ごんべの鳥取弁辞書/鳥取弁における助詞の用例


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格助詞副助詞係助詞終助詞間投助詞接続助詞


標準語の助詞については、主な語句を掲げるに止め、意味・用例等は省略しました。
鳥取弁において特徴的な助詞(を付加)については、意味・用例を示しました。
この表の作成には、三省堂「大辞林」、同「新明解国語辞典(第四版)」、角川書店「必携国語辞典」、岩波書店「国語辞典(第三版)」、同「電子ブック版広辞苑(第四版)」などを参考にしました。

種類助詞及び用例
格助詞
(標準語)が、の、に、を、へ、と、より、から、で、や
鳥取弁の一般会話では、格助詞「が」「を」「に」「へ」「と」は省略される場合が多い。
から
(動作・作用の行われる場所・場面を表す標準語の「で」の意で用いる。これが、かの有名な鳥取県のみから見られる「場所を表わす格助詞《から》」であります)

《用例》「その服、どこから買いなっただえ」(その服、どこでお買いになったんですか)。
《用例》「そこのタバコ屋んとこの道から、先生に会あたぜ」(そこのタバコ屋のところの道で、先生に会ったよ)。
《用例》「そがな”から”の使い方、どこから覚えなっただいな」「・・・」(そんな”から”の使い方を、どこで覚えたんですか)(うーん、どこからだっけ)。


(鳥取弁では、方向、動作の向かう相手・対象を表す格助詞の「へ」は用いない。すべて格助詞「に」が用いられる。まあ「へ」は元々、口語的ではないけれど)

《標準語》「喫茶店行く」→《鳥取弁》「喫茶店行く」。
《標準語》「会社行く」→《鳥取弁》「会社行く」。
《標準語》「北北西向かう」→《鳥取弁》「北北西向かう」。
《標準語》「資料編のトップ戻る」→《鳥取弁》「資料編のトップ戻る」。
《標準語》「四つ角を右曲がる」→《鳥取弁》「四つ角を右曲がる」。
《標準語》「戸棚しまう」→《鳥取弁》「戸棚しまう」。
《標準語》「テーブルの上置く」→《鳥取弁》「テーブルの上置く」。

よか
(「AよかB」で、Aを比較の基準にする。標準語の「より」の意)

《用例》「うち、キムタクよかごんべちゃんの方が好きだわ」(うんうん)。
《用例》「島根よか鳥取だがな」(島根県より鳥取県だよ、もちろん)。

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副助詞 (標準語)だけ、なり、ほど、ぐらい、ずつ、やら、でも、など、まで、ばかり、か
わて
(分量を表す語について一定量を割り当てる意を表す。標準語では「ずつ」)

《用例》「こいから、一人に5枚わてカードを配りますけな」(これから、一人に5枚ずつカードを配りますからね)。
《用例》「ちいとわて、食うだぜ」(少しずつ食べるんだよ)。
《用例》「小遣いは1万円わてだで」(小遣いは1万円ずつだよ)。

ばかし・ばっかし
(「Aばかし・・」で、A以外の事物の存在・動作・状態を全く排除する意を表す。標準語の「ばかり」の意)

《用例》「あんたあ、うちー見んと、花ちゃんばっかし見とんなるけ、すかん」(あなたは私を見ずに、花ちゃんばかり見てるから、キライ!)
《用例》「苦労ばっかしさせて、こらいてごせ」(苦労ばかりさせて、許してくれ)。

かて
(「AかてB・・」で、AがBの最低許容範囲であることを示す。標準語の「でも」「さえ」の意)

《用例》「うちかてそがなことぐらい、知っとっただけえ」(私だってそんなことくらい、知ってたわよ)。
《用例》「雑草かて一つ一つ、名前はついとっだあぜ」(雑草でも一つ一つ、それぞれ名前はちゃんとついてるんだよ)。

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係助詞 (標準語)は、も、こそ、か、さえ、しか
鳥取弁の一般会話では、体言+係助詞「は」は、融合する場合が多い。
《例》「うちは→うちゃあ」「雪は→ゆきゃあ」「あれは→ありゃあ」
なと・なっと(1)
(他に、より適当なものがあるかもしれないが、という気持ちを言外に含めて、仮に一例としてあげる場合に使う。標準語では「でも」)

《用例》「弁護士の先生になと相談してみたら、どないでしょうかいなあ」(弁護士の先生にでも相談してみたらどうでしょうか)。
《用例》「先生の資格なっと、取っとけえや」(教員資格でも、取っておけよ)。

なと・なっと(2)
(「なんなと」「どれなと」「だれなと」など不定称の指示語について、全面肯定の意を表す。標準語では「でも」)

