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Title : Responsibility for nomination
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Contemporary Files #20060130
持ち上げた責任
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 『行列のできる法律相談所』という番組がある。…って、まあ、人気番組だから多くの人が知ってるよなー、たぶん。そこで取り上げていた問題にこういうものがあった。

 小さな工務店の経営者が、リストラされて求職中の高校時代の友人の依頼を受け、いつも仕事を受注している建設会社の部長に彼の雇用を依頼した。
 ところがこの友人の勤務態度は極めて悪く、1ヶ月後に解雇され、その部長から「よくもあんな奴をウチに押し付けてくれたな! アンタのとこには二度と仕事は回さないからな!!」と言われてしまった。売り上げの大半をこの会社に依存していた工務店としては大打撃を受けた。
 そこで、問題。

 果たして友人のせいで仕事が来なくなったら損害賠償を取れるのか?

 「最強弁護士軍団」の判定は

北村弁護士住田弁護士橋下弁護士丸山弁護士
取れる取れない取れない取れない

 …ということで、番組の結論としては「友人から損害賠償を取れる可能性は30%」「今回の場合、友人を取引先に紹介した自分にも責任があるため損害賠償を取るのは難しいようです。」とことだった。
 これ、見てて、釈然とせんなーと思ってた。仮に友人にこんなこと頼まれて、自分の思い当たるところで就職先があるのなら、紹介するだろうなぁと思う。もちろん、その友人の程度にもよるけど、名前しか知らんとか言う程度ではなく相応の行き来があってそこそこ知っている人間なら無下には断らないだろう。けれどもその友人と職場が同じか商売上付き合いがあるというのでなければ、その友人の勤務態度や(この問題で言えば)リストラされた理由なんてわからないのが実情なのではないだろうか。もし本気で確認しようとしたら興信所(とは古い表現か?)でも使って調べるしかないだろう。そこまで友人に対してやらなきゃ職を紹介できんもんなのか。

 誰かに誰かを紹介してもらって何かをするとき、その紹介された先でヘマして紹介してくれた人の顔に泥を塗るようなことをしないようにするのが世間一般のしきたりというかマナーであって、それに反したほうが責を負うべきだと思ってたけど、最近は違うのか…。ヤな世の中になったねぇ。

☆ ☆ ☆

 ここ数日のライブドア騒ぎで、「便乗責任取れ騒ぎ」を起こしている人たちがいるけれども。これも見ててなんだかなー、と思ってるとこ。

 まず、小泉改革とライブドア問題を直接結び付けて「小泉改革を進めたからライブドアみたいなところが出てきた」みたいなことを言ってる人がいるけれども、それってこじつけだなぁ、と思う。たとえば誰かがあちこちの反対を押し切って道路を作ったとする。それで便利になる人もいれば、困ってしまう人もいる。で、そんな中、「道路ができたぜい! じゃあ、こんな走り方もできるじゃん!!」って暴走して事故った人がいたとして。「こんな暴走車が出てきたのはこんなとこに道路作った奴の責任だ」と言ってるのと構造的に同じような気がしますな。
 …って言うか、そもそも今の改革路線って小泉政権発足後に初めて敷かれたものでもないし。落ち度があるとしたら、そういう「暴走車が出現した」ことではなくて、「暴走車が出てきてもそれをチェックし、事故にならないうちに抑制するフレームがなかった」という点だと思う。仮に小泉首相が嫌いでも、現状の市場の仕組みでしか競い合うしかないわけで、その管理の甘さなんてものは指摘することも修正することも可能だったはずだ。先の例で言えば、いくら道を作った奴を大嫌いでも、その道を往来する車があり、その車の影響を自分も受けるのであれば、もしその道に穴ぼこが開いていたり、ムリなカーブだの危険な抜け道だのがあったらそれを補修したり通行を規制したりという要望は可能だろう。んなわけで、今ライブドアに絡めて小泉政権を批判している人たちの論理ってちょいと「ざまあみろ」感だけが先行してなんかやだな。

 「持ち上げた責任」というか、「お前の応援してた奴ってヒドイ奴だからお前もひどい」と言われても仕方ないのは、「応援した時点でヒドイ奴だと知っていた場合」か、「(応援した時点でヒドイ奴でもなかったのに)ヒドイ奴になるように追い込んだ場合」に限るんじゃないかなと思う。(いや、まあ、そういう奴を応援するしないに関わらずもともとヒドイ奴だという場合もあるが、それは論外。--;)
 「応援してた時点でいい奴だと誤認していた」場合に責めを負うべきことなのか、ってのが、境界線かな。勝手にこっちが(情報不足だか判断力不足だかで)誤認することもあるだろうし、誤認させるためにそいつが虚偽の情報を流し続けていたのかによっても状況が異なるし。
 「応援してた時点ではいい奴だったんだけれども、その後変質してヒドイ奴になった」という場合には、応援した事実は責めの対象になるんだろうか。

 だからね、ライブドアに絡めて小泉政権を批判したい人たちは、昨年8〜9月の時点でライブドア周辺の取引の違法性を認識してたかどうかを確認すべきだよ。で、もちろん正面きって質問したら「そのときはそんな風に思ってませんでした」って答えられるのがオチだろうし、「そしたらアンタんとこの○○さんについてはどうなの?」って同じ論理で過去の不祥事を指摘されたら言い訳できなくなるので、この方向の攻めでは負け。攻めるなら、その時点における判断力不足か暴走への防御策を打たなかった不作為に対してだ。

☆ ☆ ☆

 ここから先は余談だけれども。
 もし、小泉首相が「んじゃ、責任とって辞めます。そーゆーわけで、今後、自分たちが推薦した人間が不祥事を起こした党の首脳は責任とって辞めることにしてチョーダイね。」なんて言って辞めたらオモロイだろうな。一番困るのは野党側だったりして。


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Updated : 2006/01/30