対症療法 Return
昔、町火消しというのがありましたね。自治会的な火消しで、ある地域に火事が起こったらその周辺の家屋をとりこわし、類焼を防いで火の勢いを落としたのだそうです。ずいぶんと乱暴な方法ですが、給水システムが井戸水しかなかったのですから諦めざるを得ません。さて、現在、まちなかで火事が起こった場合、周辺の家屋を壊して回ることが出来るでしょうか?
アトピー性皮膚炎にしろ、接触皮膚炎や日焼け、脂漏性皮膚炎にしろ、皮膚炎があればそれは第1度の熱傷と考えていただければよいかと思います。やっかいなことに、この熱傷は病巣周辺の皮膚をひっかくことでどんどん類焼が広がっていきます。町火消しならいざしらず、壊していいような皮膚は人間の体には存在しません。当然、荒れ狂う炎には水をかけてやらなければ治まりません。こうした、「炎に水をかけるがごとき治療法」が「対症療法」なのです。
以下、どんなものがあるかみてまいりましょう。
1. 皮膚をさする
決してひっかいてはいけません。ひっかくのは火に油です。爪を短く切っていても、やはり指を直接皮膚にたててしまうと症状の増悪をきたします。シャツや、洋服の上から、指の平でなでてみて下さい。思いの外痒みがまぎれます。
2. 皮膚を冷やす
アイスノンを用意し、勉強机や職場にタオルでくるんでおいておきましょう。成人型の、顔に皮疹がある方におすすめです。「かゆいなっ」とおもったらすかさず、つめよりさきにアイスノンを顔に運んで下さい。眠気も吹っ飛ぶので、受験勉強にうってつけでは。
3. 早く服を着る(着せる)
乳幼児から小児期にかけてのお子さんをおもちのかたなら、さあお風呂というとき、裸にしたらなんとはなく体をかく動作をするわが子にお気づきではないでしょうか?人の皮膚は、なんにもつけないと軽い痒みを生ずるものなのです。アトピー性皮膚炎のお子さんではなおさらです。入浴前、服を脱がしたら遊ばせないですぐお風呂につかりましょう。おふろあがりにはすばやく保湿剤を全身に塗布し、すぐに綿の下着を着せてあげましょう。
4. 抗ヒスタミン剤内服
痒みについてはまだまだ研究が十分ではなく、薬剤でそれを100%おさえきるのは難しい状況といえます。しかし、現在のところ、主たる炎症持続の原因は皮膚網細血管のヒスタミン受容体(主として1型ヒスタミン受容体)にヒスタミンが結合し、血管透過性が亢進することで起こると類推されています。抗ヒスタミン剤はこのヒスタミン受容体にヒスタミンより先に引っ付いてしまうことで、ヒスタミンと受容体の結合を阻止してやろうというお薬です。さらに、大脳皮質に抑制的に作用し、痒みをやわらげますが、副作用として眠気を感じる方が多いのです。また、局所麻酔薬的な薬理作用ももっていますので、この点でも痒みを抑える方向に働くものと思われています。
抗ヒスタミン剤の副作用は、先に言いました眠気が主なもので、使用頻度が高い割に重篤な副作用の報告例がありません。非常に安心して使える薬剤といえます。ただし、抗コリン作用がありますので、緑内障(目の奥がいたくなる病気)や前立腺肥大症(男性高齢者で、前立腺が老化により大きくなり、おしっこがでにくい、夜何回もトイレに行くなどの症状)のかたには投与してはいけないお薬です。
効果的には、古典的なこうした薬剤も、なかなかに効果が認められます。軽症のアトピー性皮膚炎では外用なしでも十分な臨床効果が得られます。ただ、長期に投与した場合、その効果がやや薄れるという印象を持っています。
5. 抗アレルギー剤
