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Title : Terrorist is there. (3) / micro-terrorism
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Contemporary Files #20050616
テロリストはどこにいるか(3):マイクロ・テロリズム
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 前号でこんなことを書いた。

 要するに、「無差別な殺傷を省みない破壊行為者」は、その思想信条がいかなるものであれ(固定の思想信条がなく、自己目的化した行為であったとしても)、それはその行為自体に準拠して「テロリスト」と呼ぶべきであり、「ちょっとしたいたずら」だと言おうが「むしゃくしゃして」だと言おうが「酔っ払って」と言おうが、相応の扱いをすべきだと思う。「殺意の有無」を確認なんてしたら、こんなに情報が氾濫している社会では、「『殺すつもりはなかった』と主張したほうがいい」ってことぐらい知れ渡っている。それで「過失致傷」とか「過失致死」なんかで片付けられたら、たまったもんじゃない。

 そこで私が書きたかったことは、「アブないヤツはなんでもかんでもとっ捕まえてしまえ」なんてことではなくて、どうも今の日本には「無差別な殺傷を省みない破壊行為者」が増えつつあって、それが社会不安を醸し出しているってことだ。(もちろんそういう社会不安がさらにそういう破壊行為者を生み出してもいるんだろうけどね。)

 なんか、こういう事態をうまく表現できる言葉はないかといろいろ読んだり考えたりしていると、うまい言葉が見つかった。katzさんと言う人のブログ・Think positive, act positive にある、「マイクロ・テロリズムの時代」という書き込み。ちょっと引用させてもらう。

 一種のテロのようなもの。そう、マイクロ・テロリズムとでも言えそうなもの。対象を選ばず、だれかを害すること。対象を選ばず、なにかを破壊したり、汚すこと。放火、軽微な盗み、公共の場所でのゴミ・汚物の投棄、投石による人家への破壊、抵抗力のない子供/老人/女性への虐待など。すでに始まっていることばかりである。

 マイクロ・テロルは対象を選ばない。マイクロ・テロルに走る側の人間(マイクロ・テロリスト)は、なにかに復讐したいとは思っているのだろうが、そもそも彼/彼女の敵が見えないので、手近な、抵抗力のない者/物を対象にする。自分の側にも抵抗力がないため、深く潜行して、ひそかに実行される攻撃。人ごみの中というよりは、周囲にだれもいない個室の中や深夜の屋外、逆に、加害者が特定できないほどの極端なひとごみの中。

 実は、ね。今日のネタとしては、テロの奥底には ressentiment があってね、という話を書こうと思ってたんだ、本当は。先に書かれてしまってた。

 「ルサンチマン」と書いてしまうと、ニーチェの匂いがプンプンして、なんて言うの、恨みつらみが轟々と渦巻いている感じが出すぎてしまうんだけどね。このページを見に来るような奇特な方には解説する必用ないんだろうけど、この言葉、もともと re - sentment だよね。感情を繰り返し繰り返し味わうこと。
 わくわくドキドキの感情って繰り替えしたら薄れていくのに、つらい・悲しい・悔しい感情って、どうして繰り返すと濃くなっていくんだろうね。積もり積もって鬱積しちゃった負の感情。ニーチェに言わせれば、その鬱積した負の感情を、価値観の転倒でもって「昇華」させちゃうキリスト教ってダメダメ!ってことなんだろうけど。
 その鬱積した負の感情を革命への破壊衝動へと組織化すべし!としたのが、マルクスの後継者を名乗る人たちの言い分なんだろう。

 NEET に関する議論とか、ひきこもりに関する議論とかともちょっと関連があるとは思うんだけれども、「何かがやりたいけど何をやったらいいのかわからない」なんて甘えたことを言う連中であっても、その「何か」さえあればなんとかなる契機はあるだろう。
 けれど、You can lead a horse to water, but you can't make him drink.ってやつで、やる気そのものがない人に何かは、そもそも、何かをさせるための一歩を踏み出すということ自体が至難の業となるわけだ。負の感情を鬱積させる前に「誰かが気づいてあげればよかった」「サインは出ていた」なんてことを他人は勝手に言うわけだけれども、それができるくらいなら、「マイクロ・テロリスト」になる前になんとかなっているような気がする。仮に気づいたとして、「マイクロ・テロリスト」候補者の内面へ踏み込んで掬い上げようとする行為自体を、「候補者」はおせっかいとして排除したりはしないのか。

 そしたら、何が「マイクロ・テロリスト候補者」から脱出させる契機となるんだろう?


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Updated : 2005/06/16