《用例》「なんなと好きなもん食べなれ」(なんでも好きなものを食べなさい)。
《用例》「どれなと取んなれ」「どれでも取りなさい)。
《用例》「好いとる人なら、だれなと連れてきなれ」(愛してる人なら、誰でも連れてきなさい)。

なと・なっと(3)
(軽く例としてあげる場合に使う。標準語では「でも」)

《用例》「そこで、お茶なと飲まいや」(そこでお茶でも飲もうよ)。
《用例》「本なと読んで待っといてごしなれ」(本でも読んで待っていてください)。

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終助詞 (標準語)よ、なあ、ぞ、か、な、ぜ、の、や、い、わ、とも、てば
け・けえ
(聞き手に対してやわらかな決意・断定の意を表す。標準語の「から」の意)

《用例》「用が無いなら、うち、いにます」(用が無いのなら私、帰りますから)。
《用例》「もうあがな人、知りません」(もうあんな人、知りませんから)。

がな
(詰問する気持ちを表す)

《用例》「そがなことしたらいけんがな」(そんなことをしては駄目じゃないの)。
《用例》「はやあ走らんと、汽車に間に合わんがな」(早く走らないと、汽車に間に合わないじゃないか)。
《用例》「やめてごしなれな、人が見とんなるがな」(やめてくださいな、人が見てるじゃないですか)。
《研究》「がな」の構造は、接続助詞「が」+終助詞「な」。

だか
(強い詰問の気持ちを表す。標準語では「のか」)

《用例》「そんなことさえ、知らんだか」(そんなことさえ知らないのか)。
《用例》「頼んだ仕事、済んだだか」(頼んだ仕事は済んだのかい)。
《用例》「俺がわりい、っちゅうだか」(僕が悪いっていうのかい)。
《用例》「すっだか、せんだか、はっきりしてごせいや」(するのかしないのか、はっきりしてくれよ)。
《研究》「だか」の構造は、断定の助動詞「だ」+詰問の助詞「か」


(勧誘の意を表す。助動詞「い」「ょい」の終止形につく。男性語)

《用例》「北海道に、行かい」(北海道にいこうよ)。
《用例》「この夏の旅行は、鳥取のハワイにしょい」(この夏の旅行は、鳥取のハワイにしようよ)。(注:鳥取のハワイ=鳥取県東伯郡羽合町)


(疑問の意を表す。「だいや」「かいや」の形が多い。男性語)

《用例》「こんだ、何すっだい」(今度は何をするんだい)。
《用例》「何、買あただい](何を買ったんだい)。
《用例》「俺に、用があっだかい」(僕に用があるのかい)。
《用例》「晩飯は、まんだかい」(晩ご飯はまだかい)。
《研究》「だいや」の構造は、断定の助動詞「だ」+強調の終助詞「い」+疑問の終助詞「や」
《研究》「かいや」の構造は、疑問の助詞「か」+強調の終助詞「い」+疑問の終助詞「や」


(命令形表現をやわらかくしたり、勧誘の意を表す。前者の場合は動詞・助動詞の命令形につき、後者の場合は鳥取弁助動詞「い」「ょい」の終止形につく。主に女性語)

《用例》「ちょっとお茶なと、飲まい」(ちょっとお茶でも飲もうよ)。
《用例》「一緒に暮らしましょい」(一緒に暮らしましょうよ)。


(疑問の意を表す。「だいな」「かいな」の形が多い。主に女性語)

《用例》「こんだ、何すっだい」(今度は何をするの)。
《用例》「うちに、用があっだかい」(私に用があるの)。
《文法》「だいな」の構造は、断定の助動詞「だ」+強調の終助詞「い」+疑問の終助詞「な」
《文法》「かいな」の構造は、疑問の助詞「か」+強調の終助詞「い」+疑問の終助詞「な」

いや
(命令の意を表す。主に男性語)

《用例》「はや、読めいや」(早く読めよ)。
《用例》「あの服を、着いや」(あの服を着ろよ)。
《用例》「飛んで見せいや」(飛んで見せろよ)。
《用例》「はや、せいや」(早くしろよ)。
《研究》「いや」の構造は、命令の語勢を整える終助詞「い」+命令表現の調子を柔らげる終助詞「や」


(文末の活用語の終止形に添えて、軽く念を押し、意を強める。標準語の「ぞ」「ぜ」に対応。標準語では男性語とされ、ぞんざいな表現とされるが、鳥取弁では男女とも使い、また、ぞんざいな表現でもないようだ)

《用例》「花ちゃんもがんばらにゃあ、いけん」(花ちゃんもがんばらなければ、いけないよ)。
《用例》「お客さんはさっき、いんなった」(お客さんはさっき帰られましたよ)。