抗アレルギー剤はここ20年来使用されだした、抗ヒスタミン剤に比べて新しいお薬です。一般に、1型アレルギー反応における肥満細胞からの化学伝達物質の産生、遊離を抑制、及び化学伝達物質に拮抗する作用を持つ薬剤の総称です。抗アレルギー剤は前述の抗ヒスタミン作用を持つものと持たないものに大別され、これまでのところ、抗ヒスタミン作用を持たない薬剤は止痒効果が不十分という理解が一般的です。この事象をとらえて、抗アレルギー剤は抗ヒスタミン剤となんらかわりばえのしない薬剤であると結論づける皮膚科専門医も多数いるというのが現状です。しかし、近年、止痒効果は抗ヒスタミン剤と同等か上回り、しかも最大の弱点である眠気を起こさない薬剤が相次いで開発されました。これら新薬は抗ヒスタミン剤にとって代わり、もっぱらアトピー性皮膚炎内服剤の主役となったのです。さらに一昨年、選択的にIgE産生を抑制する(抗ヒスタミン作用はない)という画期的な新薬も発売され、皮膚科医としてもかなり内服薬選択に余裕がでてきたのは患者さんにとっても有益なことと思います。但し、抗アレルギー剤は抗ヒスタミン剤と違い、起こる副作用がどれも同じ訳ではありません。皮膚科専門医の適切な助言に耳を傾けて下さい。
6. 保湿剤
皮膚が分泌する脂質の中で、アトピー性皮膚炎患者さんにおいてはセラミドが有為に低下を起こしており、このことが皮膚のバリア機能を弱めて自分の汗や衣類の刺激などへの過剰反応を助長しているのではと類推されるようになってきました。で、セラミドをはじめとした種々の脂質を逃がさないために、皮膚をコーティングする必要があるのです。保湿剤はアトピー性皮膚炎の方では皮膚に赤みが無くとも是非とも毎日欠かさず行っていただきたいスキンケア製剤といえましょう。現在、皮膚科でよく処方するものは、
(1)皮膚の脂質の1種であるスクワランを主成分とするコラージュデルム、
(2)皮膚角質侵軟作用を持つ尿素が主成分のケラチナミン、ウレパール、
(3)ヘパリン類似物質を主成分とするヒルドイド、ヒルダーム、 (4)ビタミンA油含有のザーネ軟膏 などがあります。 これらの剤形は皮膚にすべすべ感を与えんが為にクリーム基剤ですので、その保湿作用はマイルドではありますが、小さなお子さんでも抵抗無く塗ってくれるというメリットがあります。
軟膏系の保湿剤の代表はワセリンです。ワセリンは人間がもっともかぶれにくい外用剤で、その皮膚に対する低刺激性は他の追随を全く許しません。石油蒸留の際の中間産物として得られる炭化水素で、わずかに黄色を帯びています。これに脱色処理を施した白色ワセリンはその低刺激性と、皮膚をカバーして脂質や水分の蒸発を防ぐ効果が非常に高いため、色々な外用軟膏薬の基剤として使われています。ただ、べとべとした使用感や、皮膚に塗ったときに非常に硬い感じがするため、敬遠されやすい薬です。最近はこうした使用感の悪さをカバーした、ややモディファイしたワセリン(プロペト等の眼科用ワセリン)があり、皮膚科医を中心に広く使用され始めています。
7. ステロイド外用剤
ステロイド外用剤は、近年その副作用がマスコミに大きくとりあげられたために、全く薬の知識のない人でも「先生、ステロイドは使わないで下さい。」という患者さんが最近非常に多くなっています。そういう患者さんには、私は無理にステロイドを勧めず、ステロイド以外の方法、すなわち原因の特定、排除、入浴指導、スキンケア指導、抗アレルギー剤、抗ヒスタミン剤の内服と非ステロイド系外用剤の使用、日常の生活指導、精神的な指導などで良い方向に向かってもらうようにしています。しかし、ステロイドを全く使用しないと、かえって患者さんのストレスを大きくしてしまい、なかなか良くなってもらえないということもあります。わたしは、ステロイドを全く使用しないことがかえって患者さんの不利益になる場合が多いという実感を日々の診療で感じていますので、ステロイド絶対反対という立場はとりません。ステロイドの副作用は、「ステロイド剤の乱用」のところでもふれましたが、皮膚の菲薄化と毛細血管拡張、紫斑、皮膚潮紅、多毛、水イボやとびひ、ニキビなどの易感染性、色素沈着、ステロイド皮膚炎などですが、注意深い診察と丁寧なカルテ記載をしておればそうした副作用は出鼻でくじくことが出来るものなのです。ときおり、「私はステロイドに廃人にされた!」