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Title : Who is obligated?
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Contemporary Files #20080110
誰に対する義務化か

省エネ規制

 今朝、日経新聞を読もうとすると、1面に「省エネ規制 中小ビルにも」とあった。
 まあ、どれだけの人がご存知かどうか知らないけど、省エネルギーに関しては「エネルギーの使用の合理化に関する法律」なんてのがあって、業種や建物の規模によっていろいろと対策を講じなければならないわけだ。住宅について言えば、一定規模(床面積 2,000 m2 以上)の非住宅建築物の大規模修繕等を行う者に対し、所管行政庁への省エネ措置の届出を義務付けられており、一定規模(床面積 2,000 m2 以上)の住宅についても、非住宅建築物と同様に所管行政庁への省エネ措置の届出を義務付けられてる。もし省エネ措置が不十分だと所轄行政庁が判断したら改善指示が出て、それでも対応しなけりゃ公表されてしまう。今日の記事は、この 2,000 m2 という条件をさらに 300 〜 500 m2 に引き下げようと検討されているってことだ。これだとかなりの数の建造物が対象になる。もしこれを読んでいるあなたがマンション住まいなら、あなたの住んでるとこも対象になるかもしれないよ。(まあ、既に住んでる場合は次回の大改装の時にしか問題にならんが。)
 けどねぇ、省エネなんてのはねー、使い方次第なのよ。いくらどれだけ高効率の機器や高断熱性の壁にしようが、めちゃくちゃな使い方をすれば省エネにはならない。だいたい、「省エネ」を「効率的にエネルギーを使うこと」だと理解している時点で何か間違ってる。エネルギーを使わないことが究極の省エネなんだってば。しかも、義務を課せられる人と、実際にそこで何かをする人が異なると、せっかくの措置が無意味になる。いくら大家さんが金をつぎ込んで省エネ対応住宅にしても、住民が無駄使いすればどーしようもない。んなもんで、省エネ規制というのは対策を講じることは要請するけれども、よく読むと、実際に省エネすることを保証しろなどとは言ってない。それって規制をかける意味あんのか、とも思う。

住宅用火災警報器の設置義務化

 …ってどれだけ認知されてるんだろうねぇ。少なくとも私の両親も妻も知らなかった。一応、自治体の広報誌なんかにも書いてはあるんだけど、気をつけてないと読まないだろうし、自分が義務を負っていると気づかなければ読んでも対策を講じないだろう。
 ちょっと気になって調べてみると、火災報知機の設置義務化の根拠は消防法。

消防法第9 条の2

 住宅の用途に供される防火対象物(その一部が住宅の用途以外の用 途に供される防火対象物にあつては、住宅の用途以外の用途に供される部分を 除く。以下この条において「住宅」という。)の関係者は、次項の規定による住宅用防災機器(住宅における火災の予防に資する機械器具又は設備であつて政令で 定めるものをいう。以下この条において同じ。)の設置及び維持に関する基準に従つて、住宅用防災機器を設置し、及び維持しなければならない。
2 住宅用防災機器の設置及び維持に関する基準その他住宅における火災の予防 のために必要な事項は、政令で定める基準に従い市町村条例で定める。

 細かいこと言うと義務化の期限は自治体によって決まるので、気になる人は調べておくように。→ 消防法改正に基づく各市町村の条例
 しかしこの「防火対象物」の「関係者」が自分だと思って対策を自発的に講じる人ってどれくらいいるんだろうねぇ。っていうか、フツーの人は法律の条文なんか読まないし。でもそんなのを読む私が目を皿のようにして読んでも見つけられなかったのは、設置義務化に従わなかった場合の罰則。既に設置されている警報器をぶっ壊したりなんかしちゃった場合の罰則は書いてあるんだけれども。じゃあ、NHK受信料と同じってわけ? 「払え」とは書いてあるけど、払わなかったからと言って刑罰には処せられないのと同じで。

誰に対する義務化か

 いやー、なんかね。何かの対策のためにあるモノの設置の義務化や、体制設置の義務化を課したくなるのは管理する側の心情としてわからんでもないけれどね。義務化されたからと言ってそれに自発的に従うのは遵法精神の高い人々だけで、多くの人はその義務化の対象が自分だと思ってなかったりするんじゃないのかな。で、仮にそれを認識しても、従わないことによる不利益が従うことにより利益より勝ると思う(事実としてどうかは別として、そう認識する)限り、人はそれに従わないだろうに。そうすると、なかなか施策が進まず、当初想定していた効果が得られなくなる。だからね、義務化するならするで、効果が出るように、対象の設定と、その対象への認知の強化と、従った場合のアメまたは従わない場合のムチを準備しないと。


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Updated : 2007/01/10