(文末の活用語の終止形に添えて、「で」と同様、軽く念を押し、意を強める。標準語にも「ぜ」があり男性語とされるが、鳥取弁では男女ともに使う)

《用例》「ここにあっ」(ここにあるよ)。
《用例》「その方がええです」(そのほうがいいですよ)。
《用例》「花ちゃんもがんばらにゃあ、いけん」(花ちゃんもがんばらなければ、いけないよ)。
《用例》「お客さんはさっき、いんなった」(お客さんはさっき帰られましたよ)。

なあ
(感動・詠嘆の意を表す。一般の会話・あいさつで使う)

《用例》「さぶうなりましたなあ」(寒くなりましたねえ)。
《用例》「ばんなりましてなあ」(こんばんわ)。
《用例》「ごめんなんしてなあ」(ごめんください)。
《用例》「それじゃ、失礼しますけえなあ」(それでは失礼します、さようなら)。
《用例》「ええ家、建てなったなあ」(いい家をお建てになりましたねえ)。


(「だえ」「かえ」の形をとり、問い・念押しなどの口調を和らげる)

《用例》「この大根は、なんぼだ」(この大根は、おいくらでしょうか)。
《用例》「花ちゃんは、戻んなったか」(花ちゃんは、帰られましたか)。
《研究》「だえ」の構造は、断定の助動詞「だ」+終助詞「え」。「だあえ」となる場合もある。
《研究》「かえ」の構造は、疑問の終助詞「か」+終助詞「え」

って
( 体言、活用語の終止形・命令形・助詞などについて、相手の注意を促し、じれったい気持を表現した呼びかけに用いる。標準語の「・・てば」「・・ってば」)

《用例》「花ちゃん、花ちゃんって」(花ちゃん、花ちゃんってば)。
《用例》「はや、立ちなれって」(早く立ちなさいってば。言うこと聞けないの、この子は!)。
《用例》「ちょっと来いって」(ちょっと来いって言ってるだろ!!)。
《用例》「もうええって」(もういいってば。うるさいなあ)。

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間投助詞 (標準語)さ、ね、の
なあ

《用例》「むかしむかしなあ、おじいさんとおばあさんがおってなあ、山ん中でなあ、暮らいとっただって」
《用例》「そんなわけでなあ、やめただがな」(そんなわけでやめたんだよ)。

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接続助詞 (標準語)《順接》から、ので(んで)、ながら、て、ば、と、し 《逆接》が、のに、けれど、けれども、とも、ても
け・けえ
(原因・理由の意を表す。標準語の「から」及び「ので」の意)

《用例》「雨が降っとる、傘一本貸してえな」(雨が降っているから、傘を一本貸してくれよ)。
《用例》「パスワード入れとる、そのホームページは見れんわい」(パスワードを入れているから、そのすけべなページを見ることはできないよ)。
《蛇足》理由・原因を示す標準語の接続助詞には、「から」と「ので」がある。「ので」は客観的表現に、「から」は主観的表現に用いる(と辞典に書いてある)。弁解や言い訳に「から」を用いないほうがよいとされるのは、「から」に主観が入るためである。標準語を使うサラリーマン・OLは、この辺の注意が肝心である。
「頭が痛いので、休みます」は○。
「頭が痛いから、休みます」は×。
ところが鳥取弁では、理由・原因を示す接続助詞「から」と「ので」に対応するものは、「け(けえ)」一種類しかない。ということは、弁解や言い訳をするときに、いちいち接続助詞を選ぶ苦労はないのである。言い訳は鳥取弁に限るのである。
「頭が痛い、休みますけ」


(期待に反した結果を悔やむ表現。「に」で言い切る終助詞的用法もある。標準語の「のに」の意)

《用例》「言ってごしなったら良かった、なんでえ」(言ってくださったら良かったのに、どうして・・)。
《用例》「うち、行きたかった」(私、行きたかったのに)。

が・があ
(「が」に続く文を省略することにより、不審・不安・軽い感動・詰問を表す)

《用例》「先生が、言っとんなっただらあ」(先生が、おっしゃってたでしょう、忘れたの)。
《用例》「だけえ、言っただらあ」(だから、言ったでしょう)。
《用例》「そら、いけんがあ」(それはいけませんね)。
《研究》上記用例中の「だらあが」の構造は、断定助動詞「だ」の鳥取弁未然形「だら」+鳥取弁助動詞「あ」+接続助詞「が」。標準語では「だろうが」。

もって
(「動詞連用形A」もって「動詞B」により、Aの動作と同時にBの動作をすることを示す。標準語の「ながら」の意)

《用例》「運転しもって電話する人がおるなあ。ありゃあ、いけんがな、きょうてえがな」
《用例》「寝もって本を読むと、めーわるすっで」(寝ながら本を読むと目を悪くするよ)。




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