トラペジウムと星雲が同時に見られるM42の作り方
天体写真を撮り始めますと、冬ならM42(オリオン大星雲)は手軽な対象として多くの方が撮影されると思います。私も天体写真はまだまだ駆け出しですが、当然の様にM42を狙いました。
で、自分で撮った物を見て「おお、よく撮れているではないか」と思うと同時に、「何かが違う・・」「何だろう・・」と強く感じjました。「これは他の人の作品を見て刺激を受けなければ!」と思い、他の人の作品を見に行ってもダイナミックさや精緻さに違いはあっても「何かが違う」という感触が払拭出来ませんでした。
そして、「何だろう、何だろう」と悩んでいるうちにそれが何なのかにはたと気づいたのです。
それは
星雲を再現するとトラペジウムが写らない
ことにあったのです。
星雲は大口径の望遠鏡で見ても周辺まで見ようとすると困難な対象です。もちろん写真に撮ろうとすると、それなりに露出時間を長めに取る必要があります。
一方のトラペジウムですが、オリオン大星雲がトラペジウムから放射されるエネルギーで輝いている事からも分かりますが、非常に明るく美しく輝いています。(蛇足ですが、トラペジウムの輝きは本当にきれいですね。生まれたての星らしいですが、ダイヤモンドを見る様な汚れのない無垢の輝きという言葉がぴったりな感じがしますね。)もちろん写真に撮るにしても長い露出をかけるとまわりの星雲の輝きに埋もれてしまい、トラペジウムのあの輝きは全く見えない写真になってしまいます。

左の写真は私のホームページでもしばらく表紙を飾っていましたが、トラペジウムが完全にすっ飛んでしまっていますね。眼視で見ていますと、目を釘付けにするトラペジウムが埋もれてしまっている。これはM42ではありません。(は言い過ぎですが) 右の写真は最終的に星雲とトラペジウムが再現出来たかなと思っている写真です。

さて、始めるにあたって私は悩みました。星雲を再現させるには長い露出時間が必要、しかしそんなに長い露出時間をかけると当然にトラペジウムは飛んでしまう。「どうしたものか・・・」色々と考えました。
デジカメを使って撮影していますからフィルムよりもラチチュード(写す事が出来る明度の幅:平たく言えばどれだけ明るい物と暗い物の差を写せるか、です)は狭いです。星雲に露出を合わせばフィルムよりもトラペジウムは飛びやすいのですが、ではフィルムなら飛ばさずに入れる事が出来るのか考えました。で、ネットでよその写真をいろいろと見てみますとフィルムで撮ってもやはり飛んでいます。
「これはフィルムでチャレンジしても駄目そうだ・・・」
「結局、画像処理でしか救う手は無いのか」という結論に至りました。
そこから私のチャレンジは始まったのです。(って言う事が大層なんだよ・・ 陰の声)

では、具体的に何をどうしたのかを写真を使いながら説明いたしますね。
使用機材は
元写真撮影用に ビクセンR-200SS + GP赤道儀 + 国際光器 バーダー三脚
           (使用機材にわざわざ三脚の名前を入れるのは珍しいと思いますが、この三脚は
           特別に機材紹介に入れたくなる程に全体のグレードをアップさせています。事あるごと
           に私はこの事を言い続けています。国際光器さん!聞こえてますかあ? 笑)
           カメラはキヤノン D60
           撮影は直接焦点です。
まずはこれから画像処理を始める元画像を紹介しましょう。
左が6秒露出 右が60秒露出です。 デジカメ感度はISO800での撮影です。
ポイントはトラペジウムが元画像の時点で飛んでしまっていては困り物ですから、トラペジウムがしっかりと写っている事が要求されます。当たり前っちゃあ当たり前ですが・・。

60秒の方は何がポイントになるんでしょうか。星雲がどびゃああああって写っていてもいいのですが、そうしますとトラペジウム界隈の星雲の輝きがあまりに強くてトラペジウムが見える様に処理しにくい様な気がします。あくまでも気がするだけでやってみないと分かりませんね。是非トライしてみてください。
(本当はもっと広い範囲が写っていますが、ご存知の方はご存知の様にキヤノンD60は長時間露出をかけますと右側に赤いヒートノイズが出ます。使い物になりませんので右端は捨てる気持ちで使わないといけません。ダーク画像を撮っておいて引くと言う手もあるのですが、面倒臭いので今回はやっていません。)
さて、今回の画像処理のポイントをまず整理しておきます。
私は別にフォトショップの使い手でもありませんし、天体画像処理ソフトのステライメージの使い手でもありません。恐らく世間一般の人よりも知識が無いかも知れません。そんな私がやっている事ですから、使い手の方から見ると「ちゃんちゃらおかしい」事をしているのかも知れません。でもまあ、ともかくこれまで誰もやって来なかった事にトライしてみたという事で、どうぞご容赦の程をお願いします。
また、「こういう風にしたらもっと簡単に、もっときれいに出来るよ」というのがあれば是非教えていただきたいです。
おっと、ポイントでした。
ポイントは一言で言いますと「中間調の絵を作って貼り合わせる事」です。
上の2枚の写真から中間の絵を作って合成する訳です。合成と言うと天体写真では嫌われるかも知れませんが、切り取って貼り合わせるのではなく全体のトーンと明るさをいじくって重ねるだけですから許される範囲だと考えています。だって、同じ画像の露出違いやピント違いを何十枚も重ねてアラを消すなんてのは一般的に行われている事ですから。(ちなみに、この行為をコンポジットと言います。)

続き

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本ページはアストロアーツ発刊の月刊星ナビ 2月号の星ナビひろばに掲載していただきました。それを見てお寄りいただいた皆様、アストロアーツになり変わりまして御礼申し上げます。笑