といったショッキングな単行本の広告をみますが、多くの場合、正確には「ステロイドの使い方を知らない医者に廃人にされた。」というのが正しいと考えています。実際、多くの専門医はステロイドを今でも必要に応じてよく使っているはずです。副作用はありますが、適応や病状、患者さんの生活や性格を考慮すると、ステロイドが最短ルートであるという場合も存在するのです。しかし、最近はごく普通の皮膚科標榜医のところへいくとあまりステロイドを出してくれないようです。マスコミの影響でしょう。副作用をこわがってステロイドを出さなくなってきているのです。実際、全身がじゅくじゅくの重症アトピー性皮膚炎プラスステロイド皮膚炎患者さんが大学に来るたび、安易に、ろくに皮疹も見ずに強いステロイドを出し続けたドクターを恨めしく思ったものです。こうしたステロイドを知らない医者によって重症化したアトピー性皮膚炎患者さんでは、ステロイド離脱を試みるよるほか対処のしようがありません。重症の方の中には皮膚が薄すぎてワセリン、ガーゼにすらかぶれるようになっている人がいました。どうかこのようなことがないことを望みます。そういう意味では、最近不勉強な先生が(不勉強なのに先生とはおかしいのですが)ステロイドをこわがってあまり出さなくなってきたことは、重症の患者さんの減少に利するところがあるやもしれません。
8. 非ステロイド外用剤
ある程度以上の炎症の抑制にはステロイド外用剤は不可欠ですが、炎症の程度、年齢あるいは部位などによっては、ステロイド外用剤よりも非ステロイド外用剤の使用がより好ましい場合もあります。特に顔面へのステロイド外用は、可能な限り避けることが望ましいので、ステロイドを含有しないこれらの外用剤を使うケースがあります。現在皮膚科領域で使用されている非ステロイド系消炎外用剤の主なものは、ブフェキサマック、ベンダザック、フルフェナム酸ブチル、イブプロフェンピコノール、スプロフェンなどです。しかしこれらはいずれも単独としての抗炎症作用が低いため、ステロイドと混ぜて使用したりする場合があります。標榜医の先生方は例のステロイドバッシングの後、この系統の薬をよく使用されているようです。しかし、ステロイド外用剤の副作用を恐れるあまり、非ステロイドでは炎症抑制効果が期待できない症例で症状の軽快をみないまま長期に使用し続けるのは好ましくありません。こうした誤った使い方のため、最近非ステロイド外用剤による接触皮膚炎が増加しています。症状は激しい炎症を伴うことが多く、お岩さんのように顔が真っ赤に腫れ上がります。お医者さんにかかっていてあまり良くならないのにそのまま非ステロイド薬を塗り続けている人は注意して下さい。
非ステロイド系消炎外用剤の抗炎症作用は、ステロイド外用剤に此べてはるかに弱いものです。一定以上の程度の炎症に対しては、その抑制効果はあまり期待できません。しかしながら、アトピー性皮膚炎のように長期間ステロイド外用剤を必要とする疾患では、その寛解期に非ステロイド薬を維持療法として使用し、ステロイド外用剤の副作用を軽減するのに有用です。
9. ステロイド内服療法
アトピー性皮膚炎の治療では、副腎皮質ホルモン薬はほとんどの場合外用剤として用いられ、内服薬として用いられることは特殊の場合だけです。副腎皮質ホルモン療法は対症療法にすぎないこと、副腎皮質ホルモン薬には使い方によっては副作用が出現すること、アトピー性皮膚炎の場合、病変部皮膚にのみ、その抗炎症効果が求められること等がその理由です。したがって、副腎皮質ホルモン内服薬の適応となるのは、外用剤ではコントロールができない程病変が激しい場合か、外用剤による副作用が内服薬の副作用よりも強いと考えられる場合です。顔面や頸部等は、副腎皮質ホルモン外用剤によって局所的副作用が出現しやすいので、通常IV群あるいはV群に属する弱い薬剤を用い、III群以上のものは原則として禁忌ですが、症状が激しく、IV群、V群の薬剤では抑えきれない場合、一時的に副腎皮質ホルモン内服薬を用い、症状の改善を待って外用に切り換える時があります。また、病変がきわめて広範囲な場合、I,
