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Title : The Eighteenth Brumaire of Loius Napoleon / Preface
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『ルイ・ボナパルトのブリュメール18日』

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 友人の−でも今となっては故人だが−ヨゼフ・ヴァイデマイア(Josephe Weydemeyer)はニューヨークで1852年1月1日創刊の政治週刊誌を発行しようとしてた。僕は彼にブリュメール18日のクーデターについて寄稿してくれと頼まれてて、2月中旬ころまで『ルイ・ボナパルトのブリュメール18日』って言うタイトルで毎週書いてた。でも発行しないうちに元の話が立ち消えになっちゃった。かわりにその年の春に『革命(Die Revolution)』っていう政治月刊誌を発行し始めて、その創刊号は僕の『ブリュメール18日』で構成されてた。これは2〜300部はドイツに入ってきたが、市場では流通しなかった。すっごく急進派って感じの書店に「この雑誌置いてよ」って薦めたら、「こんなもん扱えるか!」なんて言われちゃったね。

 まっ、そんなこんなで、その時折の印象を書き散らかしたものってわけ*1でもあるし、史料にしたって1852年2月から昔のものは引っ張ってきて書いてるわけじゃない。それでもこの本を再刊しようってのは、1つは本屋がうるさいのと、ドイツの友人が出してみたらって薦めたからなんだ。

 まあ、僕の本と同じネタで同じ時期に出た本でイイ線イってたのは、ユゴーの『小ナポレオン』とプルードンの『クーデター』の2冊くらいなもんかな。ユゴーのは、このクーデターの張本人に辛辣で気の利いた罵倒を浴びせてるだけって感じ。クーデターが晴天の霹靂みたいに突然ドカンと起こったみたいに書いてるし、一個人の暴力的な行為の仕業、みたいな書きっぷり。ユゴーは、このクーデターを小ナポレオンの個人の仕業ってことにしたいみたいなんだけど、他に例がないやり手の部分を強調しすぎて、結局大物扱いしてしまってることに気づいてないみたいだ。
 逆にプルードンの本では、[個人的な力を強調するかわりに]クーデターまでの歴史的な経緯から説明しようとしてる。でも、クーデターを歴史的に構成すればするほど、そこに現れる英雄を弁護することになってしまってて、いわゆる「客観的歴史家」の過ちに陥っている。
 ここんとこがこいつらの本と僕のとが違うとこなんだけど、僕の本では、フランスでの階級闘争が、凡人が英雄の役割を果たすような環境だの条件だのをどんなふうにして生み出しちゃったかを明らかにしようとしてるってわけだ。これって書き換えちゃうと、なんだか感じが変わっちゃうので、文字ヅラを直したり、もうワケわかんなくなった言い回しとかを修正するだけにしといた。

 この本の最後で「しかし、皇帝のマントがルイ・ボナパルトの肩にかけられようとする時、ナポレオンの銅像はヴァンドームの柱から落ちるだろう」と書いたことは実現した。
 シャラース大佐(Colonel Charras)は1815年戦役に関する著書のなかでナポレオン擁護派に対する攻撃を開始してからは、特にここ数年、フランスの文壇は歴史研究や批判や風刺や機知でナポレオン伝説を[攻撃して]終わらせてしまった。けれども、伝統的な民間信仰を敵に回した、この大きな精神的革命はフランスの国外にはあまり知らされず、理解もされなかった。

 最後に、もう一言。
 この本が、今、学校で教えられているような−特にドイツの学校で、だけれども−いわゆる専制主義的な言い回しを追い払うのに役に立てばいいなと思ってる。たとえば、古代ローマでは階級闘争は少数の特権階級の内部で−つまり金持ちの自由民と貧しい自由民の間で−だけ行われたのであって、人口の大部分を占めてた奴隷はその闘争の受動的な台でしかなかった、とかいうような上っ面しか見てないような見方をしてたんじゃ、大事なことは忘れられちゃうだろうから。
 「ローマのプロレタリアートは社会の支出で生活しているが、近代ではプロレタリアート自身の支出で生活している」っていうシスモンディ(Jean Charles Leonard Simon de Sismondi,1733 - 1842)の名言を忘れてしまってるんだ。
 古代と近代では、階級闘争も、物質的にも経済的にも条件が違い過ぎる。だからと登場する政治的人物もすごく違ってるのは、キャンタベリ大主教とサムエル大祭司との間に共通点がないのと同じだね。*2

(Updated : 2000/02/07)


【訳注…というか半分以上ツッコミ】

  1. 『ルイ・ボナパルトのブリュメール18日』って言うから、歴史モノってわけじゃなくて、そういうネタで現在社会を斬ってたわけだね。 (本文へ戻る
  2. …って言われても。誰だよ、それ。英国国教会の聖職者とユダヤ教の聖職者とは違うってことかなぁ。。(本文へ戻る


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Updated : 2000/02/07