べてみましょ。

 ではこれを機会にキャッシュレス時代に進むかと言うと、おそらくそうではないであろう。
 京都では祇園などの商店と京都織物小売共同組合などでつくる「きょうと情報カードシステム」でデビットカードサービスが昨年9月から導入されている。12月末までの利用件数6310件の平均利用金額は1,5639円。1,000円台の利用が最も多く、10,000円以下の利用が全体の61.5%であるという。郵政省や富士銀行・NTTデータなどが設立した日本デビットカード推進協議会でも、1,000円以下の小口では現金決済、数万円の買い物にはクレジットカード、そしてその間の買い物にはデビットカードという使い分けがなされるだろうと推定している。

 単純に自分の財布と相談して考えてみるとこの事情はよくわかる。
 何かを買おうとしたときに、通常財布に入っているであろう範囲内で買えるものは現金で買うだろうし、「そんなお金普段もって歩かないぞ」という金額ならクレジット。そしてその間の「ちょっとお金おろしといてから。。。」と思うような金額のとき、ATMやCDを探さずにすむならデビットで、ということになりそうだからだ。

 しかし一方でこの手の決済システムで気になるニュースが去年流れた。
一時インターネットでもてはやされた、電子マネーの草分けである Digicash社 のアメリカ法人が破産申請をした。
 話はきわめて簡単である。技術的には究めて優れていた。にもかかわらず利用者が少なかったのだ。
 ある種のお金を使う本質的理由は、それが他人も使うこと、である。だから多くの利用者と多くの利用環境を整備することによってこの手のサービスは成立し、ビジネスとしてペイする。それがうまく行かなかった。
 まったく新たなサービスがこの条件を満たすには、とんでもなく魅力的で誰もがとびつくようなものであるか、若しくは既存の大きなシステムを内部に組み込んでしまうことである。その点、デビットカードは、厳密な意味での電子マネーよりは、キャッシュカードが利用できるという点で有利である。あとは使える店が増えれば定着していくのかも、という予感がするサービスである。

【使用できる金融機関】

【利用できる店】


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Updated : 1999/01/18