II群に属する副腎皮質ホルモン外用剤の場合、1日10g以上を連日塗布すると副腎機能の抑制が起こり得るので、それ以上の塗布量を必要とする広範囲病変の患者さんに対しては、副腎皮質ホルモン薬は、外用よりも内服のほうが副作用が少ないので、一時的に副腎皮質ホルモン内服薬を投与することもあります。投与法通常、症状を抑制しうる十分量を初期量とし、症状の改善とともに減量する潮滅法が行われます。十分な初期量とは、アトピー性皮膚炎の場合、1日2−3錠(分2−3)で、約2週間ごとに半量にし、長くとも5−6週間以内には、中止するように心掛けます。なお、この際、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬による止痒、副腎皮質ホルモン外用剤の塗布を同時に行い、滅量がスムーズに行われ、反跳(リバウンド)現象が出現しないようにしなければいけません。こういった副腎皮質ホルモン内服薬は、あくまでも特殊な一時的治療法であり、長期間漫然と行う治療法ではないことを、患者さんに十分説明しておく必要があり、医師も十分心得ておく必要があります。。内服療法は、外用療法に比べてきれいであり、面倒なこともありませんが、長期に服用すれば全身的副作用が必ずおこりますので、アトピー性皮膚炎のように、長期にわたる疾患では原則として禁忌なのです。なお、消化性潰瘍、糖尿病、高血圧、結核などのある患者さんでは、これら疾患の状況などを十分考慮した上で投与しなければならないことはいうまでもありません。これらの原病を内服ステロイドは悪化させてしまうからです。
10. 光線療法
アトピー性皮膚炎が日光浴によって軽快することは北欧で古くから強調された現象でした。日光の半分以上を占める赤外線によって温度上昇や発汗を来すことで痒みを増強させない限り、即ち紫外線を照射することは、アトピー性皮膚炎患者さんの痒みをとるのに効果的です。この方法は、l)通常の治療に反応しないような難治症例に対しても有効であること、2)長期寛解が得られること、したがって、3)通常の治療、特にステロイド薬による副作用の弊害を滅ずることができることにあります。光線・光化学療法の作用機序については、ランゲルハンス細胞、肥満細胞・リンパ球に対する抑制作用に基づく局所免疫調整、ひいては全身免疫調節作用が主体と考えられますが、表皮細胞を介した破綻バリヤー機能の修復も類推されています。最小紅斑量(光が当たることで皮膚に赤みを起こす最小の線量のこと。人により、人種によりかなりのばらつきがある)の2/3より紫外線照射を開始し、照射量は毎回20−30%ずつ上げていく、これを外来患者に対しては週1回以上施行するのが一般的なようです。副作用は、治療中あるいは直後、比較的急性に生ずる主な副作用−急性皮膚炎症反応、色索沈着、悪心・頭痛(内服PUVA)等です。慢性の経過で出現する可能性がある、一応留意しておくべき稀な副作用には、慢性紫外線皮膚変性(花弁状色素斑など)、発癌性(有色人種では稀)、白内障等があります。本法は重症患者に対して簡便かつ有効ですが、当医院には置く場所が無く、導入いたしておりません。しかし、昨年(平成8年)の11月の開業以来、本法をしたいほどの重症患者さんは今の所(平成9年2月3日)いらっしゃいません。奈良県はアトピー性皮膚炎の方の症状が京阪神と比べるとかなり軽いようです。生駒の山並みのおかげでなにかしら、大都市にはあっても生駒より東には届きづらい物質があるのでしょうか?そのかわりといってはなんですが、奈良は花粉症患者さんが非常に多いのですが..........。
11. 漢方療法
アトピー性皮膚炎は多病因的で、その病因の中でも患者の有する内因の占める比率が高いとかんがえられます。ゆえに本症は漢方療法の対象にもされてるわけです。漢方薬は単独の薬ではなく、いくつかの生薬から構成されています。例えば、アレルギー反応を抑制する生薬として、柴胡、甘草、麻黄、当帰、黄苓、大乗等が知られてますが、実際に治療に用いられるものは、これらの生薬がいくつか組み合わされた方剤です。西洋医学では病名に対し、それに合った薬を投与しますが、東洋医学は随証投与が基盤にあり、証によって漢方薬を処方するのが通例となっています。しかし、一般的には西洋医学的な診断法で診断し、その疾患の病態を近代医学的に把握し、一方で生薬の臨床的薬理作用を熟知した上で、それらを組み合わせた方剤を患者の体質に合うよう処方する方法が行われています。アトピー性皮膚炎に比較的よく使用され、ある程度薬物の評価されたものには十味敗毒湯(ツムラ10番)、消風散(ツムラ22番)、柴胡清肝湯(ツムラ80番)、越脾加尤湯(ツムラ28番)、当帰飲子(ツムラ86番)、補中溢気湯(ツムラ41番)、黄連解毒湯(ツムラ15番)などがあります。これらの使用法については多分に医師の漢方使用経験に基づく部分ですので割愛させていただきますが、患者のみなさんに申し上げたいことは、あまり漢方薬に幻想を抱かないで頂きたいということです。「自然の生薬」と聞いただけで副作用のない、安全な薬と思われる方が多いのは何故なのでしょう?生薬といえども致死的な副作用を持ったものが数多くあるのです。また、よく処方されるツムラの漢方薬などは、実際に中国で漢方医が使用する量の1/10程度の容量しかなく、私、日中友好皮膚科学会においてお話しさせていただいたところ、こうした(日本人が使用する)少量ではまず生薬の効果は期待できないであろうとされるかたが多かったのも事実です。漢方薬という、魔法の薬さえあればと期待しながら日頃の治療を怠って重症化していった患者さんを数多く見てきたから私はみなさんに知っておいてほしいのです、こうした事実を。
12. 睡眠導入剤、免疫抑制剤
アトピー性皮膚炎患者さんの掻痒には休みがありません。夜布団にはいると自分の体温の上昇から痒みを感じ、なかなか寝付かれず、ねてからも無意識に皮膚を引っかき、浅い眠りしかとれず、朝起きると寝不足であるのと同時にひりひりした痒みを覚え、1日のスタート時点から強いストレスを感じてしまう、この繰り返しがアトピー性皮膚炎をどんどん悪くさせてしまうのです。こういうときは寝る前の睡眠導入剤内服が効果的です。過量服用時の安全性と依存性の弱さから、ベンゾジアゼピン誘導体がもっぱら使用されます。ベンゾジアゼピン系睡眠薬は内服後どのくらいの時間で効くかによって、超短期型(ハルシオン)、短期型(ドルミカム、レンドルミン、リスミー等)、中期型(ユーロジン、ベンザリン、サイレース等)、長期型(インスミン、ソメリン、セルシン)に分けられます。なかなか寝付けないというかたには超短期型、短期型が、朝早く目が覚めてしまうという方には中期型、長期型が適しています。長期型のセルシンは抗不安薬として低容量で使用されることが多いお薬です。
近年、重症アトピー性皮膚炎治療に免疫抑制剤が非常に有効であるということで、注目され、複数の施設で臨床試験が行われています。免疫抑制剤はもともと腎移植後の拒絶反応を抑える目的で使用されるお薬で、ヘルパーT細胞系の機能を抑え、インターフェロンガンマやインターロイキン2、4などのサイトカインを減少させ、抗炎症作用を発揮します。こうした機序のお薬がアトピー性皮膚炎に効くという事は、本症が単純な1型アレルギーだけではなく、4型アレルギーの関与のあることをうかがわせます。しかし、この薬もまた万能ではありません。主たる容量依存性の(血中の薬物濃度に依存した)副作用に高血圧、腎機能低下があり、毎週一度は採血して薬剤の血中濃度を監視する必要があります。また、上記のようにT細胞の機能を弱める以上、色々な感染症にかかりやすくなるという可能性もあります。
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